【短歌エッセイ】脳内誤変換で勘違い
「幼き日ニュースで聞きし『汚職事件』 子供の耳にはただ『お食事券』」
幼い頃、ニュースで政治家だかの汚職事件の報道をしていたのを見ていた私は、繰り返し発せられる「おしょくじけん」をお食事券と思ってしまった。お食事券がどうしたんだろう? お食事券の何がいけないの? と思うわけだ。
そもそも汚職のなんたるかをまだよくわかっていなかった年頃だ。私の脳内辞書には「汚職」がなかったのだから、そんな脳内誤変換も仕方ないと思う。
それでも年を経て、汚職の意味がわかるようになってから報道を見ると、当時の自分の勘違いがおかしくて、ちょっと思い出し笑いしてしまうのだ。
「酷暑ゆえ我が性能も落ちたるか 『蚕』と思いし『かいこ』は『解雇』」
3年前の話だ。まだ前職に就いていた私は、所属する課で鳴り響く外線電話を取った。
電話主は、「かいこ」について尋ねたいことがある、という。私は「かいこ」? と数瞬考え、あ~「蚕」か、と判断した。農業職関連部門に内線電話し、「〇番に養蚕に関してのお尋ねのお電話です」と伝えた。
長く勤めて来て養蚕に関する電話なんて初めてだな、と思った次の瞬間、私は、はたっと気がついた。「かいこ」は「解雇」のことだったのではないか、と。
「解雇」についてのお尋ね電話は、頻繁にではないが、まぁ時にはあった。大体は解雇される方からのお尋ねだ。そして、「解雇」という括りでは話が曖昧過ぎるので、もう少し具体的な話を聞く必要があった。
そして、具体的な話の内容によって、1割はA課、1割はB課、1割はC課が担当し、7割は、「その件の担当は当該施設ではありませんのでこちらへお尋ね下さい」と、担当する他施設の電話番号を案内することとなる。
つまり、「かいこ」について尋ねたいことがある、と言われた時に私がすべきだったのは、「それではもう少し詳しいお話をお聞かせ下さい」と言うことだったのだ。
その後、内線を回した同僚から苦情はなかった。やれやれと呆れられたか、それともニヤニヤされたか。
実際の所、可能性は低いが、お尋ねの内容は「蚕」についてだったのかもしれない。しかし、かなりの確率で「解雇」についてだったのだろうと思う私は、暑さで脳の性能が落ちてるのかな、と思いつつ、内線電話を回した同僚に内心で詫びたのだった。
「『コロナ禍』が『この中』と聞こえ どの中?とつい思いたるテレビの前で」
最近はもう随分聞き慣れた感のある「コロナ禍」だが、実の所、私は長い間聞き慣れずにいた。この短歌を作ったのが昨年の10月なので、少なくともそれくらいまでは、聞き慣れずにいたわけだ。
テレビで流れるニュースなどの報道で、「コロナ禍では」という言葉が、どうにも「この中では」に聞こえてしまい、指し示されているはずの「この」が見当たらなくて、どの中? と思ってしまうのだ。
さすがにもうその都度、どの中? と思うことはなくなったので、ようやくの順応を感じはするが、新しい耳慣れない言葉に関しては、どうしても脳が意味の違う耳慣れている方へ、誤変換してしまうようだ。
それって私だけだろうか。
まぁ、後で笑い話にしてしまえばいいのである。
うんうん。オールOK。
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