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短歌+ショートエッセイ:ほろ酔いの会話


三本のビールが会話を淡くしてひとなつっこい笑顔がのこる
/奥山いずみ


 9月から11月にかけて、住んでいる地域で開講されている起業セミナーに通っていた。大きな事業を立ち上げよう……などというつもりではなく、自分のなかで個人事業主として働き始めそうな予感があり、ビジネスをするうえでの作法というか、いろはを学んでおこうと思ったのだ。

 行ってみて、予想とだいぶ異なる収穫があった。

 セミナー受講前は、事業計画や経理について学べればと思っていた。つまり知識的な面で学びを得ようと考えていたのだ。
 しかしいざ受講してみると、そこは起業家メンタルの学びの場だった。

 講師の先生がすごいのだ。自分の失敗をてらいなく話し、進んでふところをさらすことで人を惹きつける。かなり手練の人たらしだ、と思った。
 セミナーはその先生が、起業家になるうえで必要なマインドセットを身につけさせてくれる、そんな内容だった。


 11月、全ての講義が終わり、セミナーの歴代OBOGの方を交えて交流会が開かれた際、人の輪のなかにセミナーの先生はいた。テーブルには缶ビールや缶チューハイが並んで置かれている。
 同期の人たちと先生に挨拶したときには、もう先生はほろ酔い状態だったのだと思う、話していたら急に話題が別な方へぴゅーんと飛んでいった。

 先生酔ってたねえ。ね、酔ってた酔ってた。
 後で同期の人たちと一緒になってくすくす笑った。




Coverphoto by Yutacar on Unsplash

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