境界性パーソナリティ症から考える解離
境界性パーソナリティ障害患者は自傷行為における痛覚閾値上昇が見られるという研究がある。これは自傷行為そのものによる生理学的な現象だが、恐らく解離することによる無痛化も起きていると思う。 このことを鑑みると、自傷行為をやめるという約束を結ぶことがいかにリスクがあるか考える必要がある。解離という、ある意味、やむなく無自覚的にとった対処方略に対して、自傷行為はやめなさいと言うことがいかに理にかなっていないか。約束することで、更に追い込まれ解離性が高くなることも考慮すると、かなり危ないと思うのだ。ではどうするか。その場合は知覚情動記憶の言語化のレベルを下げる。曝露療法での自覚的障害単位を下げるイメージである。 ここまでが応急措置だと思う。 解離の可能性があると判断した場合はDESなどのアセスメントはしたほうがいい。例えば、解離にも色々あって、心理職が想像する以上に解離性が高い人もいる。解離性遁走(フーグ)は案外多いと思った方がよい。何故か電車に乗ってどこかの駅にいたとか。 DESの結果や聞き取りによっては第三次解離、つまりはDID(解離性同一性障害)の治療に移る必要性も出てくる。この場合、さらに高度な配慮と技術が必要になる。 解離があるのに漫然と自傷行為,解離してないかな?っていう発想ができるかできないかで、かなり心理職のレベルがわかると思う。
【引用文献】
境界性パーソナリティー症の痛覚閾値に関するレビュー論文
→New AS, Goodman M, Triebwasser J, Siever LJ. Recent advances in the biological study of personality disorders. Psychiatr Clin North Am. 2008 Sep;31(3):441-61, vii. doi: 10.1016/j.psc.2008.03.011. PMID: 18638645.