ありがとうがいっぱい(明石グルメノォト)
二年前に関東から赴任してきた上司は、
コロナの余韻で、部下となかなか外食に行けなかったそうです。
そうこうしていると月日はたち、
この春、彼は関東に戻ることになりました。
なにやらわたしは「寂しい」という感情が胸の奥にあることに気づいて、
素直に、「食事に行きませんか?」とお誘いをしました。
すると、
「行こう!行こう!」ととても喜んでくれ、
ならば、
関東に帰ったら今後ほぼ行かないであろう、
ローカルな場所に案内したくなり、
「送別会 in 明石」を企画しました。
連れていきたいお店をピックアップ、
時間の段取り、、、
プロデュースするのはかなり頭を使う。
猛スピードでプランを考えていたとき、
「あ!」と思い出しました。
わたしは三十代のとき、
こういった会食の幹事をするのがとても得意で、
よく人を集めてわいわい楽しんでいました。
参加してくれる人たちは、必ずといっていいほど、
「めちゃくちゃ楽しかった!」
「○○さんとひさしぶりに会えてうれしかった。カイトのおかげ」
など、喜んでくれたものです。
喜んで、楽しんでもらえることがわたし自身もうれしかったはずなのに、、、
いつのまにか、
幹事役ばかりしている自分が嫌になりました。
不満に思えました。
「ばかくさい」
と思うようになって、わたしは企画をいっさいしなくなりました。
それすらも忘れていて、
今回去っていく上司をただ楽しませたい、という一心であれこれプランを練っていたら、昔思った負の感情をふいに思い出したのでした。
過去のわたしの気持ちがわかる一方で、
(“店決めてくれたらわたし予約するから”という、一言の気づかいがほしかったわたし)
今回は、楽しんでもらってなんぼ、で、
人のために何かするのはいいもんだなぁと、
昔おいてけぼりになって、忘れ去られた素敵な感情が立ち上がってきて、
しっかりと抱きしめて、わたし自身が楽しめたのでした。
さぁ!
ひさしぶりのわたしの「明石グルメ企画(送別会)」!
ぜひご一緒に楽しんでください。
送別会に参加する同僚が、三十分ほど遅れるとの連絡、、、。
昔のわたしは作り上げたプランが台無しになる!とイラっとしたものですが、今はイラっとしません。
むしろ、やったー!と喜びました。
三十分、プラン外の立ち飲み屋に行ったろ、とほくそ笑んだのです。
右も左もわからない上司を、「こっちこっち」と連れて、
「魚の棚商店街」(うおんたなしょうてんがい)。
閉所や窮屈な場所が苦手なわたしは、
次々やって来るお客さんにやや戸惑っていると、
遅れていた同僚から「着いた!」との連絡。
ややほっとし、
「たなか屋」さんを出て、
次は同僚が、関東の上司にぜひ食べてもらいたい!
と何回もうったえていた明石焼きのお店へ。
初めて食す上司は「うまいうまい!」と絶賛でした。
味変で、ソースをつけて出汁に入れるのもまた美味。
二階に通されて、気兼ねなく次の予約時間までステイできて最高でした。
(店の屋号、、、すみません、ノーマークでした)
さて、今回のメインのお店です。
明石ではかなり有名な、ハーバーの付近にあるイタリアンのお店
「CIRO」
二週間前の十時から、予約スタートで、かなり苦戦します。
ただし、今回はなんと、
一週間切っていたのに、19時半から予約が取れたのです。
これもミラクル。
上司はイタリアンが好きらしく、
なおかつお店の雰囲気、客層などなど、
最初からテンション高めにかなり気に入っていただけました。
ううん、これが幹事冥利につきるってことかしら。
「最初から、今回めちゃくちゃついてますね。部長って持ってますね」
と、わたしが言うと、
「おれ、持ってたためしない」
笑いながらそう言っているのを聞きながら、
わたしは、ああ、リトルカイトだ、と一人で納得できたのでした。
エゴなく、人のためにプランを練り、奮闘していたわたしをきっと応援してくれて、最初からミラクルと思えるべきギフトをくれた、、、。
ああ、リトルからだったんだね。
タイトルの「ありがとうがいっぱい」。
上司と同僚がわたしに「ありがとう」。
わたしがリトルカイトに「ありがとう」と言ったこと。
それから、その朝。
満員電車で、席を譲ったご年配の紳士が、
何度もわたしに「ありがとう」と言ってくれたこと。
(よっぽどしんどかったのか)
CIROにて、
財布を落とされているのに気づいて、
お知らせすると、ものすごく感謝され、、、
なんと、その団体が帰られるとき、
「ありがとう!」
「ありがとう!」
「ありがとうございました!」
とみなさんが挨拶してくれました。
苦笑いで、とんでもない、と言いながら、
そのオシャレご年配の集まりも、
わたしの「連れ」も楽しそうで、
みんなが楽しそうに見えました。
わたしはリトルカイトにこっそり耳打ちしました。
こういうの、幸せ、楽しい、っていうんだね。
こういうの、「ありがとう」の魔法だね。
この、雨の日の明石の記憶、
上司にも暖かな記憶として残ってくれたらいいなと思います。
多分、
もう、
同じメンバー、
同じ場所、
同じ奇跡で繰り返されることは、
二度とないと思うので。
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