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ド定番を超えてゆけ! 沖縄そばのキュリオシティ|Report

小生の沖縄そばとの出会いは大学の学食だった。郷里から引っ越してきたばかりの頃で、ホームシックもあってかあまりおいしいと感じられず、一杯を食べきることができなかった。ラーメンともうどんとも違う麺とつゆの曖昧な属性を、一見似ているがゆえになおさら、どう評価していいのかわからなかったんだと思う。夏休みに遊びに来た友だちも、沖縄そばを絶賛はしなかったように記憶する。

1980年代の沖縄はまだマイナーで、その食文化は県外にはあまり知られていなかったし、沖縄そばの知名度も低かった。そばのスープは主に豚骨と鰹節をベースにしたシンプルな味わいが特徴だが、ラーメンのほうは多種多様で、豚骨、鶏ガラ、魚介に、味噌、醤油、塩などを合わせ風味も豊かで濃厚なものが多い。そばのバリエーションの少なさから、ラーメン文化不在の沖縄(当時はね)を嘆く大学の同級生が少なからずいた。

観光客に喜ばれる “沖縄そば”静かなブーム呼ぶ

「沖縄そば」が静かなブームを呼んでいる。ハンバーガー専門店などが華々しくオープンした国際通りに、つぎつぎ沖縄そば専門店が新装開店。本土そばやラーメン専門店も増えているなかで、負けず劣らずの人気を集め、昼食時には大にぎわい。沖縄そばの名称は本土復帰時ごろからよくきかれたが、本土観光客向けの“アピール”と本土そばと対比した呼び名。それ以前の「そば」と実質的変わりはないという。ところがここ2,3年、名護、八重山、首里、与那原、久茂地などの地名をつけた独特のそばが売り出されるなど、めん、具なども変わりつつある。

1976.11.17 沖縄タイムス

昭和51年の新聞記事だが、この頃から単に「沖縄そば」と呼ぶのではなく、地域性を添加させた呼び名が普及していったことがうかがえる。今日の「宮古そば」や「八重山そば」は麺や具の形状、香辛料などにも違いが生まれている。ご当地グルメの名を借りて、沖縄そばに地域ごとの個性を打ち出そうとする志向はいまも継続している。

既成の沖縄そばイメージをぶっこわす取り組み、いわば変わり種そばへの挑戦は、この頃から着想され実行に移されていたようだ。下の二つの記事から読みとってみよう。

ハム入り琉球そば

私は琉球そばをこよなく愛するものとして、最近の「ハム入り琉球そば」の出現を非常に憂えている。故郷を離れて私が最もなつかしんだのは、何よりもあの脂っこい豚肉がのったそばであった。<中略>
6月に沖縄に帰って琉球そばの上にハムをみつけたときのあの驚きようはなかった。「何という奇妙な組み合わせ!」ハムを沖縄の人間が口にするようになったのは、30年前のアメリカ世からではなかったのか。それでもハムが豚肉の代わりになり得るとは思えない。
<中略>このように中国の影響を受けて豚肉に特徴づけられたのが沖縄の郷土料理であり、豚肉の味こそがまさしく沖縄の味の基調なのである。
<中略>すくなくとも私は、琉球そばに関してはアメリカ世よりも唐の世からの影響を大事にしたいと思う。そしてもうひとつ、しばしば紅しょうがをみるようになったが、それは大和世になったせいであろうか。
ハムや紅しょうがの現れは、残念ながら郷土料理に対する自信のなさの表れとしか思えない。私は琉球そばの伝統への復帰を強く望みたい。そのようなわけで、声を大にしてこの問題を全沖縄的に提起したい。(那覇市松山・福里敏郎・学生)

1978.08.22 沖縄タイムス

“磯のかおり”に人気 そば専門店の島袋さんが研究 モズクそばがお目見え

いその味がするモズクそばがお目見え、そば通の間で評判になっている。那覇市西で琉球手打ちそば専門店を経営する島袋金徳さん(53歳)が、一年がかりで研究、作りあげたもので「こしがあり、ほのかないその味が沖縄的」と専らの評判。新鮮な海藻を使っているので栄養価は高い。県内でモズクそばを食べさせるのは同食堂だけ。乾燥させて本土出荷する話もあり、思わぬ人気に島袋さんの顔はほころびっぱなしだ。<中略>
現在一杯500円もし、普通そばより150円も高い。「沖縄の海で豊富に採れるモズクを原料にしているので、将来は原料を安く仕入れ多くの人が気軽に食べられるようにしたい」と島袋さんは話している。

1983.01.08 沖縄タイムス

この「味変」の試みは当時はポピュラリティを獲得することはなかったが、調理人魂は地下でふつふつとマグマ溜まりを形成していたようだ。沖縄そばのバラエティは徐々に増していき、いまでは次のような創意工夫が凝らされた沖縄そばが人気を集めている。もはや新定番のものも少なくないのだっ!

①イカスミそば
スープにイカスミが加えられた沖縄そばで、見た目は真っ黒。イカスミ特有の風味が味わえる。焼きそばにされることもある。

八重膳 https://www.smartmagazine.jp/okinawa/article/sight/20883/

②ゆし豆腐そば
沖縄の伝統的な豆腐を使ったそばは、クリーミーな口当たりが特徴で、独自の風味が楽しめる。

高江洲そば https://suba.okinawa/suba/29

③カレーそば
カレー風味のスープで食する沖縄そば。スパイシーさが加わり、コクがある味わいで、三枚肉やソーキとの相性も抜群。

すばやー上間本店 https://www.otv.co.jp/okitive/article/15030/

④冷やし沖縄そば
冷たいスープで冷やし中華風にいただく沖縄そば。暑い夏にぴったりの一品で、トッピングに錦糸玉子やさっぱりした野菜が使われることが多い。

東江そば https://dailyportalz.jp/kiji/cold-okinawan-soba-noodles

⑤タコスそば
タコライスと沖縄そばを合体させた新旧ソウルフードのコラボ商品。食べ進めるうちにチーズが溶けてクリーミーなだし汁となる。

Isa麺 https://kumanchu.com/2018/08/02/isa-men-01/

⑥シークヮーサーそば
特産のシークヮーサーを使った沖縄そば。シークヮーサーの爽やかな酸味が、スープに独特のアクセントを加える。

おおぎみ やんばるの森ビジターセンター https://www.drive-okinawa.com/hokubu-detail-2039/

⑦味噌そば
郷土味噌を使った沖縄そば。甘辛い味噌の風味が麺やスープに溶け込み、濃厚でクリーミーな味わいが楽しめる。

やん小〜 https://www.otv.co.jp/okitive/article/53732/

これらは、伝統的な味わいを大切にしつつも好奇心でアレンジされ、沖縄そばの別の一面を楽しめる。沖縄に訪れた際にはぜひこれらのバリエーションも試してみてね。

Aaron Hall "Curiosity"♫


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