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お騒がせタクシー通学


可哀想なことに、高校1年生の夏休みの初日(今日から毎日夏の青春パーティーが始まるぞと意気込んだ日)に、交通事故に遭って足を骨折し、自転車通学ができなくなってしまった。

バスも満足に通っていない田舎で、かつ親は送り迎えができなかったので、タクシー通学をするよう医者と親に申しつけられた。

が、そんなバカ目立つことなんて絶対にしたくなくて、だったら「松葉杖で3時間歩いて通う!」とメソメソしていたら、当時付き合っていた彼が「一緒にタクシーに乗って行ってあげるよ」と言ってくれたのである。

田舎の貧困JKは、タクシーなんて人生でも親と2、3回乗ったことがあるくらいだった。この頃、若いJKが1人で乗ったら、タクシーのおっちゃんに連れ去られるんじゃないかと本気で思っていた。おっちゃんにはとんだ失礼な話である。

彼の家から自転車で学校までが40分、私の家までがこれまた別の方向に20分。めちゃくちゃ効率が悪いし、彼にとっては迷惑な話だろうけど「それで君が学校に行けるなら全然いいよ」と言ってくれた。

母も「ちゃんと学校行くのね、よかった」と快諾。

そのときはろくに考えもせず、1人じゃないならいいやと安心していたのも束の間。

田舎の高校生カップルの朝のタクシー登校。これがまあまあまあ目立つこと。あっという間に学校中に広まり、担任の若い女の先生が鬼の学年主任に詰められているのを見たときには慌てた。

間に入って事情を説明したが、このカップルはいかがわしいところへ出向いてそこから真っ直ぐタクシーで来たのでは?と疑われる始末。

どうしようもならず、担任の先生が母に確認の電話をすると

「ああ!助かってますよ、車の乗り降りすらままならないので彼氏君がついていてくれるなら安心します。彼氏君が家から乗ってきた自転車も家にあります」

母のケロッとした対応により、期間限定のカップルタクシー通学が認められ、治るまでの1ヶ月半、何食わぬ顔でタクシー登下校をしたのでした。

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