父の退職と家族と海
今日で父が退職を迎える。そしてもうすぐ、母が待つ家に帰宅するだろう。
無事最後の勤務を終えたかな?職場は温かく見送ってくれただろうか。
口数の少ない父は、きっと周りから親しみやすいわけでもなく、誤解されやすい方の人間だと思う。それでも根は優しいから、それが伝わっていればいいな。案外涙もろいから、花束を受け取って泣いたかもしれない。
本当の優しさは行動から伝わる
父の優しさは口ではなく、行動から感じられる。小さいころから父と語り合ったような深い話した覚えはないが誕生日やクリスマス、お正月など行事ごとは父が先導して計画を立ててくれた。サプライズでプレゼントを用意してくれていたり、家族を楽しませるためにいろいろと準備もしてくれた。母はいつも、おいしいごちそうを作ってくれた。
私が行事ごとが好きなのは家族が楽しい思い出をつくってくれたからだ。
別の話だが私は大学1年生の時、カナダへ単身で短期留学をした。海外に無縁だった我が家は、それが私にとって初めての海外だったし、家族にとっても初めてだった。
行く前は不安になりながらも、無事1か月間充実した時間を過ごした。
そして帰国してしばらくたってから、母はあることを私に打ち明けた。
「実はね、あなたがカナダで怪我とか何か事件に巻き込まれたとするでしょ。そういうもしものときの為に、私達パスポートを作っておいたのよ。パスポートがなければすぐ駆けつけられないでしょ。これ、お父さんが言い出したの。」
私は心がじーんと温かくなった。思い出すと、今でも優しい気持ちになる。我が親ながら、陰ながら応援してくれる親の世界代表ではないか。ダントツで金メダルとれるぞ。
優しさは受け継がれる
私は3人兄妹の真ん中で、4つ上の兄がいる。兄は公務員として働いているけど、競馬と野球が大好きな自由人だ。
そんな兄が今日の父の退職日に向けて、今まで見てきたこともないような計画と行動を発揮してくれた。
まず長年の勤務を頑張ってくれた父に手紙を書くことにした。それを一旦兄のところへ送るよう指令が出された。私は今イギリスに住んでいるから、退職日の2週間前には届くようにしてくれとのこと。了解。
プレゼントは何にしようかと兄妹ラインで話し合った末、父は海上保安庁で働いているし海が好きだから、クルーズディナーにしようと決まった。
最後にサプライズ好きな父に、花束を退職当日に家に届くように計画した。その計画は帰宅時間が合わず若干失敗してしまったが、さっき帰宅したようで喜びのムービーが送られてきた。その顔は晴れやかで嬉しそうで、つまり大成功だ。
兄、なかなかやるではないか。色々計画と実行してくれて、ありがとう。
私の家族は優しい。ちゃんと受け継がれている。
依頼した花屋さんからのライン↓
離れていてもありがとうは伝わる
離れていても、いつも応援してくれている。後ろで見守ってくれている。口下手だけど、優しさを行動で示してくれる。
そんな父と母に育てられた私たち家族は本当に幸せ者だ。
きっと働いていてつらいこともあっただろう、やめたくなる時もあっただろう。だけど愚痴ひとつこぼさず毎日会社へ出勤する父の背中は、本当に逞しかった。一つの会社で働き続けるってすごいことだ。
これからは自分の余暇のためにお母さんと人生を楽しんでね。
本当にありがとう、おつかれさまでした。
※
余談だが、私の名前の由来も「海」からきている。父は穏やかに揺れるヨットの帆と、日に照らされきらきらした波の様子を見て、いつまでもこのようにあってほしいと願い、「ほなみ」と名付けたそうだ。