あの頃
あの頃の自転車は
まるで翼だった
風を切り裂き、遠くまで
地図も知らない道を
ただ進むだけで良かった
世界が少し見えてきて
金で買える距離があることを知った
海の向こうに何かがあると信じて
線路の上を滑るように
けれど、心はいつも置き去りだった
そして、ある日ふと気付いた
進むべき道に必要なのは
金や乗り物じゃなかった
夢見る心、旅立つ勇気
それを無くしてから
空の下はこんなにも遠かった
あの頃の俺が
まだ心の中で走っている
今でも、風を感じながら
遠くへ行けると信じたまま
でも、行く先を知るために
ただの気力だけが
どこかに置き去りになっていた
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