こんなになる 鬼りんご
こんなになる
或ひは特異な波形の詩人波
生きてゐる と 死んでゐる 何か違ふか
生きて「ゐる」 し 死んで「ゐる」
「ゐる」ことに変はりはないぢやないか
だつて、あなたは
生きてる時も死んでるみたいにそつけなかつたし
あなたの
身体は、言葉に劣らず興味深い存在だつた
しかしなかなかそれは肉体でもあつた
身体が肉体を隠さうとしないとき
言葉は
あなたの身体にぴたりと沿ひながら しかも肉体を明晰に拒んでゐた
肉体は
身体に成りきれないことに戸惑つてゐるかに見えた
言葉は
身体になることにするどく成功してゐた
つまりあなたそのものでありえて
あなたそのものでしかなかつた
あなたそのものでしかないこと それが
もう一度あらためてあなたそのものであることだつた
あなた自身も あなたそのものでしかなかつたから
あなたの身体はいたるところで目撃されてゐた
あなたの言葉もいたるところで反響してゐた
誰もが 好んであなたの言葉とあなたの身体とを混同した
そんなにもあなたは言葉になりきつてゐた
そんなにも言葉はあなたになりきつてゐた
死んでから急に まるで生きてそこにゐたみたいに
亡くなった亡くなったと人々は言ふ
生きてゐるうちに とつくにあなたは死んでゐたのに
だつてもう何年も前から あなたの言葉は死を生きて見せてゐたもの
いや 生を死んで見せてゐた?
ひとの死は軽軽しくは語れない なぜならひとは死ぬものだから
しかしあなたは生きてゐる言葉であり
言葉は死ぬことなどできない
きのふのあなたの言葉はけふも生きてゐて
けふのあなたの言葉でゐる
え?なに?オレ、死んだの?と
あなたの身体は言つてゐるやうな気がする
あなたはさういふ人だつた
さういふふうに言葉してゐた
と わたしたちは思つてゐる
わたしたち とは 総勢一名 かもしれないけれども
徹頭徹尾 あなたも一名だつた
だから いいだろ 一名で
(「こどもだま詩宣言」対応)