大学生向け心理学の部屋

臨床心理学を専攻している学生です。特に精神分析学,PTSD,精神医学全般を研究しています。 主な投稿は,大学院対策,心理学検定対策問題,トラウマの話,精神医学論考,書評です。 Twitter→https://twitter.com/sirokuma22534

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最近の記事

読んだ本の紹介 vol.1

私はよく本(特に専門書)を読むので,完読した本を少しずつ紹介したいと思います!! vol.1で紹介する本は, 山田 剛史・村井 潤一郎(2004). よくわかる心理統計  ミネルヴァ書房 です。 私が学部に入学する際にまず買った本ですね。特に文系で数学を不得手とする学生にとって,非常に分かりやすい心理統計学の入門書です。特に確率統計に関する記述に紙面を多く割いており,統計をイメージや視覚で理解することの重要性が伝わります。推測統計や統計的仮説検定については,主にt検定と分

    • 心理療法リスト

      【A】 ➢ABA(applied behavior analysis:応用行動分析) スキナー(Skinner, B. F.)のオペラント条件づけの原則を基に,行動と環境の機能的関係を明らかにすることで問題行動を解決する手法。様々な領域で活用されているが,特に自閉症スペクトラム症や知的発達症,強度行動障害の臨床において適用される。 ➢ABC(attachment and behavioral catch-up: 愛着と生物行動のキャッチアップ) デラウェア大学のドージャ

      • 【心理学・精神医学 今日の10問】vol.1

        • 私の論文検索まとめ(心理臨床・精神医学分野)

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        • 問題集(心理学・精神医学)
          1本
        • トラウマのお話
          6本
        • 臨床を考える
          1本

        記事

          【思弁:この宇宙の片隅で】vol.1

          私は2023年8~9月,慢性的な希死念慮に深く悩み苦しんでいた。人生最大の危機であった。今になって,その時何を考えて,そしてどのようなプロセスでここまで来たのか,言語化してみたい。 私がなぜ希死念慮を抱いていたのか。その理由は「絶望」であった。絶望と言っても,何か要因があるようなものの類ではなく,実存的な絶望であった。 私のこれまでの人生は,常に,いくばくか先鋭化されていた。例えば,「受験のために頑張る」とか「何者かになりたい」とか「何かのために何かをしたい」とか…。何か目的

          【思弁:この宇宙の片隅で】vol.1

          トラウマ関連疾患の回復から語る人間関係のあり方について

          1.トラウマ関連疾患の本質とは? まず,トラウマ関連疾患とは,どのようなものでしょうか?トラウマ関連疾患とは,その名の通り,トラウマが主な原因や病歴の中に含まれている疾患と定義できると思います。有名なものに複雑性PTSD(Complex-PTSD)やPTSDがありますが,その他にも,解離性障害,反応性アタッチメント症,身体表現性障害,パーソナリティー症(特に境界性パーソナリティー症:BPD)などがあります。これらの精神疾患の本質的な原因はアタッチメントにあると考えます。

          トラウマ関連疾患の回復から語る人間関係のあり方について

          再演から見るトラウマの回復

          トラウマにおける再演の定義 トラウマによる虐待環境の再現 再演性を帯びた広範な事象 トラウマの回復のスタート地点- ある事象を概念化できない時期について トラウマにおける再演(エナクメント)について考えている。トラウマにおける再演を自分なりに定義してみると,「個人や社会のトラウマに起因して,ある事象,現象がトラウマタイズ(トラウマの様相を帯びること)され,意識的あるいは無意識に再度トラウマに接触すること」と言えるのかなと思う。例えば,虐待的な環境にあわれた方が再度,

          再演から見るトラウマの回復

          自殺,自死に関する私論

          まず「自殺,自死」という言葉に違和感がある。というのも,私の感覚として,自殺は「I am killing myself.(私が自分を殺している)」というより「Something is killing myself(何かが私を殺している)」という感覚に近い。Somethingの中には,Past(過去)やEnvironments(場)やTraumaなどがあると思う。自殺には必ずプロセスがあるのに,そのプロセスを考えずして,自死や自殺に自己責任という観点を入れて,支援をごまかしてい

          自殺,自死に関する私論

          トラウマに悩む方へ

          PTSD、CPTSDの方にとっては過食嘔吐や自傷行為などは一つのストレスコーピングとしての機能を有している。というのは、このような行為と感情の体験が、自分の行動、認知を自分で制御できる(コントローラブル)という感覚を持てるからである。動物実験による神経生物学的研究では、状況の統制可能性を司る部位、つまり学習性無力感に関与する部位がPTSDにおいて特に影響を受けることが知られている。であるから、PTSDのサバイバーが統制不可能性の中で、自らを律しようと、制御しようとして、その状

          CPTSD論考

          本来は複雑性PTSDの人の典型的な診断の変遷は以下のようになると思う。 1. うつ病(DESNOSの一部,抗うつ剤+α処方) ↓ 2. 双極性障害(DESNOS,抗うつ剤による躁転)or(+) BPD or(+)NPDなど(EPCACE様症状,自傷行為などの行動化で発見されること多し) ↓ 統合失調感情障害(プレコックス感はなし,抗精神病薬の反応性低い,本当は解離性幻覚orせん妄の可能性高い,寝たら回復することが多い→寝ても回復しない場合は統合失調症性が高い可能性あり) ↓

          子どもの性的トラウマから社会へ

          子どものトラウマ体験は、その後の発達に大きく影響する。成人になるまでにPTSDや複雑性PTSDになるだけでなく、摂食障害や境界性パーソナリティ障害、双極性障害、統合失調症、性同一性障害、うつ病、など、正直、何が起きてもおかしくない。そのくらい、子どものトラウマというのは公衆衛生上最大の問題なのだ。しかしながら子どものトラウマは、被害者が自覚的に言語化し、表現することは非常に難しく、さらには大人社会が隠蔽する可能性すらあるのが現状なのである。その点、子どもは遊びなどの表象レベル

          子どもの性的トラウマから社会へ

          境界性パーソナリティ症から考える解離

          境界性パーソナリティ障害患者は自傷行為における痛覚閾値上昇が見られるという研究がある。これは自傷行為そのものによる生理学的な現象だが、恐らく解離することによる無痛化も起きていると思う。 このことを鑑みると、自傷行為をやめるという約束を結ぶことがいかにリスクがあるか考える必要がある。解離という、ある意味、やむなく無自覚的にとった対処方略に対して、自傷行為はやめなさいと言うことがいかに理にかなっていないか。約束することで、更に追い込まれ解離性が高くなることも考慮すると、かなり危な

          境界性パーソナリティ症から考える解離

          臨床心理学における学派論争への私論

          臨床心理学とその学派論争において重要なテーマの一つに「人間性への疑義(ここではあえて人間性の否定とまでは言わない)」がある。特に,精神分析家間,あるいは行動療法に対して,1900年代,長らく論争が行われたことは事実である。特に有名なのは,クラインvsアンナ・フロイトの論争だ。この論争は,非常に感情的な白熱した論争に至った。臨床心理における学派論争の大きな特徴は,一般科学(数学・物理など)と違って,心理療法の理論や核心となる考え方が,発案者の人間性や生涯の臨床経験に大きく依存し

          臨床心理学における学派論争への私論

          大学院入試への必携テキスト集

          ・はじめに 以下に記す本はあくまで心理系大学院入試に受かるために厳選した本です。以下に掲げる本を読んだだけでも受かるかもしれませんが,もっと大事なことは,日々の授業やより詳しい専門書を読む経験による基礎~臨床にわたるエッセンスと「考える力」の獲得です。心理系大学院に受かることだけを目標にして暗記だけするのは非常にもったいない。ぜひ心理の世界を楽しみながら,勉強していきましょう。 ・大学院入試までの手順 1.興味がある研究者,分野,領域を特定し,それに関する本や論文を読む。興

          大学院入試への必携テキスト集