安倍晋三政権は「靖国神社に参拝にいくこと」が日本国首相の立場にとって重大任務だったのか?(1)-まず朝日新聞社の従軍慰安婦問題にもからめた議論から-
※-0 まえおきの断わり
もうすぐ来る2024年の新年正月,岸田文雄が靖国参拝にいくか,その種の行動をするか見物だという前提を置いて,以下の全体の記述を読んでもらえることを期待したい。
またこの「本稿(1)」では,靖国神社問題にまでは,まだ直接記述が及ばず,従軍慰安婦問題への言及に留まって,安倍晋三政権時代を議論している。
靖国神社「参拝」関連の議論は,続編の「本稿(2)」に入ってからの題材となるので,その点は事前に断わっておきたい。
など,従軍慰安婦問題をとりあげた別途,本ブログにおける記述,題名を「従軍慰安問題の本質」と名づけた連続もののそれは,その日付だけを列記しておくことにしたい。
2023年8月は11日,12日,13日,15日,17日,18日,21日,24日,25日
2023年9月は1日,2日,12日,13日
以上,13回で完結していた。
※-1 安倍晋三が第2次政権以降「首相の座」にいた時期は,2012年12月16日から2020年9月16日までだったが,この「世襲3代目の政治屋」のためにこの「美しいはずの日本」は「21世紀に黄昏ゆくこの政治・経済」の一途あるのみになった
その結果が現状の日本の「政治・経済・社会・文化・歴史など」の惨状,つまりボロボロのくたくたにされた「ミジメな現況」,すなわちG7中では,もっとも程度の悪い政治,落ちぼれた経済,倫理のすたれた社会,やたら日本は素晴らしいとユーチューブ動画サイトのなかだけで自画自賛する文化,敗戦後は完全に対米服属国家である歴史しか誇れないジャパンである。
いまや,日本人の識者自身が「衰退途上国となった日本」だとまで,自嘲気味にも表明せざるをえないほど,国家全体の各部門からなる総合力を衰弱させてきた。
本日は2023年12月27日とあり,あと4日で来年の2024年が来る。ここで10年前の2014年を思い返してとなる。この2023年12月になって一番の話題は,自民党政権内の「パー券裏金問題」として展開されていた「政界汚染の問題」であった。
本日の本題である靖国神社(冒頭で断わったように「本稿(2)」にその論述はゆずっているが)にも通底するこの政治資金「汚染問題」についてはさきに,以下のようにさきに参考になる話題を聞いておきたい。
最初に「【図解・社会】平成を振り返る,2014年10大ニュース-」『時事通信』2014年12月,https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_general-10bignews2014 を参照してみたい。
この一覧表の下部に「国内1位は解釈改憲で集団的自衛権容認=2014年10大ニュース」と記載されている点に注目したい。安倍晋三が第2次政権を発足させてから実質2年目になると,このように「日本国を破壊し」「アメリカの属国体制」をより堅固にするための仕事に励むといったふうな,実に珍妙な国家運営に努力しだしていた。
以上のごとき2014年の日本国内における主要な出来事「全10位」は,日本の憲法のありかたを根本から歪めてしまった安倍晋三の悪業,対米服属国家としての日本の政治・外交を,さらに決定的に属国状態に固着させるべく改変させた,彼の「岸 信介の孫」としての売国奴(国恥・国辱)ぶりを,その10大ニュースの第1番に挙げていた。
安倍晋三という「世襲3代目の政治屋」は,第2次政権時において実際に成就させえた成果は,その発足以来その後11年が経過した現在となってみれば,日本の国家主体性を溶解させた「政治屋としての落第生ぶり」ばかりを強く印象づける結末になっていた。否,それどころか,その後においてこの日本という国が,いよいよ本格的に凋落していくための跳躍台を提供する顛末までも,さらに余計にこの安倍はもたらした。
つぎの画像資料は,そうした安倍晋三がこの国に与える必然性があった大失策の可能性・必然性を,だいぶ昔に警告していた後藤田正晴の発言を紹介している。
2024年になると3月に,岸田文雄は日本の首相としてアメリカに国賓待遇で招待される予定であるという。しかし,この米日外交に関しては,日本の元首のことを「せいぜい〈ポチ〉である」「程度の位置づけ」でしかみなしていない「アメリカ側の基本姿勢」に留意する必要があった。
岸田文雄は,菅 義偉というこれまたどうしようもなかったというか,悪代官的な面相そのものの為政しかなしえなかったこの前首相のあとを襲い,首相の地位に就いていた点はさておいても,この国の自民党政権流に「そのもっとも悪い経路」に向かうためであったかのような為政を進めてきた。
すなわち,同じ「世襲3代目の政治屋」であった安倍晋三となんら変わる点などなく依然,自国を没落の方途へと加速させる方途に向けた舵取りしかできていなかい。つまり「丸出だめ夫」風の総理大臣であった。
さて以上の記述は,2014年に起きた日本の政治の問題,とくに安倍晋三が首相であった時期,朝日新聞社イジメにやっきになっていたころの話題を,以下に再生・復活させる前に,ひとまず2023年12月時点でのもっともホットな話題に関連させて「前論」的に書いた能書き的な文章である。
2023年も今日は12月27日という日付でなったが,最初に参照した『時事通信』が毎年まとめて公表する「今年(2023年)〈10大ニュース〉」は,どうなっているかしりたかったが,この2023年の分はまだまとめられていないようで,残念ながら紹介できない。
ともかくも,この2023年における「最近・最新の話題」は,自民党政権内の「パー券裏金問題」であった。検察庁東京地検特捜部が総力を挙げて追及している最中であり,自民党はなかでも「安倍派」が狙い討ちにされるかたちでもって,捜査が展開されている。
2024年1月中には安倍派に属している幹部たちなどから起訴される人物が出るはずだと予想されてもいる。これら人物たちの標的のまたそのさきには森 喜朗がみえかくれするが……。
※-2 2014年夏,安倍晋三が調子に乗り朝日新聞社を叩きまくっていた出来事としての「歴史的な事件」
以下の話題はいまから(ほぼ)10年前の2014年夏にさかのぼる。そのころは安倍晋三が首相として,朝日新聞社の従軍慰安婦「誤報」問題に食らいつき,この新聞紙を廃刊にまで追いこむ勢いまでみせて,つまり調子に乗りまくって猛攻撃を繰り出していた。
そのときであった,競合紙の読売新聞社がいっしょになるかっこうで,しかもひどく調子づいて「朝日新聞社を窮地に追いこむべく」懸命に安倍政権側に対しては「第5列の役目」を遺憾なく果たしていた。その事実を,当時の出来事として記憶によく残している人は,多分,この『ゴミ売り新聞』の本性(エゲツナサ)を否応なしに感知できていた。
いまから10年も前に,朝日新聞社が安倍晋三(首相)から従軍慰安婦問題を悪食的に攻撃の材料とされた出来事は,この新聞社にとっては大きな打撃となった。ごく簡潔にいうとしたら,最初に報道元となった朝日新聞社だけでなく,同時に読売新聞社とこれ以外の各新聞社もすべてその誤報に相当する「従軍慰安婦問題」の記事作りとこの報道はしてきた。それゆえ,安倍のその朝日新聞社叩きは,安倍がたくらんだ異様な行動を意味していた。
だが,いずれにせよ,朝日新聞社だけがなぜか,不当だという以上に異様な様相まで呈するかたちにまで,安倍晋三の標的にされ,猛攻撃を受けるハメになっていた。
安倍晋三の脳細胞仕様にしたがうと,「美しくあらねばならないこの日本国にとって」,過去において旧日帝が軍隊のなかに従軍慰安婦を抱えていた史実は,けっしてあってはならない現実の問題であった。
しかし,当該のこの歴史問題については,完全に「無学の輩」「無知が前提」であった安倍晋三自身が-安倍といっしょにめだって行動していたもう1人が中川昭一〔この人物は世襲2代目の政治屋〕であった-,「歴史の事実そのもの」を,黒板に書かれた白墨の文字のごとく簡単に消せると思いこみ,「果敢に挑んだ事件」となっていた。
安倍晋三たちが,従軍慰安婦問題に対してはそのように粉砕したかった,いいかえると,どうしても完全に否定したかったがゆえか,「自分たちの欲望」を剥き出しにしたかっこうで,しかもそのさいに基本的には,「一国の首相」という立場から「権柄尽く一辺倒の横暴」を,朝日新聞社など潰れろ(!)というほどの勢いをつけて,その猛攻撃をしかけていた。
ともかく,当時の朝日新聞社は決定的にも近い多大な打撃を受け,その後における新聞社経営に悪影響が生じたことは事実である。それゆえ逆にみれば,その後の現在となっては,朝日新聞社の安倍晋三(いまは故人だが)に対する怨念も一様・尋常ではない。
したがって,このたび2023年12月になってから格別大きな政治問題となった自民党の「パー券裏金問題」は,こんどは安倍派が検察庁の標的に定められていたからには,朝日新聞社の側からすればこれはまさに,一昔前に自民党・安倍晋三政権から受けた屈辱に対して,いまあらためてとなったが, “反攻を大々的に試みる絶好の機会獲得” とあいなった。というわけで,朝日新聞社は今回,故人となっているが安倍晋三の残した自民党内「安倍派」に向ける反転攻勢のために,千載一遇の好機を付与されたことになる。
しかも,検察庁側は「自民党・パー券裏金問題」の捜査を進展させるに当たっては,関連する事件情報については,とくに朝日新聞社を選んで「関連する情報」を漏洩(リーク)する報道機関に利用した経緯があった。朝日新聞社はもちろん,それを大いに活用し,協力する報道姿勢を採っている。
以上のようななりゆきのなかで,たとえば『現代ビジネス』が最近,つぎの記事を掲載し,関連する報道をおこなっていた。
※-3 伊藤博敏・ジャーナリスト「『安倍派つぶし』に本腰を入れた特捜部と『朝日新聞』…従軍慰安婦報道で信頼を失った『高級紙』の執念」『現代ビジネス』2023年12月14日,https://gendai.media/articles/-/120734
なお,この伊藤博敏・稿の内容は,全文ではなくネットの画面での1頁をのぞき,2-5頁を引用する。長めの紹介となる。
◆-1 信頼を失った朝日の執念
朝日新聞は保守主義を全面に打ち出す安倍政権が長期化するなか,朝日リベラリズムを朝日自虐史観として批判されることが多くなった。
とくに従軍慰安婦報道の「訂正とお詫び」は,新聞発行部数の退潮が続くなか信頼性を失わせ,マスコミ界における高級紙(クオリティペーパー)としての優位性を欠くようになった。
今回の自民党派閥政治資金パーティー券疑惑は,その拡がりの深さと大きさから1988年に発覚したリクルート事件と並び称せられるが,川崎駅西口再開発においてリクルート社が市の助役に未公開株を贈与した疑惑をスクープしたのは朝日新聞だった。以降,多くの「政官業」の関係者が逮捕され,竹下登首相は退陣した。
朝日もまた「マスコミ界をリードする」という自負のもと,「権力の監視役」をもって任じていた。検察にも朝日の情報発信力と影響力を期待する幹部は少なくなかった。
「朝日への情報リーク」が,組織的な総意としておこなわれることはないにせよ,今回,検察と朝日の連帯が意識の底流に流れ,それがうまく機能して朝日のキャンペーンを生み,自民党を揺るがせているのは確かだろう。
なかでも安倍派に対しては,社を挙げて反対の論陣を張った経緯があり,執念が実ったといっていい。
◆-2「安倍政権を厳しく批判した社説」
朝日新聞は2018年12月30日,1年を締めくくる「社説」で,〈安倍政権2018年 政治責任とらぬ悪例残す〉と題して,こうはげしく批判した。
「ことしは日本政治史に大きな汚点を残した。財務省による組織的な公文書の改ざんと破棄である。国会と国民を欺き,歴史を冒涜する。民主主義の根幹をズタズタにする大事件だった」
翌〔20〕19年12月30日の「社説」もきびしい。
「ことしも荒涼たる政治の光景が続いた」という書き出しに始まって,安倍政権が「責任の放棄」「国会軽視」「官僚の変質」という3つの問題を残したと指摘した。このうち「官僚の変質」は検察の問題意識と重なる。
「この政権で発足した内閣人事局が幹部人事を差配しはじめてから,官僚の『忖度』が目立つようになった。裏を返せば,政治による官僚統制が進んだともいえる」
もはや官僚が社会に貢献するという公僕としての矜恃を失い,政権に貢献する従者になっているかのようだ。この政権は,民主主義をどこまで壊してゆくのだろう」
◆-3 裏ガネ集めに使われた政治資金パーティー
保守とリベラルの分断が進むなか,安倍政権は改憲への意識をもち,韓国や中国に距離を置き,伝統的家族感を大切にする保守層に支えられ,憲政史上最長政権となった。朝日の論調はそうした保守層に嫌われた。
安倍派の政治資金パーティーを利用した派閥と議員の組織的裏ガネ作りが,保守思想とそこから生まれる安全保障関連法,特定秘密保護法といった政策と連関しているわけではない。だが,朝日は〈安倍一強の独善〉が生んだものととらえて批判した。
安倍派の組織的裏ガネ作りは,派閥政治とガバナンス不在の双方の欠点を露呈した。
自民党派閥は,結党翌年の1956年の総裁選をきっかけに形成され,中選挙区では各派閥が後押しする候補が競いあい,札束が飛び交う総裁選を制した派閥が,いいポストを確保できた。
その金権政治を打破するために「脱派閥」が宣言され,派閥領袖などが利権に走りムリなカネ集めをすることがないように,小選挙区制が導入され,「国民1人あたり250円の負担で政治をきれいに」と,政党交付金が支給されるようになった。2023年分として自民党は約159億円を受けとっている。
それでも「政治にカネがかかる」と政治資金パーティーを利用して,事実上の企業献金を受け取るようになった。資金力のない政治家は自前のパーティーより,「安倍晋三のカオ」を利用してカネ集めができ,しかも裏ガネとして現金で受領できる派閥パーティーに力を入れてパーティー券を売りまくったという。
政治資金規正法の不記載罪は「1000万円では立件はムリで最低でも4000万円以上が必要」と,その額で立件が決まるという報道が少なくない。確かに5年で1000万円なら1年200万円で,「誤差の範囲」という見方もある。事実その金額ならこれまで「うっかりミス」で済まされてきた。
◆-4 派閥政治は終焉を迎えるか
しかし,今回,発覚したのは最大派閥が組織維持のために確信犯としておこなっていた犯罪である。
「国家秩序は自分たちが守る」と意識する検察が,復権をめざす朝日と連携した。検察は,会計責任者のような事務方の罪に終らせることなく,それを指示して違法システムを継続させた事務総長のような派閥幹部,あるいは多額のキックバックを受けとった政治家を,最低でも略式起訴にもちこんで公民権停止に追いこみ,悪質な事例があれば逮捕して公判請求する事件となるだろう。
その結果,長期政権の反動のように安倍派は崩壊を免れず,政治資金規正法を整備のうえ派閥の政治資金パーティーを制限することで,現在のような「親分子分の関係」を軸にした派閥政治は,やがて終焉を迎えるのではないだろうか。(引用終わり)
以上の引用についてだが,はたして「親分子分の関係」を軸にした「派閥政治」が「やがて終焉を迎え〔られ〕る」のかどうか,本ブログ筆者は懐疑的に観ている。またしばらく経ったら,同工異曲の政界汚染問題が復活しないとはかぎらない。当面だけの「モグラ叩き」になるおそれがある。いまの日本の政治のなかでは,同様な現象が繰り返し発生するとみたほうが,現実を直視した理解でありうる。
それよりも「世襲3代目の政治屋」までがいつまでも(そしてこれからもつづけてもっと)のさばるような,とくに自民党を中心とした政界模様は,まず最初に根絶する必要がある。まともな先進国のなかではと,わざわざいうまでもないはずだが,世界中のなかで日本のように世襲政治が盤踞している国はない。毎日のニュースで,たとえばテレビやネットの放送でみるそれも自民党議員たちのなかには,なんと世襲議員が多いことか。
日本の政治が私物化され,特定の家族・一族の専有物であるかのような様子までが,あたかもすでに固定化された政界地図として定着している。地方にいけばいくほど,そうした政治の実相は,有権者側にも自然に受け入れられる態勢が昔からできていた。その総体としての姿はまさに「後進国家並みの政治体制」と形容できない。
いまだにまともな「民主主義国家体制」が構築しえないでいるこの国の政治の「実質的な死物化」は,単に政治が堕落・腐敗しているというよりは,骨髄まで浸潤した政治の病であり,はやりの表現でいえば,いつまでもこのまま「持続可能な状態」にあるとしたら,この国の21世紀における未来は絶望しかない。
以上,伊藤博敏の寄稿,「『安倍派つぶし』に本腰を入れた特捜部と『朝日新聞』…従軍慰安婦報道で信頼を失った『高級紙』の執念」『現代ビジネス』2023年12月14日を引用しつつ,本ブログ筆者の意見も添えて記述したのを受けて,次段からは本日におけるこの記述の主内容に入る。
以後の記述(初出は2020年9月22日であった)は,ここまでの記述と時期的に前後してもいて,とくに核心部分で連結される内実が多々ある。
※-4「靖国神社に参拝にいくこと」が日本国前首相・安倍晋三にとって重大任務だったのか? 神道の真義を(歴史も本質も)よく分からぬ世襲政治屋の彼に,政治も経済も社会も破壊されてきた日本「国」の恐ろしい今後-「その1」として-
いまは亡き安倍晋三元首相は,第1次政権時(2006年9月26日-2007年9月26日)に,靖国神社の参拝を見送ったことは「痛恨のきわみ」だと,みずからの業績を否定するかのような発言をしていた。1年間の任期では実質なにもなしとげられず,失敗学の研究-畑村洋太郎の創案になる学問形態-にとって,ただ好材料を提供できたに過ぎなかった。
だが,安倍晋三は第2次政権(2012年12月26日-2020年9月16日)を組閣する総理大臣にもなって,再登場した。しかし,この政権が日本の政治・経済に与えた決定的だった損壊行為は,2010年代を経て2020年代になるころまでには,自国のことを「衰退途上国」と呼ぶほかないくらいに害悪を呼びこんできた。
問題だらけであったのが,2010年代における安倍政権の為政であった。ところが,相棒である官房長官であった菅 義偉の口から常時吐かれつづけてきた迷文句が「なにも問題はないし,批判も当たらない」であった。菅はひたすら,相手側の指摘・批判を問答無用に排除してきた。そうやって,世論からの政権に向けられた批難に対しても,容易に突っぱり返せたつもりでいられた。
安倍晋三の第2次政権のなかで官房長官を務めてきたこの「菅 義偉が新首相になった」ところで,安倍の「旧為政に恥の上塗りをするしか能のない政権」になっていた。これは意図せざる安倍⇒菅の政権継承の宿命的な展開を意味した
安倍晋三のときも菅 義偉のときもこうであった。
そこのけそののけ あの御ウマのあとには,この牡ジカが通るぞよ,皆の衆。この沈みゆく潜患ヤマト国の真の姿を,しかとみすえよ。忘れるでないぞ!
さらに岸田文雄が菅 義偉のあとを追って首相になったが,この新首相はこれまた「異次元的に国民のために仕事をする」人材ではなかった。しかも結局「世襲3代目の政治屋」のボンボン(凡々)たる1人にすぎなかった。
以上を整理して表現してみると,こうなりそうである。
要点:1 安倍政権=「最悪」であり,菅政権=「極悪」であった。岸田政権=「意味不詳」の極みになっていた。
要点:2 内政も外交も政治家として “プロの段階” にまで到達できていない自民党極右・反動政権は,21世紀の日本をこれからも,さらにだらだらと溶融させ壊滅させていく。
※-5 野村アセットマネジメントチーフ・ストラテジスト,榊 茂樹 稿「十字路アベノミクスの限界超えて」『日本経済新聞』2020年9月17日夕刊5面「マーケット・投資」
この※-5は,意味のないアベ忖度の小文をいまごろに書く体制派戦術家の「戦略思想なしの蒙昧な立場」について討議する。なお,2020年9月17日という日付は安倍晋三が第2次政権をおっぽり出した翌日であった。
--菅〔義偉〕政権がスタートする。経済政策に関しては,基本的に安倍前政権の方針を継承し,新型コロナウイルス感染拡大で落ちこんだ景気の回復が喫緊の課題となる。アベノミクスの継承は,政権交代による不透明感を減らす点では株式市場には好材料だろう。ただ,アベノミクスがなしとげたことと,できなかったことを確認しておくことは必要だ。
補注)この政権交代を株式市場に関係づけた指摘は,まだよりいっそう意味不明。「アベノミクスがなしとげたことと,できなかったこと」の関連づけに関する詮議もなさないまま,この程度でもって,より大事かつ肝心かつ重要な論点を簡便に論じられるような「資産戦略家(asset strategist)」という人物は,この存在のあり方じたいからして,もともと信じられないくらいの〈オメデタサ水準〉に浸った議論で満足できていた。
〔記事に戻る→〕 第2次安倍政権は2012年末に成立した。そこを起点に,法人企業統計でみた企業の経常利益は,2018年4~6月期にはおおむね倍増した。一方,日本全体で生み出される付加価値を示す名目国内総生産(GDP)は,直近ピークの2019年7~9月期までに約13%の増加にとどまった。物価は若干上昇に転じたが,目標の2%インフレには遠い。
補注)この段落で示唆される諸点がなにになりうるか,まさか分からないで,こう書いているとは思えないが,日本経済体制内にめだつ各種各様の不均等・不公平性にかかわって生じていた諸問題を,このように表現できた筆法じたいには,理解不能ななにかであれば感じとれるが,それ以外はなにも参考になる中身がなかった。
〔記事に戻る→〕 雇用に目を向けると,失業率は4%台から昨〔2019〕年末には 2.2%まで低下した。一方,雇用者1人当たりの報酬は,物価上昇を割り引いた実質ベースで若干減少した。
補注)なぜか? この程度のことも説明は不要であった。高齢者の雇用も含めて非正規雇用があいからず減らないままの雇用情勢が継続中だから,そうなっていた。現象面だけで上っ面の議論を,それも当人は承知のうえだとも思われるが,このように消化不良でありながらも,一風独自に “寸止め的な見解を披露する” のは,たいがいにしたほうがよい。
〔記事に戻る→〕 日本の景気は2012年11月を底に2018年10月まで回復が続いた。景気回復と円高の解消によって企業利益は大幅に増え,失業は減少した。しかし,働く人の所得や経済全体の付加価値が大きく増えるには至らず,デフレも完全に解消されたとはいい切れない。
補注)以上は,民主党政権の時代を「悪夢のような時代」といいはなった安倍晋三に同調するごとき意見である。だが,冗談はやめよう。大企業体制の儲け方はさておき,一般の労働者たちの生活水準は,一部の者をのぞき確実に,衰退・低落の傾向を歩んでいた。「付加価値」の労働分配率はどうなっているか(?)とみれば,絶対額・比率面でずいぶんシケていた。安倍晋三政権の時代は「悪魔がいたような時代」であった事実をお忘れか。
〔記事に戻る→〕 景気じたい,海外景気の鈍化などによって企業利益が頭打ちになると,後退に転じた。
補注)日本の産業経済は海外頼みというわけか? これでは,日本の企業が海外の企業に負けつづけている現状,とくに製造業では形無しの状態にまで落ちこんでいる実情にあっては,以前のアメリカのように,それに代わる産業・事業が伸してこなかった点が,日本の企業の本当の弱みであった。原発事業における東芝・三菱重工・日立製作所の体たらくぶりといったら,各社往事の隆盛ぶりは単なる思い出になった感すらある。
〔記事に戻る→〕 そして,新型コロナウイルスの感染拡大によって企業利益,名目GDP,雇用者報酬が急減した一方,失業は増大し,アベノミクスは振り出しに押し戻されたかたちだ。
補注)もともと全・国民経済的な次元・水準では,たいした社会経済的な効用・成果のなかったアベノミクスを,このように「振り出しに押し戻されたかたちだ」と形容したのには “失笑する” ほかない。もともと,安倍第2次政権の経済政策・社会政策両面における弛緩ぶりは並たいていではなかった事実は,次段でとりあげ,くわしく批判してみたい。
〔記事に戻る→〕 大幅な金融・財政政策が打たれてきたことで,追加の刺激策発動の余地は縮小している。スガノミクスにはアベノミクスの単なる継承でなく,経済の新たな原動力をみいだし促進することを期待したい。(引用終わり)
あらためて疑問がある。アベノミクスにつづくのがスガノミクスだというふうに,その連続が既定であるかのように文章を書いているが,菅 義偉政権が半年・1年で終了したら,そもそもスガノミクスという名称をもち出すことじたいが,不適切だったといわれる以上に,わざわざ奇怪な論及を呈示しようとしていたとみなされる。
補注)この段落は,2020年9月22日の初出であったから当然,当時の情勢分析をした文章をとりあげ,以上にように批判しつつ言及していた。そのシガノミクスとやらの菅 義偉政権はその1年後に終わっていたから,
「スガノミクスにはアベノミクスの単なる継承でなく,経済の新たな原動力をみいだし促進することを期待したい」
などとゴマすり的に発言した文章は,いま(2023年12月段階)となってみれば,「われながら恥ずかしい」「菅 義偉様を強く意識した〈忖度風の経済評論〉であった」と位置づけるほかない。
アベノミクスという名称じたいも,どだい,いわずもがなであった。というのも,あえて○○ミクスと呼称するほどのものはなかったからである。実際,アベノミクスの軌跡・記録は一様に「恥さらしの経済過程,その決算報告」にならざるをえなかった。
それゆえ,安倍政権のレガシーならば「負の legacy」そのものを意味するほかなかった。それゆえ,その種の「ナントカ・ミクス」なる名称は,なるべく使用しないほうが得策かつ懸命である。
ところで2年前に,アベノミクスなどは以前からボロクソに批判しつづけている金子 勝(立教大学大学院特任教授・慶應義塾大学名誉教授経済・政治 DOL特別レポート)は,つぎの※-6のように再度,安倍晋三の為政を批判していた。
※-6 金子 勝「アベノミクスがあと3年続けば日本の産業衰退が一気に露呈する」『DIAMOND online』〔前段で2年前の⇒〕2018.9.18 5:00,https://diamond.jp/articles/-/179874 という寄稿において,なされていた
「本稿(1)」としてこの記述が改訂・更新されている「2023年の12月下旬」にもなってみれば,金子 勝のこの分析はよく的中していたと,いまさらのように報告できる。ともかく,この全文は引用できないので,部分的にのみ各段落を抜き出し,参照しておきたい。それでもかなり長い参照となる。論旨(いわんとする核心)は十分に理解できる。
a)「デフレ脱却」をかかげたアベノミクスが想定するプロセスは効いていない
2018年6月の消費者物価上昇率は,生鮮食品を除くコア指数で 0.8%だが,さらにエネルギーを除くコアコア指数は 0.2%にすぎない。「2%物価目標」にはほど遠いうえ,消費者物価上昇率を押し上げているのは,トランプ大統領のイラン制裁の伴う石油などエネルギー価格の上昇が原因であり,日銀の金融緩和の効果ではない。
たしかに,ジャブジャブの異次元金融緩和で倒産件数は減っている。だが,それによって新しい産業が生まれているわけではない。有効求人倍率の上昇は生産年齢人口(15~64歳)の減少の影響が大きい。
「働き方改革」でも裁量労働制や高度プロフェッショナル制度に関する恣意的データが作られたように,みずからに都合良い数字を並べ立てているだけで,実質賃金の低下と労働時間強化は改善されるみこみはない。
補注)この金子 勝のアベノミクス批判は,社会経済学の観点からくわえられていた。この寄稿から〔2020年だと〕すでに2年が経過していた時点でもまだ,アベノミクス的なだらしなさだけは,間違いなく持続させられてきた。
だが,2020年は日本の場合,2月段階から新型コロナウイルス感染症の問題が明確に出はじめた。以降,日本の産業経済・企業経営全般が決定的ともいうほかない打撃を受けている。
現在の日本は,アノベミクスをウンヌン(デンデン-安倍は云々という漢字をそう読んでいた-)する以前だったと形容してもよい,非常に困難な状況のなか(振り出し的なそのなか)に放りこまれている。ところが,安倍晋三の為政の路線をそのまま継承すると,当時,新首相となった菅 義偉は,言明していた。
けれども,それは首相となった政治家が口にするまともな所信ではありえなかった。経済政策に関する見解として「自身の無力:無策」を認めたも同然であった。菅がどの程度,アベノミクスに相当する経済政策を用意できるのかなどと期待はしないほうがよかった。なにせ,短命に終わる可能性が強い新政権であった。
補注)この指摘どおりになってしまい,菅 義偉政権は1年しかもたなかった。
b) アベノミクスによる「見せかけの好景気」は破綻する
結局のところ,アベノミクスのもとの「好況」は,円安誘導や赤字財政のファイナンス,日銀の株買いに支えられた「みせかけの景気」にすぎないのだ。そのことは実体経済でも同じだ。
アベノミクスとは,成功した途端に破綻する「詐欺」ということになる。仮に消費者物価が上昇した場合,それは金利の上昇をもたらす。実質金利(「利子率-物価上昇率」)がマイナスだと,銀行経営はなりたたなくなっていくからだ。
補注1)今年(ここでは2020年)になって銀行業のせこさは度外れの様相を呈してきた。その点は,振り込み手数料をみればすぐに感じる事情でもある。
無料で振り込めるものは,電子取引による取りあつかい無料で送金ができるのは,たとえば郵貯銀行の場合,同じ郵貯銀行内口座同士だけとなった。
某大手銀行は1千万近くの預金を口座もつ相手であっても,以前から長年続けてきたある情報サービスを廃止した。
金利事情の低迷・切迫性はアベノミクスの,ある意味では心臓部の問題であったが,晋三にはそれをどうすることもできなかった。それでいて,その中途で,首相の地位から去った。
だが,黒田東彦のほうは,当時も(ここでは2020年のこと)なお日銀総裁を務めていた。仮に当時すぐに,この黒田が辞めていたら,これまでのアベノミクスの「張り子の虎」性は一瞬にして炎上し,消滅したはずだったと推測してもよかった。
補注2)この日銀の前総裁になった黒田東彦は,『日本経済新聞』2023年11月いっぱい「私の履歴書」を執筆した。安倍晋三「アホノミクス」の大失政を大番頭としていっしょに犯してきた人物が,この履歴書を書いて残したけれども,近いうちにしっぺ返しのような反論・批判を受けることは覚悟した,と推測する。
だが,そのところを認識できる人間であれば,この履歴書は執筆しなかったか,あるいは時期をもっとあとにすることにしたはずだと思いたいが,まるで「一将功成りて万骨枯る」どころか「一将功成らず万骨も枯る」ごときに,日銀采配を犯してきた人物が,恥ずかしげもなく日経「私の履歴書」を書いていた。
参考にまで触れると安倍晋三が「統一教会2世:山上徹也」に殺されたのは,2022年7月8日のことであった。
c) つまり,異次元緩和のアベノミクスは永遠にデフレ脱却をせず,不況でないともたない政策であり,現状をただもたせるだけの政策なのである。そのために「先端産業が育たず産業構造の転換も遅れ〔てい〕る」。
補注)「プーチンのロシア」が2022年2月24日に始めたウクライナ侵略戦争を契機に,そのデフレ脱却は可能になりつつあるが,日本の消費者物価水準が上がるばかりで,これに対して,労働者の賃金水準の上げ幅が追いつかない現状では,国民生活の状態が悪化することしか展望できない。
こうなると「悪魔のような安倍晋三」の第2次政権の罪悪性は,取りかえしがつかない実体であった〈真価〉を思いしらされる。それでいて,日銀前総裁の黒田東彦は「私の履歴書」を書いた。恥ずかしいと思うだけの精神的な余白がこの人にあってはみつけられない。
〔記事に戻る→〕 異次元緩和は財政放蕩のツケ払いを先送りするだけでなく,競争力のなくなった「ゾンビ企業」を救済しつづけることで,新しい産業構造への転換をますます遅らせていく。〔ということで〕やがてつぎの金融危機が訪れたときに,異次元金融緩和はもう効かなくなるだろう。そして問題が発現したとき,日本の産業衰退が深刻化していることが一気に露呈する。
その時,「失われた20年」が「失われた50年」になってしまうことに気づかされる。すでに,スーパーコンピューター・半導体・液晶・液晶テレビ・太陽光電池・携帯音楽プレーヤー・スマホ・カーナビなど,かつて世界有数のシェアを誇っていた日本製品はみる影もなくなっている。
1990年代まで若者がもっていたものはソニーかパナソニックだったが,いまやアップルかサムスンだ。話題のスマートスピーカーではグーグルかアマゾンで,日本メーカーはどこにもいない。
補注)ここまで金子 勝の「現代日本経済分析論」は,つぎのように述べる森永卓郎の見解とも一致する。途中だが,森永の分析を挿入し,紹介しておく。こちらは2020年9月14日としては当時,最新の記述であった。
〔金子の記事に戻る ↓ 〕
d) 自動車もEV転換で出遅れ,「第4次産業革命」で主導権取れない恐れ
こうしたなかで,政府が唯一といっていい産業政策として力を入れたのが原発輸出だが,皮肉にも,このことが重電機産業の経営を苦しくすることになっている。安倍首相が力を入れた「原発セールス外交」はことごとく失敗に帰している。
アメリカにはマイクロソフト,グーグル,アマゾンをはじめ,並みいるIT企業が存在するが,日本のIT企業の衰退はいちじるしい。どのように,それを根本的に立てなおすかという戦略抜きに,「AIによる第4次産業革命」と口先でいっても,「一億総活躍社会」や「働き方改革」と同じようにかけ声だけに終わるだろう。
所得再分配だけでは不十分,「利権化」した規制緩和
経済成長か再分配かの二者択一ではなく,めざすべきは雇用を創り出す経済成長と所得再分配の適切な組みあわせによる政策体系なのである。
もちろん,経済成長を重視するといっても,規制緩和政策で市場任せでは新しい先端産業への転換は実現できない。前述したように,それは不作為の責任放棄であり,ましてや安倍政権では,構造改革特区や国家戦略特区のような規制緩和政策は利益誘導政治の巣窟と化している。
f) 産業戦略がカギを握る,時代錯誤の「縁故資本主義」
現代では,新しい産業構造の転換には国家戦略が非常に重要な意味をもつ。いまのイノベーションの特徴は,プラットフォームとなるスタンダード(標準)が大きく変わると,市場が一変する点にある。
レコードからCDへのデジタル転換をはじめ,ウォークマンから iPod・iPhone へ,固定電話から携帯電話そしてスマートフォンへ,原発・火力から再生可能エネルギーへ,内燃エンジン車から電気自動車へといった具合である。
こうしたスタンダードの大転換で,政府の果たすべき役割は,かつての国有企業か私企業か,政府か市場かといった古い二分法にもとづくものではない。ところが,安倍政権ではここでも,まったく逆の方向に向かっている。「縁故資本主義」が横行しているからだ。
リニア新幹線建設では,安倍首相の友人である葛西敬之JR東海名誉会長 が関与し,財政投融資資金が注入されているほか,受注をめぐってゼネコン談合も起きた。原発輸出では,同じく首相の友人である中西宏明日立会長が進めるイギリスでの原発事業の資金調達に政府保証がつけられた。
ニューライフサイエンスでは,首相の “腹心の友” 加計孝太郎氏が理事長をする加計学園問題が起き,スパコンではペジーコンピューティングで助成金詐欺が起きている。東京オリンピック向け施設の建設では大手ゼネコンが潤うだけだろう。
g) 政府が新たな役割を担いながら世界が産業構造の転換を進めている時代に,日本だけは,太平洋戦争のさい,当時すでに空母と戦闘機の時代になっているのに,「世界一」だと言って戦艦大和の建造に走り,不沈艦だといいはっていたようなものだ。
限界がみえてきたアベノミクスがいよいよ機能不全に陥ったとき,先端産業で敗北した日本の産業の悲惨な状況が一気に露呈していくことになるだろう。安倍政権は限界まで金融緩和を続けていくだけで,日本の未来のことはなにも考えていないのだ。(金子 勝,引用終わり)
2020年当時のことで触れれば,日銀総裁はまだ黒田東彦が務めていた。アベノミクスの支柱であったこの人物が,その総裁の地位を去らずにいつまでもやっていた。
それでは,金子 勝が批判したごとき日本の産業経済・企業経営の課題(とくにその弱点を克服するための課題)が,火急的な切迫性を抱えていたにもかかわらず,昼行灯のごときに「みえないモノ化」させられたまま,油代だけを無駄に費消している。
当時,首相が菅 義偉に交代していたけれども,アベの政治を継承を謳っていたからには,日本の社会経済がその後もさらにつづけて,坂道を転がり落ちていく経済過程を経てきたのは自然のなりゆきであった。
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