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遺伝子の拡散 父の異母兄

第二次世界大戦中、父方の祖父はミクロネシアのとあるA島に派兵されていたらしい。

帰ってきてから祖母と結婚して父が生まれ、祖母が50代で亡くなったあと、周りから反対されているなか早々に再婚した祖父を許せなかった父は、祖父と絶縁した。


それから何年も経ったとき、仕事で出会った人に父は言われた。

『君によう似た男が、A島にいるんや。ポストマンの○ちゃんって呼ばれてたんやけど」

祖父は郵便局で勤めていた。祖父の名前と同じ音の○。祖父は島の人と仲良くなって皆で踊ったと話してた。どう考えても祖父の子どもだ。ますます許せない気持ちにもなり、でも戦争で帰られるかどうかわからない中のことだからしょうがない、と思う気持ちもあり、複雑だったと父は話した。私が大人になってずいぶん経ってから聞いたから、父はずっと言えずにいたんだろうな。

そんな遠くの異国の島に、父に似た異母兄がいると思うと不思議な気持ちになる。祖父に会いたいと思ってたんじゃないかな。父は70代後半なので、その方はもう亡くなっているかもしれないけれど、その方の子や孫がたくさんいるかもしれない。父に似た頭の形をしているのだろうか。父そっくりな頭の形をしている三男を見ると、そんなことを思う。



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