【脳死は人の死ではない#1】脳死する気功の不思議
『気功入門』という本を読みました。といっても、それは国会で「臓器移植法改正案」が審議されていた2007年のことで、もう十数年も前の話です。
これは、医学博士であった故・品川嘉也氏が、大脳生理学の視点で気功を科学した本です。この本には次のような記述があって、びっくりしてしまいました。
私がとくに驚かされたのは、子どものころから気功の訓練をつんできた気功師の脳波である。アルファ波だけでなくベータ波も小さく、いわゆる平坦脳波に近いときさえあった。平坦脳波とは、脳波学的には、いま臓器移植などの問題ともからんで、日本でさまざまに議論されている「脳死」のときに見られる脳波なのである。
気功師の脳機能にはなんらの異常も認められないのに、なぜこのような異常な脳波が生じるのか。不思議としかいいようがない。(本文pp.20-21)
なぜ、気功師に「脳死」や「ボケ」症状を示す脳波が出るのか
さて、まずは子どものころから練功を積んできた、ベテランの気功師について、目を閉じてリラックスした安静閉眼の状態で、「何も考えないでください」と指示を与えて脳波を測定してみた。すると、アルファ波の振幅がきわめて低い事実が判明した。ふつうの人とくらべると、平均して二分の一以下だった。
極端な例では、アルファ波はもちろん、ベータ波もひじょうに小さい気功師もいた。これは、いわゆる脳死状態に見られる「平坦脳波」に近い脳波である。もちろん、気功師の脳に異常や損傷があるわけではないのだから、このような脳波が見られるということは、まったくもって不思議としかいいようがない。(本文p.112)
ここで「脳死」について気になったので調べてみました。脳死の判定は、以下の5つの基準すべてを満たし、6時間経ってもその状態が変わらないことを確認して行われるといいます。
・深い昏睡
・瞳孔の散大と固定
・脳幹反射の消失
・平坦脳波
・自発呼吸の消失
これからするならば、気功師のケースでは、この5つの脳死判定基準が完全に調べられているわけではないので、この気功師における脳波が「脳死」と断定することはできないでしょう。しかし、いずれにせよ、気功の鍛錬によって、気功師の脳波が脳死の状態に近くなったことは事実で、それは不思議極まりないことです。
ここで思わず“不思議”と書いてしまいましたが、この“不思議”というのはどこから来るのだろうかと考えました。
それは、「脳死なのに生きているから不思議だ」と、私が思っているに他ならないのではないかと知って愕然としました。私の中で、いつ脳死が人の死としてとらえられたのでしょうか。何の情報なのかはわかりませんが、いつの間にかこのような思考回路が形成されていたようです。
しかし、この思考回路を停止させ、「脳死が人の死ではない」という前提に立ったらどうでしょうか。つまり、「心臓死が人の死だ」ということです。
とするならば、平坦脳波であろうと、脳死であろうと、心臓が動いていて生きているのですから、気功でそのような脳波が出ても何ら不思議ではないことになります。
とすると、この記事のタイトルは何なんだろうってことになりますが……まぁ、ここで頭をリセットして、「脳死」についてもう少し突っ込んでみようと思うのです。
見出し画像は、京都内村屋さんのイラストをお借りしました。ありがとうございます。
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