猛ふぶき

さまざまな文化事象の気になる事柄について書きます。

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最近の記事

あたかも情景のように①  鬼りんご

(行の構成を明確にするため、全ての行末にスラッシュを施します。)   あたかも情景のように ①  或ひは言語といふ虚構の実在 口笛すら吹いて見せつつ黒眼鏡は店の外から見張つてゐた/ 汗が滴つてもひたすら担々麺を啜り続けて見せるしかない/ 「いいですねえ 若山牧水 酒と旅と山桜の歌人」/ 「ええ 因みに私は雪と街と海と花の詩人と言はれます」/ はははとママさんは身をよぢる「ほんつと冗談うまいよね」/ 皺だらけの指におほきなサフアイアの青が痛痛しい/ 島育ちの天才少年だけが眉

    • 桔梗の風  鬼りんご

      桔梗の風  二   或ひは回想といふ能力の欠如 あ ききやう と 叫びを呑み込む童の無声 が聞こえて目が覚めた 睡つてゐるのも咲いてゐるのも知らず ただ咲き睡つてゐた おそらくはその希薄感に吸ひ寄せられて立ち止まつたものか こちらを見て 息を呑んだ童の気配 に ふと睡りをさまされた 目を伏せ視線を避けて 何も気づかないふりをした ききやう と 呼ばれる存在であるらしい 童は驚きやまないらしかつた ほんとのききやうに出逢つてしまつた (ききやう といふ 花は しんじ

      • 記憶の消滅  鬼りんご

        記憶の消滅 言葉がすべての文字を陣痛した日 午前の理想の白い頁に 文字を拒む言葉が処刑されていつた 文字がすべての言葉を凍結した日 午前 晴朗の白い頁に 言葉を剥がれ落ちた文字が書かれていつた (「こどもだま詩宣言」対応  原文縦書き)

        • 1107 鬼りんご

          (行の構成を明らかにするため、全ての行末に、本来作品には無いスラッシュを入れております。見苦しさ読みにくさをお詫びします。) 1107  或ひは口下手といふ美徳 りずろ まぢいいをんな/ つても 顔やからだつきぢやねえんだ あいつのよさは/ あほ あつちの具合なんか知らねえよ いいにきまつてるだろけどよ/ あの娘の歌だ 核心は よ/ 知つてる歌や覚えてる歌 楽譜の歌 そんなもん歌つてやしねえんだ/ 透明二重螺旋のよ 命の青い淵にふるへるよろこびの冷たさを だよ/ ひろがる

          寂翔    鬼りんご

          寂翔   或ひは方法の放棄 ををあをあをとゆかうよおほぞら 例へば神輿の跳ねる白昼の交差点 離陸ざま昇華し 窓窓を見棄て看板群を却下し 見放して 駅裏エリア再開発プロジエクト ヘアサロン・キユヌ 振り棄てて 卑怯警察 子ども支援課 生きがひの里 地上の迷路地下迷路空中迷路 迷路内迷路迷路外迷路 振り棄てて 首の無い都市 下半身街 這ふ虫もがく虫調べる虫騙す虫らの下界 白白と生成変化する青春玄冬の波打際 視野の隅には絵の具塗られたありがちの段ボール集落 灯し火のやうに

          寂翔    鬼りんご

          ランジエリイ 菫派 鬼りんご

          ランジエリイ 菫派或ひは小説に見る日常語の露頭例 さよなら かりん坂 さよなら 通学路の空に冷えてゆく桃の時      ○ 低気圧平原に日暮れが溜まりはじめ 生乾きの螺旋気流は欲情都市の裾をそはそは捲り上げる それぞれの穴から思ひ思ひに這ひ出し 地下へと潜り ひとり またひとり あるひは連れ立ち いでたち軽く 地上に 無彩色基調の街路に湧いて漂ふイヤホン族 聴き散らされた音曲はそこに渦巻きかしこに澱む ここが竹之洲通り示念坂 さりげなく迷ひ込んだ容疑者へも いち早くあを

          ランジエリイ 菫派 鬼りんご

          なんぞかへらざる  鬼りんご

          なんぞかへらざる 或ひは不用意な呟きの露頭例(抄) ありがと さよなら かへります   (どこかへ)(どこへ) 寂しさは小さくここに  (恥はどうにも剥がれなかつた) すべすべの茹で卵はこの棚に 皺くしゃの思想は畳んでそおつと抽斗にでも (かへりなんいざ 乾坤まさに涸れんとす) 貪つてはあとをかへりみず 追ひかけては野を踏み荒らす せつなく援け愛ほしむ そのたふとさに耐へては来たが (還りなんいざ 混沌まさに絶えんとす) 滴る青葉の点綴された光と影との街角 を 曲がる

          なんぞかへらざる  鬼りんご

          圏外送信  鬼りんご

            圏外送信  或ひはさらば行く手のかへり道 読み忘れんとや生まれけん 読み流さんとや生まれけん 霧を深み行方も知らず 彷徨へば時をも知らず 発つ風に春を問へども 葛原を霰は叩き 五百蔓は足に絡まり 泥みては天に憾めば 百舌鴉鶫蝙蝠 猛り啼く千声八千声 膝折りて地に呻けば 仮名真名にをどる横文字 渦巻ける千文字八千文字 言の葉はかく繁くして 靡きつつ波立ち騒ぎ かつ藻掻きかつは漂ひ 人の世を洗ふ海辺の いづちにか波返るらん 涯知らぬかも トゥヰイトせんとや生まれけん イ

          圏外送信  鬼りんご

          ガラスのハートにキッスして  鬼りんご

          (各行末を明示するため、すべての行の行末にスラッシュを入れています。) ガラスのハートにキッスして 踏み砕いてよ ガラスのハートを/ 銀の偽装の鉄のかかとに 全憎しみの体重を/ もっと もっと ハイ!もっときつくかけて/ 細かく尖った玻璃の破片があなたの瞳をぎしぎし傷め/ ざくざく刺さるあなたのハートは/ あなたのハートは何でできてる?/ わたしのハートはガラスです/ あなたのハートは何ですか?/ あなたのハートはほんとにあるの?/ ほら 頑固なヒールを軋らせて 踏んで

          ガラスのハートにキッスして  鬼りんご

          鬼りんごの置かれた部屋…江口敬写真展『二つの部屋』のうちそと

          はじめに2024年9月11日〜同年9月29日まで、福島市写真美術館(花の写真館)で江口敬写真展「二つの部屋」が開催されました。筆者・猛ふぶき(noteでの文芸活動名は「鬼りんご」)は、はからずもこの個展にやや特殊な関わり方をし、実際に個展を拝見もしました。  個展「二つの部屋」については、江口敬さんご本人によるいくつもの紹介記事の他、「つきふね」さん、「popo」さんなど、noterによるご投稿や紹介を本note上で見られます。個展の概要は、これらの方々の記事をご覧頂くこ

          鬼りんごの置かれた部屋…江口敬写真展『二つの部屋』のうちそと

          語彙の現状  鬼りんご

          語彙の現状 ー  情事叙述篇  ー 黄色く古ぼけた海を おまへの口紅が笑ふ 寂しくねぢれた鏡を わたしの心臓が語る 電話も踊らない白昼 一瞬の青が恋を抉り 愛しく疲れた輪郭を ふたつの体温が洗ふ 鮮かに水没した傷を おまへの指がねたむ 清潔に腐乱した蝶を わたしの息がねらふ 枕さへ奏でぬ室内に 一連の診察はゆがみ 剥がれて散る追憶を ふたつの声がけがす おまへの蛇に爛れる この目眩めく予報 わたしの刑に弾ける この嫋やかな怒涛 一億の烟霞に舞つて 死にきれない浮上 ふ

          語彙の現状  鬼りんご

          時の中へ2003 鬼りんご

          時の中へ 2003 今 ふる時の香に打たれつつ高く青く覚りたい 歓びはまぼろしでありかなしみが現であるとのテーゼに根拠は無いと 迷彩された事実らに腐蝕された事実界の任意の街路の花陰で 非在を装ふ私の存在が風のフロンティアをがうがうと奔る せきばくいづくんぞたふべけんや おおひとびとにさいはひを (「こどもだま詩宣言」対応 原文縦書き)

          時の中へ2003 鬼りんご

          left alone together 鬼りんご

          left alone together   六或ひは時刻蔑視にみる退行と損壊 仄暗くさみしくて さ 行こか 香りの絶えた三千里を臨界紀任意の一日が沈んでゆくらしい 幻は おほきく疾く降りかかる雪片群 底無しの鈍雲から絶え間なく噴き出しあとからあとから躍りかかる 閉ざされた窓窓の幻に 疾く こぼれころがる楽の音の幻に 疾く そつと寄り添ふ人影の幻に 疾く 渋滞の車列の尾灯群の幻に 疾く 砕かれ焦げ残った瓦礫都市の映像画面の幻に 灰色に ひらけた河口近い大橋の幻に 疾く 澄ん

          left alone together 鬼りんご

          ナルシズム宣言  鬼りんご

          ナルシズム宣言  或ひは「悪かったな 詩ぢゃなくて」 竟に世は我が脳髄の惑ひゑがける幻像に過ぎざるか まこと世は幻ゆゑにかくさはがしく あをぞらを鳴り響かせて無音の水底へ我を誘ふか 一切価値/一切無価値 両明察の光届かぬ森の泉に をのれを恋ふとはつゆ知らず ひたに水面の相に酔ふ 誹る者いざこれを誹れ 我が名はナルシス 影とふ影を迷ひ尽くさん 魂を狂はす面ざしの数数は 竟に我が影像に過ぎざるか げに面影全て我ゆゑにかくは涼しく うるむ瞳に花かをらせて吐息も熱く乱れつつ我を誑

          ナルシズム宣言  鬼りんご

          比喩「あれからの月日をメモ用紙の様に過ごして」

          はじめに noteの詩人、月兎紬が『うたた寝』という詩をnoteに発表しています。(2024.9.2)  この詩そのものは、なかなか解釈の難しい特徴がいくつかあるように見えますが、その中に表題の様な1行があります.  この比喩には、一読、大きな衝撃を受けました。  筆者が詩の中の比喩についてnoteに書くのは本稿が3度目ですが、今回は前2回と少し傾向の違う比喩になります。  最初の「鯨の群れに隠れるように」(月兎紬『ワンダリング』より)は、話者の回想する逡巡の心理が本当に見

          比喩「あれからの月日をメモ用紙の様に過ごして」

          枇杷少女 鬼りんご

          枇杷少女     或ひはありふれた話者の存在理由 一 ひとつじゃぜんぜんだめだから たくさんの枇杷になつてみたんだ たくさんの実に混ざつてたくさんの実でゐると どの実までが自分でどれからが自分でないのかわからなくなる びはびは枇杷びはまた枇杷 どれが自分か自分でないかなんてどうでもいいのだつた びは といふ名前について深く考へたことはなかつた いざなつてみると この名前 わりと好きかも知れない 牧びはの実 です 趣味は 青空観察 です とか 自己紹介もけつかういける でも

          枇杷少女 鬼りんご