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1分で読める! 読切超短編小説集

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1分で読める!読切超短編小説 不思議の世界へようこそ。 他にも沢山作品があります。 こちらからお読み下さい。 アルファポリスhttps://www.alphapolis.co.…
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書類の記入【読切超短編小説】

書類の記入【読切超短編小説】

ジャージ姿のおばさんがN氏に呼びかける。
「え、ここと、ここと、ここにサインを。」

そこからも長かった。
次から次へと書類が出てくる。

「ここと、ここと、ここにもサインを。
 何かあったら困るのでね。
 あ、もちろん、
 内容はきちんとご確認ください。」

午前8時に行って、
午前11時までかかってしまった。
N氏はくたくた。

後ろを見れば、
とんでもない行列になっていた。

正午、1年生の

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専門家【読切超短編小説】

専門家【読切超短編小説】

K王国で、米の大凶作が発生した。

王様、すぐに手を打とうとするが、
彼は、国を動かす専門家であり、
農業の専門家ではない。
原因がわからなければどうしようもない。

農民が呼び出された。
しかし、彼は、農作物を作る専門家であり、
凶作を解決する専門家ではなかった。

天文学者が呼び出された。
しかし彼は、天候を予想する専門家であり、
天候を操作する専門家ではなかった。

しかも、調べたところ、

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徳川埋蔵金【読切超短編小説】

徳川埋蔵金【読切超短編小説】

江戸幕府は、困っていた。

先代の将軍、家康公の遺した財産は、
あまりにも莫大すぎて管理は困難を極めた。

ある日、隠居していた、家康の家臣の1人が、
城を訪れた。
「実は関ヶ原の戦いの前、非常時に備え、
 その当時の財産の一部を、
 ある場所に埋めたのです。
 
 しかし、激しい戦の中で、
 その地図は焼けてしまい…」

幕府の家臣達、眉をひそめる。
そんなものどうやって探すのだ。
仮にその話が

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大怪獣【読切超短編小説】

大怪獣【読切超短編小説】

21✖︎✖︎年、
地球は大怪獣に襲われていた。
いかなる兵器も通用せず、
慌てふためいている間に、
街は破壊され、食糧は食い荒らされた。
イグアナのような風貌から、
アナゴンと名付けられた。

しかし、
事態を改善する薬が開発される。
人間に投与する事で、
人間を怪獣に変身させ、
やっつけようというものだった。

名乗りをあげた若い青年がいて、
たちまち計画は、実行に移された。

アナゴンをやっつ

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クレオパトラ【読切超短編小説】

クレオパトラ【読切超短編小説】

世界中が胸を輝かせ、
スクリーンを見つめていた。

長い間、男達の期待、夢と希望を、
膨らませ続けて来た、
クレオパトラの顔が
長年の研究の末、
明らかになったのだ。

女性達とて、例外ではない。
やはり美しいものを見るのは、
誰にとってもワクワクするものだ。

ついに、スクリーン点灯。

しかし、皆が期待した姿ではなく、
目撃した人々に落胆が走る。
泣き崩れ、
あまりのショックに倒れるものも出た

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ペット【読切超短編小説】

ペット【読切超短編小説】

宇宙船に乗った2人組が、
ある惑星に降り立った。

「かなりの長旅で、疲れたろう。」

そう言って彼らは、ケージの中から、
ペットを10数匹出した。

言うまでもないが、
長い宇宙旅行なのだ。
ペットであり、緊急用の非常食である。
言うなれば、大航海時代、
船に乗せていた豚のようなもの、
増やしては、食べることもあるのだ。

「ずっと狭いところにいたんだ。
 少し遊んでおいで。」

「今回はだいぶ

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天国へ行きたかった男【読切超短編小説】

天国へ行きたかった男【読切超短編小説】

S氏は、天国へ行きたかった。
毎日それだけを目標に生きていた。

人生は長くて100年でも、
天国へ行けば、永遠の安らぎ。
生きている時より、死んだ後の方が大事。

全てを犠牲にして、天国入りを目指した
泥棒、強盗、
犯罪をしないことはもちろん、

ポイ捨てや、ピンポンダッシュ、
酒、タバコ、ギャンブルに至るまで、
全くしなかった。

トラブルに、
巻き込まれることも考えられる。

出来るだけ外出

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300年後の未来【読切超短編小説】

300年後の未来【読切超短編小説】

N氏はボルトを閉めた。
タイムマシンが、ついに完成した。
まさに歴史的瞬間だった。

「ここ20年やり切った甲斐があった。」
涙ぐむN氏。

彼には目的があった。
恐竜や空飛ぶ車を、見たい等という、
ミーハーなものでは決してなかった。

未来の技術を持ち帰り、
食糧不足 地球温暖化 人口増加
現代の様々な問題を解決しようという、
崇高な目的。 

そのために人生の20年、
いやもっとたくさんの時間

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未知の惑星探検【読切超短編小説】

未知の惑星探検【読切超短編小説】

遥か彼方の遠い惑星、P星。
旅立って行く宇宙船を、
地球の人々は見送った。

この時代、環境汚染が深刻化し、
地球に住めるところは減少。

人類の移住先を見つけるために、
10人のチームが、結成された。

P星へ、着陸したと報告が入った。
遠い惑星である。
既に、地球を出発して10年が経っていた。

回線が繋がる。
地球の人類は、期待の目で見つめる。

「皆さんの応援のおかげで、
 P星に着陸しま

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先輩の功績【読切超短編】

21✖︎✖︎年、人類は、
かつてない程、発展を遂げていた。

地球のあらゆる問題は、
過去の先人達の遺した、
偉大なる功績によって、
全て解決できたのだ。

気候調節機、隕石撃退機、降水機等、
あらゆる事態に備え、
様々な機械が開発され、遺されていた。

しかし、ある時人類は滅亡する。

世界を大津波が襲ったのだ。
それに対応する津波対策機は、
もちろん遺されていたのだが、
ずっと使われず、かなり

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宇宙エレベーター【読切超短編小説】

宇宙エレベーター【読切超短編小説】

テープカットが行われた。
人々は喜び、歓声を上げた。

まさに待ちに待った瞬間だった。
人口増加 地球温暖化 資源の枯渇
それらの問題を解決するため、
ついに宇宙エレベーターが完成した。

隣の太陽系のB惑星まで
すぐに行けるようになった。

果てしない大地と、
尽きることのない食糧。
皆、希望で胸が一杯だった。

人々が乗り込もうといた時、
宇宙エレベーターの中から
人が出てくる。

「こんにち

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地獄【読切超短編小説】

地獄【読切超短編小説】

地獄はかつてないほど繁栄していた。
それもそのはずである。

罪をおかした悪人でいっぱいで、
危ないと思う人もいるかもしれないが、
考えてみてほしい。

強盗、殺人、窃盗など、
ほとんどの罪は、
生きていてこそ被害を受けるものの、
死後の世界では何の痛みにもならない。

いやむしろ、
凡人とはいえない人々が、
集まっているのである。
普通にない発想を持った人間ばかり。

もちろん、最初のうちは、

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