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ヴィジュアルで辿る読むということの隠された行為!『本を読むときに何が起きているのか』ピーター・メンデルサンド
『本を読むとき何が起きているのか』は楽しい読書体験を巡る楽しい本
タイトル通りの本である。本の装丁家が普段何気なく行っている「読書」を、19の項目に分けて考察しているのである。
400ページ以上という、なかなかのボリューム。と、見せかけて中にはふんだんイラストや写真が差し込まれ、凝ったタイポグラフィが立ち並び、贅沢な美術品の赴きもある。ぜひぜひお手にとって欲しい一冊。
難しい本を読んでるときの息抜きに一章だけ読んでも良いし、イラストがふんだんに入っているので、プレゼントとしても遠慮なく渡せる一冊だと思う。
「読書」、この不思議な行為について
さて本を読む行為だが、この本で言う「本を読むとき」は文学や小説を読むことに重きを置いて書かれている。
例えば、本を読む上で実は登場人物の外見というのはあまり作者からも提供されておらず、読み手が自力で補っているという「当たり前すぎて忘れている」ことを指摘する章がある。
作者が登場人物のことを語るために使っている形容詞にならって複数のイラストを提示するも、それが一つとして「あなたの想像には合致しない」のはなぜか?でも、それが読んでて誰にも問題にならないのはなぜか?
といった具合で、各章が作者からの問いかけと、答え合わせといった具合で頭の体操をしている気分になる。
お気に入りの小説を手元に置いて、該当しそうなところを読んでみるのも面白いかも知れない。
イラスト、タイポグラフィ、凝ったビジュアルを味わおう
何処から読んでも面白い本書だけども、装丁家が本気だして遊んだ感じが作りも魅力的。
出だしこそ、普通の文章で始まったのに、ペースをめくるといきなりセリフの中に続きがあったり、一行だけ極端にハイライトされ文章で締めくくられていたり。遊び心が全開なのだ。
有名な登場人物の顔にめっちゃ落書きしたり、本文がめちゃくちゃに黒く塗りつぶしてあったり、およそ思いつく限りのお遊びが目に楽しい。
こんなにも視覚に入る情報が違うと、受ける印象が変わるのかって体感できる。特に左右で本のページがまるまる白黒入れ替えてある仕掛けが度々登場するのだが、シンプルなだけに印象的である。
じゃあ結局本を読むってどんな行為なの?
という恐ろしい問にどう作者が答えるかというと、実はこの本に断片として開示された要素全てと、言えるかも知れない。
読書というのは書かれた文字を読むという行為だけど、そこには読み手の恣意に富んだ解釈もあれば、一方で登場人物の特徴を人柄で合意するという作者と読者の共同作業もある。
読んでいるときに、心のなかではっきりと絵を描いているようでいて、時として切り捨てたり、読書というのは実は驚くほど多面的な性格を帯びた行為というのが分かる。
それを最後に推し進めてではどうまとめるかは、自分の目でご確認頂くとして。
読んだはしから内容を忘れて、「ああ面白かった」しか残っていない不思議な読書という時間の魅惑の謎にの解明にいっちょ出向いてみませんか?