霧の宴 ミラノ Ⅴー4 Al di Là (アル ディ ラ ) 彼方に
*Stabat Mater, アンドレアの死
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霧の晴れやらぬ街並みの湿った粗い石畳を用心深く踏みしめながら、
マリアムは作曲家の友人の家に向かっていた。
湿った重い空気の漂う中、突然ふわりと密やかに微かなミモザの匂いが鼻をくすぐって、マリアムは立ち止まり背筋を伸ばし辺りを見回した。が、それらしき樹木は見当たらず、ミモザを売る道端の花売りの姿もない。
ー確かにミモザの匂いがした筈なのにーと解せなかった。
その日は、コンサートシー