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台湾のロードムービー「遠い道のり」に教えてもらったこと

2007年の台湾のロードムービー「遠い道のり」(原題:最遥遠的距離)

何気なく観たこの一本から色々な事を教えてもらいました。(残念ながら動画配信はないです)


 *ジャケットの写真、なんとも良いです。

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不倫の恋に虚しさを感じアルコール依存になりかけている若い女性(グイ・ルンメイが演じますが、こういう薄幸な女性を演じさせたら彼女の右に出る者はないです)。恋人との別れから立ち直れない録音技師の若い男性。妻に離婚を切り出された精神科医。

この3人の、現実との決別・喪失・再生を台湾らしいゆったりしたリズムと美しい自然の中で描いた映画です。


◆喪失と再生への道のり

グイ・ルンメイが演ずるボロボロの女性は、自分の前にマンションの住民だった女性に宛てて見知らぬ人から毎日送られてくるカセットテープを聴き、そこに録音された台湾の「音」に心惹かれその音の場所と録音した人を追って旅に出ます。

各地の「音」を録音し届けていた傷心の録音技師の男性は、旅の途中での音や人、緑あふれる風景に接する間に心が整理されていきます。


◆人生を取り戻すきっかけは普遍

喪失感との折り合いをつけることや、自分でも分かっている先のない現実を直視するのがどれだけ難しいことか、大人なら分かってもらえるでしょう。

人生を取り戻すきっかけが「音」に集約された自然や人々の日常の営みであること。それって国を問わずして人生の真実だと私は思います。


◆再生のための場所は必ずある

 *光と緑と海が美しい花蓮

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2人が台湾東部の海辺で出会うことを匂わせてこの映画は終わります。
台湾の人にとって、花蓮に代表される東部、特に海辺は明るさの象徴です。だから台湾映画であるこの作品は東部の海辺で出会うという「再生」で終わるのです。

耳を澄まし、目を開きながら丁寧に人生を歩けば、たとえ時間がかかっても誰にでも再生の機会はあるのだとこの映画は教えてくれます。


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