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プリンが人を呼ぶ?! 岡山で最も選ばれる観光地『倉敷』が展開する観光戦略を分析。

初めまして!

ブランディングテクノロジーの公式noteに初めて寄稿をさせていただきます山崎です。

初回となる今回は、全国に数ある観光地の中で独自の戦略によってブランドを作り上げたケースを探し、その戦略を分析してみたいと思います。

本記事で取り上げさせていただくのは、岡山県倉敷市の美観地区。どのようにして、“観光客に選ばれるまち”としての倉敷は成り立っているのか。その一部を分析してみます。

倉敷とは?


まず、倉敷という土地がどのような場所なのか。ご存知でしょうか。

倉敷市は、日本の中国地方、岡山県の南部に位置する市。白壁の町並みが残る倉敷美観地区や本州と四国を結ぶ瀬戸大橋などで知られる。中国地方で三番目の人口を擁し、中核市に指定されている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%89%E6%95%B7%E5%B8%82

◆工業製品出荷額 中核市2位

石油・化学
鉄鋼
自動車 (輸送用機械器具)
繊維 (学生服)
(国産ジーンズ発祥の地)

◆農林水産物

桃 (清水白桃生産 全国2位 H28年度)
ぶどう
(加温マスカット・オブ・アレキサンドリア生産全国1位)
(ピオーネ生産 全国有数)
スイートピー出荷 全国2位


上記の引用部に登場する『倉敷美観地区』。これは、倉敷が誇る観光・文化資源の1つです。「倉敷市」と画像検索すると画面いっぱいにその画像が出てくるほど、倉敷市を語る上では欠かせないもの。

県内では、この美観地区を一目見ようと、多くの観光客が訪れています。岡山県内の観光地の中では、もっとも多くの観光客が訪れるスポットに。

http://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/437773_pdf2.pdf

今回は、この美観地区を軸とした倉敷市のローカル観光戦略に着目してみます。

固有の観光資源を活かす観光コンテンツ戦略


倉敷市のもっとも大きな観光資源と言っても過言ではない美観地区の中心にあるのが、文化庁から『重要伝統的建造物群保存地区』の指定を受けている倉敷市倉敷川畔エリア。指定を受けた昭和54年から毎年修理・修景が行われ続け、風情のある町並みは実現・維持されてきました。

市をあげて守り、磨いてきたこの風景があることは、全国に数ある観光地の中から選ばれるためには大きな強みになります。

とはいえ、風情のある町並みがそこにあるだけでは選ばれる理由にはなりません。倉敷が選ばれている背景には、その町並みを舞台にあらゆる体験ができることが挙げられるでしょう。

デニム製品のショッピング、民芸品・美術品の鑑賞、特産品の手作り体験、など…。

https://www.kurashiki-tabi.jp/feature/6500/

これらのコンテンツに共通しているのは「土地に根ざしたもの」である事。紡績業で栄えた倉敷ならではのデニム製品。伝承されてきた民芸品・美術品。土地に根付く特産品。

倉敷では、その土地に息づく資源や歴史を掘り起こし、それらを現代の人が楽しめる体験事に仕立て上げていく事で、他の土地には真似できない独自性あるコンテンツを生み出している事がわかります。

拡散能力を備える顧客層をつかむ観光プロモーション戦略

次に、倉敷が観光客に選ばれている理由として挙げさせていただくのは「拡散能力を備える顧客層を獲得している」点です。

インターネットが普及する以前は、業界の有名人やテレビで活躍する芸能人のような選ばれた人だけが持つ特別な力だった「影響力」「拡散力」。インターネットの普及とSNSの台頭により、(大小はあれど)誰もが「影響力」「拡散力」を持つようになりました。

倉敷は、この「影響力」「拡散力」を持つSNS世代の顧客を味方につけてきた事がわかる写真があります。

古き良き町並みの中に並ぶ人、人、人…。スマホ片手に長蛇の列を作り出す人々。その中の多くの方のお目当ては、築100年の古民家を活用したゲストハウス&カフェ「有鄰庵」が提供する『しあわせプリン』です。


https://yuurin-an.jp/cafe/

インスタグラムで #しあわせプリン と検索すると、食べた人たちが可愛らしい写真を載せている事がわかります。

SNS検索で情報収集を行う若年層の中には、この写真をきっかけに「倉敷に行ってみよう」と思い立つ人が少なくないはず。

こうしてみると、倉敷の観光戦略におけるこの名物プリンは、拡散能力を備える顧客層を獲得するためのフロントフックコンテンツと言えるでしょう。

名物コンテンツに引き寄せられた顧客が倉敷を訪れ、名物コンテンツを楽しんだ後に倉敷本来の魅力である風景や体験も楽しむ。あるいは、名物コンテンツを入り口にして倉敷を調べ始め、独自の町並みがある事を知る。

提供する側視点に偏って1つの特徴や独自性に固執してしまうのではなく、観光客の心情を理解し、くすぐるような仕掛けを生み出したこのプロモーション戦略は、“選ばれるまち”を生み出すための素晴らしい工夫の1つだと思います。

本当に知ってほしいこと・PRしたいことを決める事とそれを知ってもらうための戦略は、別物として考える必要があるようですね。


未開拓な市場を切り開く観光インバウンド戦略

最後に倉敷が観光客に選ばれている理由として着目するのは、「外国人観光客を受け入れる拠点がある」点です。

(地域・国にもよりますが)外国人観光客の多くの特徴は、滞在期間が『訪日外国人の平均滞在日数から訪れる場所と消費額を把握する!| ライブ通訳』によると、外国人の平均滞在日数は9.1日(平成27年時点)。

日本以外の複数カ国も合わせて旅行しているケースもあるため、中・長期休暇を取って日本を訪れている事がわかりますね。旅行中は交通費・宿泊費・食費…とそれなりの費用がかかる中で、宿泊費を抑えるために宿泊先としてゲストハウスを選ぶ外国人観光客がいます。

ゲストハウスのような安価に宿泊・滞在・交流ができる拠点があることは、外国人観光客だけではなく若年層の日本人旅行客にとっても嬉しいこと。

コンテンツが決められたパッケージ旅行よりも、自由度が高い個人旅行。人口減少&消費行動が控えめな国内市場よりも、伸び代が大きい海外市場。そのような時流を踏まえても、観光客のプランに組み込みやすい手頃な宿泊・滞在拠点があることは選ばれる観光地を作るために欠かせないポイントだと考えられます。

選ばれる観光地になるための戦略まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

今回は、独自のコンテンツ・プロモーション・インバウンド戦略を展開する事で、“選ばれるブランド”を構築している倉敷を分析させていただきました。

______________

①コンテンツ戦略
→その土地に息づく資源や歴史を掘り起こし、それらを現代の人が楽しめる体験事に仕立て上げていく事で、他の土地には真似できない独自性あるコンテンツを生み出した。

②プロモーション戦略
→提供する側視点に偏って1つの特徴や独自性に固執してしまうのではなく、観光客の心情を理解し、くすぐるような仕掛けを生み出した。

③インバウンド戦略
→収縮傾向にある国内市場ではなく、開拓の余地がある外国人観光客の需要を受け止める事ができる拠点を持っていた。
______________

このような分析を踏まえ、株式会社 博報堂コンサルティングが示している『ブランドの扇[※1]』に沿って倉敷・美観地区のブランドを整理してみるとこのような形に。

こうしてみていくと、宿泊・ショッピング・飲食の機能を果たし、ブランドターゲットにとっての名物スポット・宿泊施設となっているゲストハウス&カフェ「有鄰庵」は、今後の倉敷・美観地区のブランディングにおいて鍵を握るポジションにいると考えられますね。


同じように古き良き資源をお持ちの地域や取り組みに従事する皆様にとって、ご参考の一つとなれるようなものになっておりましたら幸いです。

[※1]BtoB企業におけるブランド構築の方法論 ─ ブランディングの過去から現在、そして未来へ ─ | 株式会社 博報堂コンサルティング


おまけ


『ふっこう宿泊クーポン』
https://www.kurashiki-tabi.jp/news/23116/

“平成30年7月豪雨災害からの観光復興に向け、災害から1年を迎える時期に合わせ、復興支援への感謝を込めた宿泊クーポンを、7月1日から発行します!夏のご旅行に是非ご活用いただき、倉敷での観光を楽しんでください!”

災害の影響で宿泊のキャンセルが相次ぎ、乗り入れる観光バスが前年同期比で4割を切るまで落ち込んでいた[※2]という倉敷・美観地区。盛り上がりを取り戻すために、お得に宿泊できるクーポンを発行しています!

ぜひ、この夏のご旅行の際にご活用いただいてはいかがでしょうか。

[※2]【西日本豪雨】倉敷・美観地区は観光OKです―“自粛”の観光客に「訪れるのも支援」と訴え | 産経新聞社


参考WEBサイト・資料

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/hozonchiku/judenken_ichiran.html

http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/cotton-pj/

https://www.kurashiki-tabi.jp/request/

https://iju-kurashiki-gurashi.jp/areamap