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【脳科学×投資#18】思いだしやすさの危うさ『利用可能性ヒューリスティック』

投資の判断を下す際、私たちの脳は情報をどのように処理しているのでしょうか。
例えば、短期的なニュースや目立つ出来事に引きずられてしまうことはないでしょうか?
これは、「利用可能性ヒューリスティック」と呼ばれる認知バイアスによる影響かもしれません。
本記事では、その仕組みと投資への影響を探りながら、読者と一緒に冷静な判断力を磨く方法を考えていきます。



利用可能性ヒューリスティックとは?

「利用可能性ヒューリスティック(Availability Heuristic)」とは、私たちが判断や意思決定を行う際に、すぐに思い出せる情報に強く影響される現象です。
この概念は心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって提唱され、多くの分野で応用されています。

1974年のカーネマンとトヴェルスキーの研究では、英単語における "K" の位置について質問する実験が行われました。
参加者にアルファベットの特定の文字(例:英語の単語における "K")が「単語の最初の文字」として現れる頻度と、「単語の三番目の文字」として現れる頻度を比較させるというものです。
参加者たちは「単語の先頭に 'K' が現れる」方が多いと回答したものの、実際には "K" が三番目の位置に現れる方が頻度は高かったのです。
このように、思い出しやすさが判断に影響を与えるケースは少なくありません。


投資判断における利用可能性ヒューリスティックの影響

株式投資では、最近の出来事やニュースに基づいて市場全体を見てしまうことがあります。
このとき、過去の似た状況が頭に浮かび、それが合理的な判断をゆがめる要因になることがあるのです。
たとえば、バブル崩壊の後しばらくは株式市場に対する慎重な姿勢が強まりやすい一方で、急騰の後には強気な心理が増す傾向があります。
これは「利用可能性ヒューリスティック」に基づくものであり、短期的な変動に影響を受けやすくなる原因です。


利用可能性ヒューリスティックへの対応

利用可能性ヒューリスティックにとらわれないためには、どのように対策を講じるべきでしょうか?
以下に、具体的な方法を挙げてみます。

  1. 長期的視点を保つ
    短期的な情報だけに基づくのではなく、過去のデータや市場全体の動きを考慮し、冷静に判断することが求められます。

  2. 「見える」情報の背後を意識する
    メディアで取り上げられる情報には偏りがあることを念頭に置き、信頼できるデータに基づいた分析を心がけることも有効です。

  3. 判断基準の多様化
    特定のニュースに偏ることなく、多角的な情報源からのデータを活用し、バランスを取る習慣をつけるとよいでしょう。


さいごに

「利用可能性ヒューリスティック」は、日々のニュースや出来事に影響されやすい私たちの脳の特性から生じるものであり、それを認識するだけでも一歩前進です。
この認知バイアスを理解し、冷静な判断ができるよう、共に学び続けましょう。
情報を取り入れる際には、広い視野を持って、多角的な視点から考えることを大切にしたいものです。


参考文献

  • Kahneman, D., & Tversky, A. (1974). "Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases." Science, 185(4157), 1124–1131.

  • Gilovich, T., Griffin, D., & Kahneman, D. (2002). Heuristics and Biases: The Psychology of Intuitive Judgment. Cambridge University Press.

  • Tversky, A., & Kahneman, D. (1981). "The Framing of Decisions and the Psychology of Choice." Science, 211(4481), 453–458.

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