ズレた指輪と新婚生活
左手にはめられた結婚指輪のサイズが合わない。ジュエリーブランドに疎い私でさえ聞いたことのあるような高級なジュエリー店で、何度もいろいろなサイズを試し他のに。大きすぎるのか、生活しているうちに指輪がくるくる回ってしまう。
選んだ指輪は、薬指の正面がV字型にカーブしていて、真ん中にダイヤが光るデザインだ。V字のカーブは、指が細く綺麗に見える効果があると言われ、毎日つけるものだからと、それが決め手でこの指輪を選んだ。
なのに。
その決め手となったV字は、気がつくといつも薬指の内側に回ってしまい、綺麗に見えない。買う決め手となったデザインを、常に楽しめないのはなんだかつまらない。
自らの手で回して、V字を正面に持ってくることはできても、また気づくと内側に回ってしまっているのだ。
ふと、指輪をつけた左手を見たとき、V字とダイヤが指の横や内側に回ってしまっていると、ダサくてがっかりする。急いでダイヤが元の位置に来るよう戻しても、指には指輪の型がくっきりついてしまっていて、これもまたがっかりする。
2年前に結婚した友人は、仕事で辛いときや嫌なことがあったとき、自分の左手の結婚指輪を見て「今日も頑張ろう」と思えるそうだ。その素敵すぎるエピソードは可愛すぎるし、贈った旦那さん側も贈った甲斐があるというものだ。
私は左手を見ても、そうは思えない。思いたいのに思えない。
しかし、これより小さいサイズだと、かなりきつく、指にはめるときも抜くときも冷や汗をかくほど大変だったのだ。指がむくんでいれば、はめられないときもあるだろう。
もう少しサイズを小さく調整すると、かなり圧迫感がありつけていられない。新婚なのに外しておくのも、せっかく高価な指輪をプレゼントしてくれた旦那に悪い。だから私はこの、微妙にサイズの合わない指輪をつけるしかないのだ。
いつもちょっとズレた位置にある私の指輪。
まるで、私の新婚生活を物語っているようである。