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『ゲンロン戦記』やっと読んだ
東浩紀氏の『ゲンロン戦記』ようやく読んだ。良い本でした。
昨年末くらいにニー仏さんが面白かったよーっておっしゃっていたのでずっと読まなきゃと思っていたのだ。
しかしいろいろやることがあって伸び伸びになっていた。
そうこうしているうちにDMM英会話でたまったDMMポイントがもうすぐ一部有効期限になりそうだったので、DMMの電子書籍を初めて利用して本書を購入したというわけである。
DMMポイント期限き切れるの早すぎるんだけど、貨幣を腐らせることで実物消費を促すを地でいってるよね。
そしてDMMの電子書籍は問題なく利用できたし、これはこれで悪くないんだなと思ったのであった。
ストーリーは、哲学者の東浩紀氏がゲンロンという小さな会社を立ち上げて失敗を重ねつつも形にしてきた紆余曲折についてである。
東氏は私より6個年上であり、私が大学生のころにはすでに『批評空間』などで活躍しておられて(なにをいってるのかはさっぱりわからなかったが)、いわば論壇のスターだったわけである。そういう人が38歳で会社を作って、事務的なことがとても大事と気がついたとか、事務作業こそが経営だとか、古いしきたりはそれなりの合理性があるから残っているとか、いわば当たり前のことに気づいていくという私小説めいたところも本書のみどころの一つとなっている。
東氏に限らず、人目につくところで活躍する人は、クリエイティブな仕事こそ本質であると思いなしがちであるが、それを支える事務的な作業こそが本体といっても過言ではない。いや過言かもしれないが、なんにせよそういう面倒なことを下に見たり、避けたりたいするのは高学歴エリートにありがちなことだ。しかしできるけどやらないというのはいいかもしれないけど、苦手だから避けてるのであればどこかで手痛いしっぺ返しを食らうような気がする。東氏は実際に何度も食らってしまって、その反省の弁が何度も何度もつづられている。
しかし、そうした暗い話ばかりではなくて、楽しい話題もある。ゲンロンカフェという会社のキラーコンテンツがどうして人気があるかは非常に興味深かった。有名人を壇上にたたせて観客の前でダラダラと対談させるというスタイルで、時間を区切らないところがポイントである。そしてそれなりのお金を払わないと見られない。時間を区切らないから登壇者はべらべらとどうでもいいこと(でも本音に近いこと)を話してしまうし、課金制なので観客の質も担保されるのだ。
私も何度かお金を払って観たけど、非常に面白かった。終電がなくなっても喋り続けるというのはスタッフは大変だと思うけど、そこに思わぬ発展がみられるのが醍醐味である。東氏のトレードマークでる誤配の可能性である。
TEDなどのエッセンスを凝縮したプレゼンテーションも面白いけど、雑談要素があまりないので想定外のことはおこりがたい。
物理的な空間を共有することで生じるモヤモヤした感じと、それをウネウネと展開することを許容することで感情の高まりがもたらされる。文字だけでは伝わらないことはたくさんあるんだ。
しかし東氏も認めるように、こうした誤配は感染症対策の敵である。モヤモヤとかウネウネは、オンラインでも共有できなくはないけど、やはり密な空間でこそ最大限にその効果を発揮するものである。私もリアルな学会や研究会に全く参加しなくなってもう1年以上、オフラインでこそ体感しうるサムシングが恋しくなってきた。
そうした誤配の契機が今後まったく失われてしまうとしたらこんなに残念なことはないのだが、東氏はそれを踏まえた上での次の策を練っておられるようなので、そこは期待したいところである。
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