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2000作の小説を書いた人
「今までに小説を何作書きましたか?」
取材や質問を受けるときに「今までいくつの小説を書きましたか?」と聞かれたら、「2000作品です」と答えたいと思うことがあります(実際に答えたことはありません)。
2000作品を書いたというのは冗談ではなく、本当です。まじです。
Twitter小説というのをご存知でしょうか(今はX小説と言うの?)。140字の文字制限の範囲内で書く小説のことです。
僕はこのTwitter小説を2000作書きました。こちらのTwilogで参照できます。
どうしてそんなに書いたかというと、小説執筆の鍛錬のためです。
10年ぐらい前に創作力を磨くために、毎日Twitter小説を書いていました。140字ですから、通勤中に5分ぐらいで書けるのですが、短い文字数で余韻やオチをつけるのは工夫が必要だし、文字の節約のために体言止めの使い方などをTwitter小説を毎日書いて学びましたね。
一度始めるとしつこく続けるので、Twitter小説の執筆は5年以上やっていたと思います。
Twitter小説大賞
賞にも応募して、第2回第3回Twitter小説大賞で優勝賞を受賞しました。
こちらが第2回の優秀賞。
#twnovel 「コドモヲユウカイシタ」ポストに手紙があった。慌てて小学生の娘に連絡すると無事だった。休職して暫く娘と一緒にいたが、何も起きない。復職すると再び子供といる時間が減った。また同じ手紙が届いた。冷静に見ると覚えたての娘の文字だ。後ろで様子を窺っていた娘を抱き締める。
— 高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が宝島社より発売中 (@Takuya11) March 2, 2011
こちらが第3回優秀賞。どうでしょうか?
新人の彼に声を掛ける。私は仕事で彼に気を掛ける。彼が私に優しい笑顔をかける。誕生日。プレゼントにリボンをかける。欠ける夜の月。電話を掛ける。彼に話しかける。家のドアに鍵を掛ける。彼の許へ駆ける。駆ける。駆ける。私はこの恋に賭ける。
— 高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が宝島社より発売中 (@Takuya11) April 7, 2013
Twitter小説で使った表現を長編小説内に用いたこともあります。第3回優秀賞で使った「かける」の連続は、他の小説でも使いましたね。
役立っている140字の小説たち
Twitter小説で得たイメージから長編小説を書いたこともあります。
私は本屋で働いた。店主のおじいさんのお手伝いだ。売上が落ち、徐々に経営は厳しくなっていった。廃業する前の晩、本屋へ行くと、店番しながらおじいさんは亡くなっていた。私は本屋に火を放った。夜空に燃え上がる小さなお店。たくさんの知と共におじいさんは空へ昇った。#twnovel
— 高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が宝島社より発売中 (@Takuya11) February 3, 2013
このTwitter小説のイメージを元にして書いた中編小説が「雪の愛した物語」でした。
2000作のうち気に入ったTwitter小説を332抜き出し、そのすべてにあとがきをつけて本にしたこともあります。
最新作の「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」まで25作の長編小説を書きましたが、それだけ書けたのは2000作のTwitter小説を書いたからだと思っています。