小さな優越感
私は、幼児期から体が大きく、幼稚園なのに小学生扱いされた経験が何度もありました。
小学校時代には、「健康優良児」なるものの学校代表に選ばれたこともありました。(今では許されないイベントでしょうが)
中学校、高等学校と「いい体」というか、身長も体重も先ずますバランスよく成長していったと思います。高校時代は、柔道部でそれなりの運動量を日常的にこなしました。かなりの量の食事をしていましたが、どちらかと言えば痩せているくらいでした。身長180cm、体重65kgくらいだったでしょうか。
高校時代に文化祭で仮装行列のイベントがありました。テーマは「猿かに合戦」でした。短パンに上半身裸の私。長靴を履いて大きな「うす」を担いで歩いている写真があります。シックスパックの腹筋もうっすら見えています。髪の毛はふさふさの長髪です。今から思えば、この頃が、スタイルとしてはピークでした。
シックスパックは、横に三段となり、ラーメン屋のチャーシューの仕込みのシーンを見るたびに他人事とは思えなくなりました。フサフサ長髪だった頭も、「髪の毛の量で人間の価値が決まるわけではない!」が口癖になるようになりました。
「過去の栄光」の写真を見るたびに「ああ、こんな時代もあったんだあ」と思う私です。
今の「肥満体」の入口は、大学受験の頃だったと思います。
高校の3学期は「受験勉強」のため、ほとんど学校に行かないで自宅学習となっていました。まあ、流石の私も長時間椅子に座り、机に向かうことになります。「勉強」ってお腹空きますよね。ブドウ糖をたくさん消費するからでしょうか。運動せずにしっかり食べる生活が3ヶ月近く続くことで体重がみるみる増えていきました。
それでも大学入学の際には、まだ70kgの後半くらいだったかと思います。
社会人として教壇に立った時は、80kgを超え、数年のうちに大台の3けたが見えるほどになっていきました。ただ、スポーツは好きで体はよく動いていました。筋肉量がまだあったのでしょうね。
もう、この辺にしておきましょう。
65歳の今、身長は、180cmと高校時代のまま、体重はなんと110kgの巨漢となっています。
腰痛、膝痛に糖尿病、さらに尋常性乾癬と言う皮膚疾患まで「持っている」男になってしまいました。全て「肥満」が悪の根源です。わかっているのに、「炭水化物大好き病」が治りません。まあ、入院はしたことはありませんし、ゴルフも楽しめるくらいの体力は持ち合わせてはいます。
体重は、どんどん増えてきてしまいましたが、身長は変わりません。
180cm(正確には179cm、計るたびに微妙に縮んでる?)と言う背丈は、そんなに高いと言われるほどのものではないかとも思います。まあ、世間的には高い方の部類に入るかもしれません。
横幅もあるので、小学校教員をしているときは、「ゲゲゲの鬼太郎」の「ぬりかべ」と言う妖怪みたいと言われました。(境港の「水木しげるロード」に行った時に、キャラクターのキーホールダー買いました) ポケモンが流行った時は、「カビゴン」がニックネームでした。
私は、どちらかと言えば「自己肯定感」は高い方だと思います。「おめでたい性格」」だとよく言われます。いや、そういう生き方を心がけているせいでもあります。しかし、自分の容姿に関わることでは「肯定」していたのは、高校時代で終わっています。
もうちょっと痩せたらあんな服も着られるのにと、シュッとした自分を思い浮かべたりもしますが、「思う」だけで終わっています。
そんな中、ひとつだけ、体に関わることで「肯定」できる場面があります。
それは、そうじの時や洗濯を干すときに「高いところに手が届く」と言うことです。大そうじの時などは、重宝がられます。電球の交換とか、タンスの上の埃が見えるとか……。
先日もこんなことがありました。
「ああ。届かへん! これ取ってええ」
と妻がウッドデッキから叫んでいます。洗濯を干している場所です。
靴下や小さなハンカチや女性物の小さい下着などを干しているピンチハンガーをぶら下げているのですが、雨が降りそうなので部屋に入れたいそうです。踏み台に乗っているのにもかかわらず、あと、ちょっと言うところで背が届かないということでした。
「えっ、これ? これが届けへんの?」
とニヤニヤしながらわざとらしくすっとはずして見せます。
「モー、嫌なやつ!」
牛になる妻を見下ろす私。ほんとにいい性格?! です。
「これ、エッセイにかけるやん。『小さな優越感』って」
私がnoteを始めてからこうして時々ネタを提案してくれる身長154cmの妻です。
そういえば、子どもが小さい時に、遊園地のキャクターショー(○○レンジャー戦隊系やウルトラマンなど)に行った時、肩車してやると後列からでも子どもに「よく見える」と喜ばれたなあ。まあ、背が高めなのことでたまにはいいこともあるなあ。
そして、思います。
身長154cmの妻と180cmの妻は、見る景色もきっと違うんだろうなあ。高いからいいとか、低いからだめとかじゃなく、それぞれの視点でしか見えない景色があったんだろうなあ。
今度、高いものを取る要請を受けたら嫌味なことはせずに笑顔で取ってあげよう。きっとその時に妻は言ってくれるでしょう。
「なんで、そんなことできんの❤️」
これは、男性が最も自己肯定感を高めるワードらしいです。