美文の中のリアル男子━━『源氏物語|帚木』読書感想文
今回は、過去に読んで印象に残っている、好きな本について書きます。
高校生の時に「『源氏物語』に興味あるんだけど……」って母親に言ったら速攻でこれ渡されて「なにこれ凶器かな?」って思ったという記憶とともに思い出す谷崎源氏。
(辞書より硬いし重いし、仰向けで読むと内臓が圧迫されて危険)
谷崎さんの文章は最高に美しいですし、格調というものを感じます。
でも私、全部は読んでません。すみません。
そんな超流し読みしかしていない私が大好きな章段は「帚木(雨夜の品定め)」です。
何が好きって、めちゃくちゃリアルな男子の本音が垣間見えるボーイズトーク三昧なところ。
平安のプレイボーイが4人集って、終始「お前、どんな女が好み?」「俺、こんな経験してんだすげーだろ」って会話しているんです。
その内容は時代を超えて私が10代の頃の男友だち同士の会話そのもので、ほんとうによく観察されて書かれているなあと読んだ時は感心しきりでした。
もしこの章段が、本当に紫式部が書いたものであれば、
紫式部は男友だち多めのあっけらかんとした超男前の性格か、はたまた手練手管に長けた恋愛マスターかのどちらかだったんじゃないかなあと勝手に思っています。
先ほども書いたように、ここに書かれていることは集った貴公子たち4人の恋愛遍歴披露と女性談義なんですが、現代の男女関係の価値観と同じところ・まったく違うところがそれぞれあって面白いです。(以下、文章は谷崎源氏からです)
→こういう風な話する人、今も一定数いる気がするw
→自分のこと棚上げ感がすごい。
→強烈な性格の女性の描かれ方が生き生きしていて好き。
結局、両者意地の張り合いをしているうちに精神的に病んで女性が亡くなったとさらりと終わる話のオチ方がすごい。
→花を送るという雅なやりとりに紛れてるけど、子どもいながらありえないくらい放置して、その後も楽観視して放置し続けて女性は失踪というオチにしてしまう最低な中将。
今なら女の尊厳がどうたらとかジェンダーがどうたらってめちゃくちゃ言われちゃうような、男性目線な会話ですね笑
ひたすらに上から目線な女性論。
「ふざけんな」って思うところもあれば、「一理ある〜w」って共感するところもあります。
こういう会話のゲスさにはいろいろランクがあり、それぞれ個人の許せるレベルはあるともいますが、若い頃は特に男女ともにふつうにゲスい会話はするものだし、クローズな環境においては(つまり場を弁えれば)全く問題ないものだと私は思います。
そしてそういう会話の中では、誰しも話題の対象のことを上から目線で語りますよね。この章段のそういうリアルさがすごく好きなんです。
それから、4人の仲の良さそうな打ち解けた雰囲気が感じられるところもいいですよね。
『源氏物語』は長すぎるのでよっぽど熱意がないと全部読むのは大変。
なので、下のようなまとめ本を読んで、面白そうなエピソードだなと思った箇所を谷崎さんなり瀬戸内さんなりの好きな文体で読むのが楽しいのではと思います。
今からゆうに1000年以上前に、女性が、こういう文章を書いたという事実が本当に衝撃でしかない。本当にすごい。
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