父と子、石を割る
国民の祝日の昨日、割と体調がよさそうな息子に声をかけて、久しぶりに自転車をこいで、彼のお気に入りの公園へと向かった。
しかし、祝日だから使えるかも!、と僕らが期待していた日曜限定の遊具は残念ながら使えなかった。
うん、いきなり出鼻をくじかれてしまったね。
しかし、君は、さして気を落とした様子も見せずに、そのそばにある小さな池の隣に建てられた休憩所のウッドデッキの下の隙間にするりと潜り込んで、その暗闇から
「ここ、秘密基地みたいでしょ~」
と僕に語りかけてくるなど、いつもどおり飄々としてクールな少年なままだった。
そして、その後、僕たちは、休日にも関わらず人影もまばらな(とてもいい陽気だったから、きっとみんな車で遠出でもしているのだろうか)、その公園のど真ん中までぷらぷら歩いていった。
そこには干上がった水路、というかもはや単なる溝が左右に走っていたのだけど、その溝の一角になぜかたくさんの石が無造作に積み重ねられている場所があった。
それに気がついた息子はそのうちの中くらいの大きさの石をひとつ拾い上げて、溝の両端にある石垣めがけて、その石を叩きつけ始めた。
どうやら、中から化石を発見したいらしい。
確かに彼の拾った石は、地層らしき線がいくつも走っていて、灰色、白、茶色などが混ざっている、いわゆる堆積石だったから、
「もしかしたら、アンモナイトとは言わずとも、シダ植物みたいな地味系の化石とか見つからないかなあ・・・」
と化石に疎い人間だからこそできる淡い期待を僕も抱き始めた。
そして、二人で交互に、石垣に石を叩きつけて、ひたすら石を割り続けた。
まぁ、結論から言うと、もちろん何も見つからなかったんだけど、
時間にしておよそ1時間あまり、休日の昼下がりのだだっぴろい公園の真ん中で僕と彼の二人きり、まるで矢じりを作る原始人みたいに懸命に石を割りながら、
「この角度で割った方が層に沿っているから割れやすいよね」
とかお互いに知恵を出し合ったり、
「ここに穴があるけど、この穴の中の空気はもしかしたら太古の空気かもしれないぞ」と言いながら、
お互いに鼻の穴を広げて、思いっきりその空気を吸い合ったり、という無駄な時間が、そのときはなぜだか思いのほかぜいたくで楽しく感じられたのだった。
そして、その思いはどうやら息子も同じだったみたいで、自転車で公園を後にする際に、
「今どき、こんな無意味で無駄なこと、きっと誰もしないだろうけど、そーゆーことに夢中になれる僕らって何かいいよねっ!」と嬉しそうに話していた。
僕はすかさず「うん、お父さんも実は家でスマブラやるより、こういう遊びのほうが楽しいんだよね~」と答えておいた。
実を言うと、毎日、仕事で疲れて帰った後に、スマブラの対戦相手をさせられるのが何気にしんどかったのだ。
まぁ、こういう時に限って話を聞いてない彼には慣れているし、結局、なんだかんだで、僕も楽しいからこれからもテレビゲームに付き合う羽目にはなるんだろうけど。
でも、お父さんは、やっぱりゲームだけじゃなくて、いろんな体験を君と一緒に積み重ねていきたいんだよなあ。
それこそ、まさに地層のように、そして、その思い出の地層が、やがて強い石(意志)になって、君を守ってくれるようにね。
<了>
我ながら、なかななハートウォーミングな良い記事が書けたから、これで、いよいよ僕も念願の「noteおすすめ」に選ばれるかもしれないゾ。けど、軽石みたいに頭がライト感覚な選考メンバーの人たちからは、きっとまた既読スルーされるんだろうなあ・・・。しかし、こんなこと言われても僕を選んでくれたら、きっとnoteの株も急上昇するに違いない。
って知らんけど。
とりあえず
ドン・マイケル・J・フォックス、俺!