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ホワイトな学校へ#39 その17 専門の教科・領域を決めよう ④文字環境を整えよう

書写の研究会でお話をさせてもらうとき、私は、必ず、教室の文字環境の整備についてお願いしている。

特に、低学年の子供たちにとって、日常的に見る文字については、気を付ける必要がある。
(※公立小学校の管轄は文部科学省なので、学習指導要領、検定済教科書に示されているものを標準的な字体としてお話します。)

先生方の悩みとして、いくら教えても、子供たちの文字が整わない…というようなことはないだろうか。

ぜひ、教室の掲示物を確かめてほしい。

かわいいから、という理由で、ポップ体や、丸ゴシックなどを使っていませんか?


活字を比較してみよう

以下、活字を比較したものを見てほしい。⇊⇊

明朝体
「右はらい」の形は今一つだが、一応、「とめ」「はね」「はらい」は、正しい。しかし、平仮名はつながっている。

丸ゴシック・ゴシック体
「はらい」がすべて「とめ」になっている。片仮名の「シ」は、下から上に書いているのか、上から下に書いているのかわからない。これがはっきりしないと、「ツ」なのか「シ」なのか判別しにくくなってしまう。平仮名もつながっている。

ポップ体
もはやデザインである。「あ」などは、平仮名として正しくない。半濁点の位置も、間違っている。

正楷書体
「はらい」や平仮名はきれいに見えるが、「り」がつながっている。また、学習指導要領で「とめ」になっているところが「はね」になっている。「望」という文字は、不思議な感じになっている。

したがって、教室掲示に使う文字は、教科書体だったら許せるということになる。「許せる」というのは、例えば、平仮名の「り」の二筆めの始筆の位置が下がっているなど、少々惜しいところがあるからである。

しかし、この教科書体、細くて、なんだか寂しい感じがして、掲示物としてはインパクトに欠ける…
という方には、

UD デジタル教科書体、がいい感じ

近年、これらの課題をほぼ克服して、いい感じの書体が登場した。それが、このUDデジタル教科書体である。これは、「とめ」「はね」「はらい」が概ね正しく、太さもあってかわいらしさもある。これは、お勧め。

しかし、問題点が…
学校のパソコンのスペックが古過ぎて、UDデジタル教科書体がないのである。どうしても使いたいときは、家で作ってPDFにして持ってくるしかないという、ブラック状態…。

活字の説明が長くなったが、つまり、低学年の教室掲示では、かわいさを追求するのではなく、「正しさ」を求めたいということである。

いくら先生方が正しい文字を教えても、日常的に目にする文字が、正しいものでなければ、子供たちの記憶はそちらに塗り替えられてしまう。

もちろん、すべてをUDデジタル教科書体で作成すればよいのだが、今の、学校のパソコン環境では、家での作業が増えてしまう。ブラック…。


手書き文字のすすめ

そこで、おすすめなのが手書き文字。
手書きに自信がない、無理…という先生もいると思うが、繰り返すが、掲示物に求められているのは「正しさ」。文字のうまさではない。そもそも間違っているポップ体などを掲示するより、多少下手でも正しい、手書き文字の方がよい。
(でも、どうしてもストレスになるなら、パソコンで作ってください=^_^=)


余談

11月に、N地区の書写研究会の研究授業に講師として呼ばれていった。そうしたら、地区レベルの書写研究会としては珍しく、50名を超える参加だった。
その理由は、その日の研究授業が、硬筆の書き初めを扱ったものだったからである。これまで、誰もが、敢えて取り上げようとしなかった、分野。しかし、先生方にとっては、悩みの種の授業。
なぜ、悩みの種かというと、普段の書写の授業は、文字の原理原則を知り、日常生活に生かすことが目的であるから、水書用筆などを使って楽しく行うことができる(低学年の書写指導については、最後のリンクを参照してください)。
しかし、書き初めとなると、作品を仕上げなければならない。鉛筆で、一定量の文字を、最初から最後まで集中して、すべて丁寧に書く。しかも、できるまで何枚も…。書き初めは、忍耐力、精神力の鍛練の時間か⁈
これでは、子供たちは、書き初めが嫌いになる。引いては、文字を書くことも嫌いになってしまう!
本末転倒…。

この授業では、そのような先生方の悩みを解消するヒントがたくさんあった。私としても、さらに良くなる助言をできたと思うので、参加した先生方はとても良い勉強になったと思う。

ただひたすら練習させるのではなく、文字の系統で分類し、その日のテーマを絞って練習させる。例えば「はらいのあるひらがな」というテーマだったら、子供たちは、はらいのある平仮名について、自分の課題をつかみ、水書用筆も用いて練習するということである。(この授業では、練習の時、すべての文字を書かせていたので、私としては、練習はその日のテーマに合ったものだけで、最後に一枚まとめ書きで全部書くことを提案した。)

前置きが、長くなったが、研究授業を見るためにその先生の教室に入って、私は驚いた。
最初にお話したように、私は、教室の文字環境のお話をさせてもらうために、毎回、教室で使われている活字をチェックする(嫌な奴です…)。
ところが、その先生の教室で使われていたのは、すべて教科書体と手書き文字だった!すごい!完璧…と思ったら、一つ見つけた。それは、生活指導の「月目標」「週目標」。これは、全校で、きっと担当の先生が作っているもの。これが、確か、ゴシック体と丸ゴシックだったと思う。

もちろん、協議会のお話で、まねすべき点として、この先生の教室環境の素晴らしさについてお話させてもらった。

研究会終了後、私を講師として招いてくれたMI先生が、納得できたとして話してくれたことは、これまで、私の学校に何回か来た時、月目標が教科書体なのは、ただそうなんだな、と思っていたが、週目標が手書きである意味がよく分かった、という。
「N=^_^=先生の学校は、手書きを推奨しているから手書きなんですね!」週目標は、月目標から具体的に、担当の先生がその週、子供たちに目指してほしいことを考えて作る。パソコンで、大きめの文字で、用紙の中にうまい具合に収まるよう調整するのは、実は結構面倒。手書きの方がずっと楽で、しかも、正しい。1週間しか使わないのに、一々パソコンで作成していたら時間がもったいない。
「これまで、なんとなく、みなさんがパソコンで作っていたから自分もそうしていたけれど、手書きにします!その方が、楽です!」

考えてみれば、昔は、すべて手書きだった。
デジタルの良さと、アナログの良さ、両方を適材適所で生かしていきたいものである。


というわけで、教室の文字環境は、是非見直してください。
教科書体も、慣れれば、落ち着いていいものです。
この表紙に使用したおせちの掲示物は、本校の栄養士Tさんが作成したのですが、内容と教科書体がマッチして、とてもいい感じです。全体像は、こちら⇊⇊

書写指導に関しては、他にも、「姿勢と鉛筆の持ち方」の関係など、いろいろためになることが多いので、ぜひ、教科書会社のHPなどで確認してみてください。(研修会でも、お話できます!)

次回は、その18 スポーツしよう です=^_^=

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