夏と秋の境目の日
いつもの歩行者専用道路の幅がもう3分の1も減っている。
余裕で自転車とすれ違えるほどの道幅なのに、ここ最近はちょっと気をつかう。両側から生い茂る雑草。1番旺盛に道を覆い隠そうとしているのは葛。君の名前は覚えた。
雨上がり。草いきれ。9月に入ったけど、雨も降ったけど、今日は暑くなりそうな朝。フェンスの向こう側の車の行き来する音さえ聞かなければまるで田舎の細道を歩いているかのような緑の中、光合成してます感満載の雑草たち。ムッとした緑の香りの空気。酸素濃度、ちょっと高いかもしれない。
ああ、でも。歩行者専用道路に軽トラが3台並んでる。作業着のおじさんたち。今日は剪定の日か。暑そう。帰りはさっぱりした道になってるかな。この少しジャングルめいた風景の今年の見納め。
草むらから虫の声。あれ松虫が鳴いている〜だっけ。どの声がどの虫か知らないなぁ。リーンリンはなんだっけ。鈴虫だっけ。こんなに暑いのに秋の音。
公園を突っ切る。最後の力を振り絞るようにツクツクボウシが鳴いている。にっくきアレチヌスビトハギが可憐な紫の花を咲かせている。イネ科の雑草も生い茂ってる。
公園内の道のゴムみたいな繋ぎ目。よく見るとアリンコが忙しく行き来してる。足早に移動するその姿は、何かに似ている。神社の参道を行き来する観光客、というよりは、そう、……大きな橋を渡るトラックのようだわ。冬に向けて食料を運ぶのに必死なんだろう。働き者だ。イネ科の雑草にくっついてたアブラムシから蜜をもらってきたのか。それとも、夏の終わりに力尽きたセミや間違ってアスファルトに出てきて干からびたミミズを……。
オシロイバナが群生している。アカムラサキと白の花。朝だからほとんど花はしぼんでるけど、その辺りはなんともいい香りがする。オシロイバナって香りがあるんだったっけ? 今日は湿度が高いから気づいたのかもしれない。まだ濡れている道脇の壁をニホントカゲが走り去る。
小さい薄紫の蝶々が2匹じゃれ合うように飛んでいる。恋? それとも戦い? 観察するのに立ち止まったら、今年は猛暑で全然見かけなかった蚊に、久しぶりに食われる。かゆい。蚊は秋の風物詩に変化したかもしれない。でも、暦では秋になったといえども汗だく。体感はまだ夏。
過ごしやすい気温になるまでもう少し。