【短歌エッセイ】4月1日のボヤ騒ぎと消火活動
それは3年前、2018年の4月1日のこと。
日が暮れて薄闇が広がる、夕方から夜にかけての時間帯、出かけようとして、当時住んでいたアパートを出た私とパートナーは、そこはかとない異変を感じた。
パートナーに、「なんか焦げ臭くない?」と尋ねられた私は、「そうかも」と答えて辺りを見回す。
私が住んでいたアパートは細い道に面しており、アパートと細い道の間に緩い下り傾斜の駐車スペースがある。その、面した道から若干高い位置の場所から、西側に隣接する隣のアパートの1階、4部屋の内こちらから2つ目の部屋のテラスから、立ち上る煙とオレンジ色の炎がちらっと見えた。
同じように気づいたパートナーが、「こっち! 火事!」と私に声をかけて、火の出ている隣のアパートに走って行き、道に面した低い塀を上り、その上の生垣をかき分け、生垣の向こう側へと消えた。
追いかけ、道側の塀の下から見上げる私には、塀の高さと生垣に視界を阻まれて、向こう側の状況はわからないが、パートナーは私に「バケツに水を持って来て」と声をかけた。
私は自宅であるアパートへと引き返し、バケツに水を入れてパートナーの所へ戻ると、バケツを持ち上げてパートナーへと手渡した。バシャっと水をかけてたパートナーは、「もう一杯お願い」と言って私に空のバケツを返した。
私が再びバケツに水を入れてパートナーの所に戻る頃には、火が出たアパートの住人も集まって来ていて、ペットボトルに入れた水をパートナーに手渡したり、「消防と警察に連絡しました」と言ったりしていた。
私が手渡したバケツの水をかけると、パートナーは生垣の向こうから出て来て道へ降り立った。「もうこれで大丈夫」と私に言い、周囲に集まったこのアパートの住人にも「完全に鎮火しました」と声をかけた。
その頃には辺りはすっかり暗くなっていたが、テラスから火を出した部屋は電気も点かず暗いままで、このアパートの住人は「留守のようですね」と言っていた。
パートナーの話によると、何やらビニールシートのようなものが燃えており、一杯目のバケツの水で火は消えたものの、まだ煙が立ち上っており、二杯目のバケツの水で完全に治まったそうだ。
その後到着した警察と消防に、パートナーは話を聞かれたりしたが、火も鎮火したということで、一件落着で解散となった。
私はこのことをメールで妹へと知らせた。
「今隣のアパートのテラスで火事が。出かけようとしたところで〇〇さんが気づいて消火。お手柄でした。」
しばらくして妹から返事が届いた。
「えーーーーーーーーーー!
それってめっちゃすごいね❤
っていつもなら言うところだけれど、
今日が今日だけに、
半信半疑w」
そう、この日は4月1日。エイプリールフールだったために、私が盛大な嘘をついているのかも、と思われたらしい。
「いやいや、そんな気の利いた嘘をつけるほど、器用に生きてないって😅
まじで本当の話。」
と苦笑いしながら返信を送ったけれど、実際の火事に遭遇したり消火活動したりなんて滅多にない出来事でも、4月1日だとそう思われたりするんだな、と思ったのだった。
「驚きの 知らせ告げども 疑いの 目を向けらるる 4月1日」
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