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壱
2023年7月21日 09:22
夏休みも半ばにさしかかり、友達と遊ぶこともなかった僕は、祖父母の家の庭で夥しい数の蟻の群れを眺めていた。滴る汗が砂利の上に滲みを作り出し、水玉模様の土を蟻が横切る姿を注視する訳でもなく、ただ眺めていた。コイツらは何を考えているんだろう。死んだ羽虫の亡骸を重たそうに抱えて列を成す蟻の気持ちを僕はわからずにいた。蟻は飽きもせずに運搬を続けている。 脇に咲く薔薇の棘に目をやり、指