
エネルギー電源としての原子力,原発という装置・機械の不安定性・危険性,とりわけ元来非経済的であった問題,「安全・安価・安心」という虚説はもともと破綻していた事実
※-0「原発は安全・安価・安心」などと「大ウソ」
a) この※-0の「見出し:文句」以外には表現できない原発(原子力発電)の「危険性・高価さ・不安さ」は,21世紀の現段階となってみれば,原子力をエネルギーに焚いて電力をえるといった技術体系が,その特定国の亡・滅国どころか,世界全体,すなわちこの地球「環境じたい:全体」を大破壊しかねないほど,人間・人類の生命の根源を否定し,破壊する本質を有していた。
すなわち,エネルギー電源としての原子力を核燃料に使用し,原発という装置・機械を稼働させ,電力を入手するという技術方式は,その出発点においてそもそも「不安定性・危険性」を充満させていた。
とりわけ元来,非経済的であった電力の生産方式を,きわめて「安全・安価・安心」だという虚偽にいいくるめてきたごとき「原発イデオロギー」を世間に広めてきたそのツケは,いわば現時点になってみれば,いよいよどん詰まりの局面にまで到達している。
アメリカの場合,核実験(原子爆弾や水素爆弾)の地上・海上での実施は1963年までとなっていた。1964年以降は,部分的核実験禁止条約の締結により,地下核実験をおこなってきた。そして,日本が原発を初めて商業用原発として運転したのは1966年,茨城県那珂郡東海村に建設された日本原子力発電所であった。
世界中で2020年1月1日現在,世界の31の国と地域で437基の原子力発電所が運転されていた。また,39の国と地域で59基が建設中,82基が計画中であり,稼働できる原発は435基だと報告されていた。
註記)一般財団法人日本原子力文化財団「1章 日本のエネルギー事情と原子力政策〈参考〉世界の原子力発電の状況」『原子力総合パンフレット Web版』2024年1月改訂を参照。
b) つぎに3つの統計図表を参照しつつ関連する「基礎的な知識」を説明してみたい。

この統計図表で特徴的に表現されていた事実は,まず,スリーマイル島原発事故(1979年3月28日)とチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)の影響はほとんどなかったようにみえる。ところが,しかし,東電福島第1原発事(2011年3月11日)の影響はもろに出ていた。それもアジア地域における原発導入数の落ちこみ具合が顕著になっていた。
2000年代には原子力ルネサンスが提唱されていたものの,それほど影響力が発揚されないまま,しかも,つぎの2010年代には東電福島第1原発事故が発生したため,アジア地域においてはその影響が明確に出ていた。
それに比べ,「西・中欧」と「アメリカ」における原発の新増設は「3・11」以前からすでに,頭打ちになっていた状態がうかがえる。これに対してとくに中国が原発の基数を増やしてきた結果が,前掲の図表にははっきり反映されていた。その間,「東欧・ロシア」は大幅に原発を目立って増やすことはなかったにせよ,一定数は維持しつづけてきた。
以上の事実は,つぎの図表によって,より明解に察知できる。

従来的な史観で仕分けるとしたら,先進国(アメリカ,西・中欧)はそれほど原発を増やしていないというよりは,廃絶したドイツのような国もあって,これらの国々を総計した模様は,以上の作図のように下降線をえがいていた。それに比較して発展途上国,とくにいまでは先進国になっているが,中国が急速に原発を新増設してきた経過がきわだっている。

この3番目の統計図表は,とくに日本の原発の多くが未稼働状態に措置されざるをえなかった経緯を,そのまま反映している。2011年以降におけるこの棒グラフで上部の桃色に色分けされた部分の比率が,その経過事情の大部分を反映している。
しかし,ざっとこれらの統計図表を眺めて思うに,1990年以降における原発の新増設はそれまでの伸び方(増え方)とは「質的に一線を画した」経過をたどっていた。この記録はいうまでもなく,1986年のチェルノブイリ原発事故の影響を受けたと観察してよい。
※-1 大事故を起こした原発の後始末は石棺方式しかありえない
a) チェルノブイリ原発事故の現場は,石棺をかぶせるかたちで現在まで後始末をほどこしたかたちになっている。しかも,その石棺に相当する施設は2代目になっている。
東電福島第1原発事故現場についてももちろん,石棺方式で始末をしておくほかないという意見があったが,現地被災者の人びとからは猛反対する声も上がっていて,現在まで石棺方式での後始末は想定外とみなされている。
そこで最近になると,こういう関連の報道が出ていた。『毎日新聞』2024年9月11日朝刊では1面,『日本経済新聞』同日朝刊では2面に,その該当記事が掲載されていた。それら紙面を直接紹介しておきたい。

『日本経済新聞』は朝刊2面の左上に以下の記事を配置

たいそう遅咲きになっていた漫才師綾小路きみまろは「きみまろのあれから40年」という自分の歌をもっていた。時間の経過を比較するためにきみまろを引き合いに出してみたが,東電福島第1原発事故は事故ってから本日(2024年9月12日)だと,すでに13年と半年が経ったことになる。けれども,依然「デブリ取り出し」(約880トンある)は基本,「これからの問題」である。
現在までのところ,その数グラムしかデブリは取り出せていない。今後この「デブリ取り出し作業」が,事故を起こした原発における後始末として,いったいどのくらいの年月が要することになるのか,この工程については概算・見込であっても,予測じたいを立てることが困難であった。
b) 東電福島第1原発事故から取り出すべきデブリは,爆発事故を起こしたうちの3基分からそれを除去せねばならず,たとえ除去=移動させうるにしても,さらにその後につづいて予定される「廃炉工程」が,いちおう相当する工事の手順を完了できるまで,はたしてどのくらい年月を要するのか,皆目,検討すらつかないでいる。
多分,その「デブリ取り出し」作業は,「3・11」発生から半世紀あとの2061年になっても完工にまで至りえない,と予想せざるをえない。しかし,それでも現在の時点では,廃炉工程というにはあまりにも微少な規模でのデブリ取り出し作業が挑戦されただけである。
「釣りざお式装置」? まるで渓流で川魚を釣るわけでもなし,以上のごとき「デブリ取り出し」の方法で,本当に所期の目的が本式に進捗する段階にまで到達できるのは,いつごろになるのか? 考えただけで絶望的な気分に襲われる。
原発問題になると,「原子力非常事態宣言」が今日もまだ発令中である事実を指摘することになるが,まさしくこの日本の国土にはふさわしくない電力生産方式であった原発がたくさん立地している。
c) 先月の下旬であったが,つぎの報道があった。この記事は「規制委発足後,全国の27基が再稼働をめざして審査を申請。17基が通過し,うち12基が再稼働したが,不許可になるのは初めて」となった事実を報道していた。その理由はとくにこう指摘されていた。
★ 敦賀原発2号機,不許可の処分書案公表
新基準に不適合 規制委 ★
=『毎日新聞』2024年8月28日 11:33,更新 19:47,
https://mainichi.jp/articles/20240827/k00/00m/040/251000c =
規制委は〔日本原子力発電・敦賀原発〕2号機の審査で,2号機から約300メートル離れたK断層が,新規制基準で活断層と定める約12万~13万年前以降に活動した可能性や,2号機の原子炉直下へ連続している可能性を,いずれも否定できないとした。新規制基準は,活断層の真上に原子炉などの重要施設を造ることを禁じている。
2024年1月1日に発生した能登半島地震に関連しても,震源地近くに立地していた志賀原発は,たまたま休止中であったので事故は発生しなかったものの,原発の設備には相当に深刻な物損被害がもたらされていた事実がのちに判明し(この間北陸電力側は隠蔽工作を画策していたが,結局バレることになった),もしもこの原発が稼働中であったならば大事故発生の可能性があったと推測されていた。
原子力というエネルギーが電源に利用されてきた。だが,原発という装置・機械をめぐり主張された「安全・安価・安心」という3提唱は,本来より「偽証を定められていた」「虚構であった」ゆえ,最初からウソにまみれていた。
もとより破綻していた原発の技術経済的な論理が,電気生産という技術の世界で生かされるといっても,これが経済合理的に発揮しうる可能性は,その現実の舞台をみるに限定されていた。
2010年であれば,原発1基(性能は100~120万キロワット時)が製造・販売される価格は5千億円程度であったものが,同年代中のその後には,一挙に1兆円に跳ね上がった。またごく最近になると,この価格がさらに上昇していた。その原因は安全対策であった。
以上,ここまでの記述は2024年9月12日に追加・補述した段落であったが,以下につづく内容はちょうど2年さかのぼって2022年9月時点における記述となっている。そのころはまだ,シングルマザー世帯問題の悪影響がタップリ継続させられていた時期であった。
※-2 「貿易赤字が最大の 2.8兆円 8月,資源高・円安で 13カ月連続」 『日本経済新聞』2022年9月14日夕刊1面
a) まず,この記事の前文を引用する。
財務省が〔2022年9月〕15日発表した8月の貿易統計速報によると,輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字だった。エネルギー価格の高騰や円安で輸入額が前年同月比49.9%増の10兆8792億円に膨らみ,輸出額の伸びを上回った。赤字額は東日本大震災の影響が大きかった2014年1月を上回り,比較可能な1979年以降で単月の過去最大となった。
当時,「ロシアのプーチン」が起こしたウクライナ侵略戦争の悪影響のため,とくにエネルギー(LNG,石油)の価格が高騰していた。電力を生産をする用途に向けられるLNGは,先進国を中心に民生用に広く消費されている関係もあって,非常な価格上昇を記録していた。
日本の経済は,2010年代におけるアベノミクスの大失敗,リフレ政策(インフレ目標値を2%に据えたそれ)の不首尾・未達成のせいで,いわば「ほどほどのインフレ政策の実現」をみることもなく,
あの「プーチンのロシア」による狂気の発揮となったウクライナ侵略戦争の勃発によって,いまやにっちもさっちもいかなくなった,すなわち(完全に動きがとれなくなった)苦境にはまりこんでいた。
つまり,いまとなっては経済の再生というか活性化を試みようとするために打つ手がほとんどなくなっており,それゆえに前段の日経記事のように
「エネルギー価格の高騰や円安で輸入額が前〔2021〕年同月比49.9%増の10兆8792億円」となり,「輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字」となった。
円ドル為替レートは,9月16日(金)で143円44銭~46銭であり,この円安状態はアベノミクスの大失政を完璧なまで,つまりバカ正直に物語っており,表現しつくしてもいた。当時,日銀・黒田東彦総裁はなにも動きをとれないまま,雪隠詰め状態でうずくまる態勢だけしか構えられなかった。
当時までですでに,日本のエネルギー問題,発電・送電・給電・配電・充電などの全体においては,まずその電力生産に使用される燃料価格が高騰してきた点が目立っていた。
当時また,ロシアが世界各国に向けて供給していたとくにLNG(天然ガス)は,ウクライナ侵略戦争を展開・推進するうえで,国際政治において戦術的取引の材料に〈悪用〉されてしまい,このしわ寄せ的な悪影響がその価格水準を大幅につり上げる要因となって出現した。
b) 電力自由化のもと電力不足が心配だと喧伝されるが,とくに大手電力会社系が火力発電所(老朽化した施設であったが耐用年数関係が完全に尽きていたのではない)を先走ってむやみに休止状態に措置しておいたために,その電力不足が発生してもいた事実。
本ブログは,以前利用していたブログサイトにおける記述(2022年9月17日)となるが,その前日,16日の日経朝刊「冒頭記事」を取り上げ,以下のように議論していた。
「電力供給,12月不安消えず 寒波で500万kW不足も 火力再稼働は1月,老朽設備に故障リスク」『日本経済新聞』2022年9月16日朝刊1面の報道は,
日本における電力需給関係の裏事情に潜む問題,その肝心な要因には触れないまま,原発再稼働を企む原子力村の意向を汲むだけに偏向した立場を,露骨に維持していた。
この記事は,電力不足という事態(緊急?)をどのように捕捉し理解するのかという肝心な点は,ともかく「原発の再稼働」を積極的におこなう方向にもっていけば,万事解決するといいたい『日本経済新聞』の立場(原子力村的な価値感)を大前提に置いていた。
それゆえ,なにやかやいいながらも結局は,つぎの解説記事のなかに現われるごとき「いつもの主張」である「原発必要論」に帰着していた。
c)『日本経済新聞』2022年9月11日朝刊3面「〈原子力政策 転換の行方〉核のごみ 先送りの連鎖 EU,処分場とセットで議論 早期解決,原発活用へ必須」という見出しの解説記事は,
以下のごとき表も添えていながらも最後の段落では,通常の科学的な認識基盤であればけっして受けとめられない「奇っ怪な主張」を,性懲りもなく反復していた。

原発の議論を先送りしてきた結果,多くの課題が残されたままになっている。とはいえ原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給はなりたたない。カーボンゼロとエネルギー供給を両立させるためには原発をどう稼働させていけるかを考える必要がある。
本ブログ筆者は,以上の論旨に対して反論し,以下のように批判する。
「原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給はなりたたない」という思いこみのはげしい単なる妄論は,2011年「3・11」以後,まがりなりにであっても,つまりなんとかであっても「電力供給」を持続してきた最近日本の電力事情史を,頭から無視した暴論であった。
2018年9月6日,北海道胆振地方東部で発生した地震は最大震度7を記録したが,そのさい北海道電力は,道内全域の停電「ブラックアウト」を発生させていた。この停電事故に関しては,原発(泊原発)の存在じたいが「負的(不適)要因」となった事実が見逃せない。
要するに,原発を大いに稼働させておけば,エネルギー安定供給がそつなく実現できたのかについては,基本から疑問を提示しておく。すなわち,日本の原発史の記録がどうであったかを精査していうまでもなく,そうではなかった事実はいくらでもあった。
東電の場合,地元の新聞紙がたとえば,つぎの※-3のように報じていた事実,「原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給はなりたたない」と大上段に見得を切ったかのような即断は,けっして肯定も受容できない。
※-3「柏崎刈羽原発 信頼回復の道のりは遠い」『新潟日報』2022年1月9日 8:31,更新 10:45,https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/16568
a) 「地元の信頼回復」。東京電力柏崎刈羽原発で不祥事や失態が発覚するたび,東電はこう繰り返してきた。だが,失態はやむことなく,県民の間には不信感が堆積しているに違いない。
東電は信頼回復への道のりが長く,険しいことを肝に銘じ,さまざまな課題に対処しなければならない。
今〔2022〕年は東電が柏崎刈羽原発などで原子炉の炉心隔壁(シュラウド)のひび割れなどを発見しながら記録を改ざん,隠蔽した組織ぐるみのトラブル隠し発覚から20年となる。
東電ではトラブル隠しのあとも不正や不適切な対応の発覚が続いた。冷却用に使った海水の温度データ改ざんや非常用炉心冷却系ポンプの故障隠し,活断層の存在を非公表としたなどだ。
組織的な記録改ざんや,不正のつじつま合わせのために偽装工作を重ねる。信じがたい行為にあきれるばかりだ。東電はなんども原因分析や再発防止策を公表してきたが,組織の「風通しの悪さ」など同じような問題点がたびたび指摘されることにもあぜんとする。
b) 昨〔2021〕年も失態が立てつづけに発生した。1月を皮切りに核物質防護設備の不備の発覚が相次いだ。危険な核物質をあつかう自覚を欠き,安全より経済性を優先する東電の姿勢が明らかになった。
報道によって不備が発覚するまでは,水面下で7号機の再稼働準備が着々と進められていた。原発に対する監視の目を緩めてはならないとあらためて痛感させる事象だった。
侵入検知器の故障について,東電は「福島第1原発事故後の経営状況」を踏まえたコスト削減で,機器の更新を遅らせたことなどが発端だったとした。
福島事故を招いた反省はみえず,近視眼的なコスト意識でさらなる失態を生む悪循環に陥っているのではないか。
東電は原因究明と再発防止に関する報告書を提出し「信頼回復へ最後の機会を与えられたとの覚悟をもつ」と決意を述べたが,その後に7号機の消火配管で手抜き溶接が多数おこなわれていたことも判明した。
昨〔2021〕年就任した小林喜光会長は立地地域を「もっとも重要なステークホルダー(利害関係者)」と位置付け,「信頼回復を主導するのが使命」と語った。しかし,小林氏はまだ本〔新潟〕県入りすらしておらず,かけ声倒れに映る。
c) 一連の問題をトップみずから説明し,真摯に地元と向き合う姿勢を示さなければ,信頼回復などおぼつかないだろう。
今〔2022〕年は,再稼働問題を議論する前提となる原発の安全性をめぐる県独自の「3つの検証」が終盤を迎えそうだ。これらをまとめる検証総括委員会の議論の進み具合によっては,5月の知事選前に検証作業が終わる可能性もある。
再稼働を含めた原発をめぐる問題は,知事選の大きな焦点になるはずだ。〔新潟〕県民の安全に関わる動きに,私たち自身がしっかり目を凝らしたい。(引用終わり)
こうした地元紙がまとめた東電柏崎刈羽原発のその後は,2011年3月11日に発生した「東日本大震災と東電福島第1原発事故」以来,この原発はトラブル(不祥事)が多かった。
つぎの画像資料は2022年9月15日の『日本経済新聞』朝刊に掲載されていた記事「柏崎再稼働へ33項目検査 規制委,テロ対策巡り 地元同意・国関与も課題」のなかに添えられていた関連の年表である。

以上が「原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給はなりたたない」のだからと力説される,この国原発事情の一端であった。もちろん,東電はこの柏崎刈羽発電所・原発の再稼働には必死で取り組んでいるものと観察していいが,実態はとみるとこの体たらくであった。
さらにつぎの表は,ウィキペディアから借りた東電柏崎刈羽原発7基の性能概略が記入されている。


d) さらに,前掲ウィキペディアのほかの内容からは関連させて,つぎの段落も拾っておき,前段の日経がかかげていた「柏崎刈羽原発の不祥事の経緯」を補足的に説明させる資料としておきたい。
1997年7月 7号機営業運転開始。カナダのブルース原子力発電所の出力を抜いて世界最大の原発となる。
2003年4月 福島第1原発他でのトラブル記録改竄・隠蔽発覚により東京電力の原子力発電所全17基停止。
2003年5月 6号機運転再開。
2006年4月 日本の原子力発電所で初めて,品質管理の国際規格である ISO9001 の認証を受ける。
2007年7月 新潟県中越沖地震により,稼働するすべての原子炉は自動停止した。また発電所構内の変圧器に火災が発生し2時間後鎮火した。
2007年8月 国際原子力機関(IAEA)が地震影響の調査
2009年12月 7号機営業運転再開
2010年1月 6号機営業運転再開
2010年8月 1号機営業運転再開
2011年2月 5号機営業運転再開
2017年12月 原子力規制委員会より6,7号機が安全審査に合格。
2021年4月14日 原子力規制委員会が,テロリズム対策の不備を理由に,核燃料の移動や装塡を禁じる是正措置命令を決定。再び再稼働がみこめなくなった。
e) 日本の自然現象のうち天候・気象についてだが,「恐ろしいものを列挙した言葉」として「地震・雷・火事・親父」という順序づけがあった。原発の関連で,この自然現象のうちで一番関係のある「恐ろしいもの:危険な事象」は,いうまでもなく「地震」であった。
東電福島第1原発事故も,5百年,千年の周期で襲ってくる超・大地震が原因であった。東電柏崎刈羽原発も地震によって火災を起こすという重大な事故を発生させていた。それよりも短い周期で襲ってくる大地震はいくらでも,日本全国で発生していた。
原発は,どのような施設であっても発生させてはいけないが,火災といった事態に遭遇したさい,格別に非常な恐怖を覚えさせるに決まっている。
原子炉にまでその火災が延焼などしたら,それこそ一巻の終わりである。付帯施設への延焼であっても,場合によっては原発の事故を発生させかねない事態:各種の支障を惹起させるからである。
そうした原発の技術的な特性(難点=危険性),それでも承知のうえでなのか,前段で注視した主張は,
「原発を止めたままでは日本のエネルギー安定供給はなりたたない。カーボンゼロとエネルギー供給を両立させるためには原発をどう稼働させていけるかを考える必要がある」
などと,たび重ねてでも懲りずにいいたがった主張は,いまだに「安全神話」的な脳みそが少しも治療されていない「原子力村」的な感覚・発想の介在・拘泥を意味した。
そもそも原発がCO2 ゼロに貢献しうるという発想が,根本的に誤解以前の作為的な虚偽の主張であった。なにせ,原発は炭酸ガスを出さないとしても,この地球環境をじかに暖めている元凶であったから,なにをかいわんやの「カーボンゼロ」のいいぐさであった。
f) さて,原発推進の社是を採らない『毎日新聞』は,2022年9月14日朝刊「〈社説〉エネルギーと気候危機 揺るがぬ脱炭素の重要性」のなかで,こう述べていた。
しかし,原発を新たに建設するには,10年以上の時間と巨費を要する。電力逼迫をすぐに解消できるわけではない。
いまやるべきことは,欧州の周回遅れとなっている再生エネのさらなる導入や,建物の断熱性の向上などだ。
当面は,人びとの暮らしを守るためにエネルギーを確保しつつ,中長期的には脱炭素化をめざす。日本を含む先進国には,明確な方針を示すことが求められる。
原発はもともと「トイレのないマンション」状態であることを強いられるほかない「技術的な始原からの事実」を,いまだに解決・克服すらできない始末・状態に留め置かれている。
それでいながら,つまり,廃炉工程に対応する技術的・経済的・社会的な解決策を確立・提示できないで,「原発の再稼働のみならず新増設まで必要だ」と,先日,岸田文雄が首相として語っていたのは,2022年8月下旬のことであった。
この首相は2024年9月27日に用済みとなるが,任期中にはトンデモな原発関連の発言をした暗愚については,後世に語られ継がれることになりそうである。
それにせいも,新増設に「10年以上の時間と巨費を要した」だけでなく,廃炉工程に移ってからは,なんと「半世紀から1世紀にわたる(それ以上の期間になるかも!)後始末の作業」が,そのさきに延々とつづくことになる。
「3・11」以後の現実的な話となる。なんと原発3基もの溶融事故を発生させた東電福島第1原発事故現場の後始末は,実質においてその100分の1(1%)も片付けられていない。というのも,デブリ総量880トンの1%すらいまだに搬出・始末できていないからである。
※-4 原発温存にこだわるあまり「3・11」も遅延させるばかりであった「東西連携線整備」
要は,原発の稼働にこだわるあまり,再生エネルギーの導入・利用を阻害してきた日本の電力産業関係集団(主に大手電力会社および経済産業省エネルギー庁)は,2011年3月11日の東日本大震災と東電福島第1原発事故に,本当に懲りていなかったとしか思えないほど,東西(南北)に広く・長い国土のなかで電力網を整備する努力は懈怠してきた。
「〈Inside Out いま解き明かす〉 再生エネ廃棄,砂上の送電網」『日本経済新聞』2022年9月13日朝刊29面「インサイドアウト」というコラム的な記事があった。
この記事は東日本大震災に遭遇し,東電福島第1原発事故を発生させていたこの国が,まだ「その災害史になにも学んでいないかのような現在の様相」を,日本全体にめぐらすべき送電網の問題を介して批判していた。
「3・11」後も「原発,原発,……が必要だ」とこだわるあまり,日本全体における電力供給網,その「発電 ⇔ 送電 ⇔ 給電 ⇔ 配電」などを,どのように計画し,整備していくのか,その間に11年半もの歳月〔2024年9月ならば13年半になった〕を費やしてきながら,結局のこの程度の始末にあいなっていた。
この「再生エネ廃棄,砂上の送電網 停電リスク軽視,電力融通の強化先送り」(1894文字)という解説記事の全文を,長いが,以下,a) b) c) ……に紹介しておく。
なお,『日本経済新聞』はこうした記事も出していながら,原発が実は,この種の不首尾・不如意をきたしていた原因,すなわち,「原発そのものの,いわばエネルギー政策での反動性・逆機能性,その反環境的な本質」をあえて顧慮しないところにこそ,原子力村的な立場に縛られてきた自社の原発イデオロギーの特徴が露骨に披露されていた。
a) 各地で電力需給の綱渡りが続く一方で,太陽光など再生可能エネルギーが使い切れずに捨てられている。東・西日本を結ぶ送電網が細く,電力が余る地域から足りない地域へ融通できないためだ。
天候に左右される再生エネは電力供給を不安定にした主因とされがちだ。実際は停電リスクを軽視し,送電網整備をおろそかにしたツケが回った面も大きい。
〔2022年〕6月下旬,各地で観測史上初の40度を超える異例の猛暑が続いた。経済産業省は「安定供給に必要な水準を確保できている」との見通しから一転,東京電力ホールディングス(HD)管内で4日間続けて電力の需給逼迫注意報を出す事態に追いこまれた。
この時,関西電力など西日本には余裕があったが東電管内へ電力融通は十分にできなかった。
▲ 余る太陽光,生かせず 東西,周波数に違い ▲
電力不足の直接の原因は,〔2022年〕3月16日に福島県沖で発生した震度6強の地震によって,東電などの火力発電所が損壊し停止したことだ。
地震直後の3月22日,寒波が関東を襲い,需給逼迫警報が出た。「天気が悪く太陽光発電がみこめない」。萩生田光一前経産相は地震による発電所停止にくわえて再生エネも理由に挙げた。この時も東西の緊急融通は60万キロワットだけ。大型原発1基の半分にすぎない。
補注)この決まり文句,「大型原発1基の・・・」という表現方法はおかしい,あやしい。原発以外の火力発電方式であっても,1基100~120キロワットの出力(性能)を有する発電機は,現在ではいくらでもある。
『日本経済新聞』はなぜ,いつも原発にかこつけたいい方しかしないのか? いつものことだが,「どういわせても,原発1基相当・・・」という表記しか採りたがらない。奇妙であり,不自然である。物差しとして無条件に,いつでも使える比較方法なのか? 原発は試金石な電力生産方式として意味づけられる性格はもたない。そもそも熱交換比率では一番劣位なのが原発であって,3分の1(33%)しかない。
〔記事に戻る→〕 一方で再生エネの電気が捨てられる事態が春以降,各地で頻発している。電力供給が需要を超えないように太陽光や風力などの発電を止める「出力抑制」だ。本来の能力より発電量が少なくなるため,制御分は無駄になる。
再生エネの出力抑制は九州電力が2018年10月に初めて踏み切った。2022年4月以降は東北電のほか四国電力,中国電力,北海道電力も実施した。大手10電力の半数に出力抑制の動きが広がる。
補注1)「出力制御」が実施された実例をつぎに挙げておく。

補注2)再生エネの余剰分は,そうであればともかく蓄電しておけばいいわけである。だが,そこまではまだ設備投資がなされていない。その前に余剰が生まれないようにする電源構成内容の調整が必要であった。前述した話題:「東・西日本を結ぶ送電網」が拡充される余地が大いにあった。
この記述をしている最中であったが,筆者のもう1台置いてあって電源の入っていたとなりのパソコンの画面には,電気事業連合会の「原発CM」が,また流されていた。
その題名が「【だいじな話は突然に。】依存というリスク 電気事業連合会」ということだったので,この文句で検索したところ,最新〔当時〕のCM動画3点を冒頭に並べた同会の広告をみつけることにもなった。
〔記事に戻る→〕 電力逼迫も出力抑制も根は同じ問題から起きる。日本は静岡,新潟両県にある河川を境に東は50ヘルツ,西は60ヘルツで周波数が分かれる。周波数を転換できる量には限りがあり,電力融通のボトルネックになっている。九州の太陽光パネルの電気を,需要の多い東京に自由に送るといったことができない。
b) 1950年代以降,地域の10電力会社が原則管内の電力供給を担う独占供給体制が取られてきた。地域間を結ぶ送電線(連系線)を太くして,相互に電力を融通しあうことを想定してこなかった。
見直しのきっかけはあった。東日本大震災で東京電力福島第1原発事故が起き,東電管内の供給力が大幅に低下した。首都圏で計画停電が実施され,地域独占体制の弊害が明らかになった。
▼「停電の方が安い」 連系線増強,及び腰 ▼
国と大手電力の腰は重かった。2013年1月,送配電ネットワークに関する中立機関,電力系統利用協議会(ESCJ)がある試算を示した。東西の連系線の送電能力を90万キロワット増強する場合と,増強せずに停電するコストを比べた。
結果は停電コストの年平均12億~16億円に対して,増強コストが同63億~118億円に上った。「停電した方が安い」と金額で示したかたちだ。いまでは停電リスクの克服が国の最重要課題だが,当時は増強に経済性がないと判断された。
震災時の計画停電を踏まえた電力システム改革を議論する経産省の審議会でも2012年3月,大手電力でつくる電気事業連合会(電事連)は,連系線の増強よりも各域内にバックアップ用のガス火力発電所を建設するほうが安価に済むケースもあると報告。
東西の連系線の大幅増強は先延ばしで決着した。電力各社は当時,原発の相次ぐ停止で化石燃料の輸入が急増し,経営を圧迫されていた。
補注)その後,東西連系線の増強は,多少は進捗してきた様子はあるが,大手電力会社はもともと,営利観念に照らして好き好んではやらない。
c) 政府の規制改革会議委員を務めた学習院大の鈴木 亘教授は「地域独占で守られていた大手電力は増強に後ろ向きだった。ほかの地域の市場に相互参入して競争することを渋った」と指摘する。「安定供給と競争を促す政策が不十分。国にも責任がある」とも話す。
再生エネ時代に不可欠なインフラ整備が遅れ,捨てられる電力は今後さらに増える。経産省などの試算では,2030年ごろには再生エネによる発電のうち最大で北海道は49.3%,東北は41.6%,九州は34%が捨てられる恐れがある。
再生エネ普及で先行する欧州の事情は異なる。1920年代から国境を越えた送電網の整備が進んだ。発電業者と送配電業者が明確に分かれている場合が多い。送配電業者は広く送電できた方が収益になるので,投資が進みやすい。
日本も東西の連系線を2027年度末までに震災前の2.5倍に当たる300万キロワットまで増やす。だがこれで十分かどうかは不透明で,この先の計画は定まっていない。岸田文雄首相は8月24日の会議で送電網強化の検討を指示した。脱炭素だけではなく安定供給のインフラ投資に本腰を入れるべきだ。(引用終わり)
いまの自民党政権と経済産業省・エネルギー資源庁は,以上のごとき電力事情を根本から改善・改良する気がなかった,としか解釈できない。あれだけ「3・11」の原発大事故で痛い目に遭わされていながら,なんと「第2の敗戦」を迎えた事態となったとまでいわれていながら,以上のような体たらくだとしたら,これからも似たような仕草・演技を重ねていく国だというほかないのか?
※-5「第3の敗戦」到来か
『毎日新聞』2022年9月14日朝刊に「M8. 6 超,津波痕跡発見 南海トラフ地震想定,一助に 和歌山」との見出しになる記事が出ていた。以下に,冒頭段落のみ引用する。
東海・東南海・南海地震が3連動し,南海トラフ沿いで起きた史上最大の地震とされる宝永地震(1707年,マグニチュード=M=8.6)を上回る地震で起きた津波の痕跡を和歌山県沿岸でみつけたと,産業技術総合研究所などのチームが発表した。
今後想定される南海トラフ地震の規模や頻度をしる手がかりになる可能性があるとしている。
南海トラフを震源とする超大地震の発生が実際に起これば,日本の国土は東日本大震災のときとはまた違う様子になってだが,もしかしたらそれ以上の損害をもたらす虞れが大きいと覚悟しておくべきである。
東西の連系線をいまよりも太くしておく措置が早急に必要である。
なお,『毎日新聞』2022年9月15日朝刊16面「化学」欄で,坂村 健は,「核分裂も化学反応も,人類に初めて燃焼をもたらしたとされる『プロメテウスの火』だって,『神の力』ではなくてただの物理現象だ」といい切っていたが,あまりにも脳天気というか,天才的な能力にめぐまれた人物にかぎって,けっして口に出していうことではあるまい。
「ただの物理現象」である放射性物質の《悪魔性》のために,フクシマの人びとがあの原発事後,どのくらいひどい目に遭わされてきたかを承知したうえで,そのように発言しているのか?
ただの物理現象であっても,生身の人間と時速100㎞で走行する自動車とがぶつかったら,どうなる。もっとも,これもただの物理現象だといえなくはない。しかし,世の中には,いっていいことと・いけないこととがあるはずである。
そうした理解,科学や学問の次元における発言の問題が,常識や感性の次元における配慮の問題を排除するのは不穏当である。最後に来て,聴きたくない(読みたくない)発言に接してしまったようである。
---------【参考文献の紹介:アマゾン通販】---------