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逢坂冬馬『同士少女よ、敵を撃て』読んだ

狙撃というものに関心を持ったのはアメリカンスナイパーとかゲームさんぽを見たことがきっかけだった。

そういうわけで昨年から話題になっているこれを読んでみたのだ。
タイトルがええよね。

話題になっている小説ってのは、やっぱり読んでみるもんだね。非常に面白かった。

スターリングラードとカリーニングラード(ケーニヒスベルク)を舞台に、女性狙撃手部隊の活躍を描くというもの。

驚くべきことに、第二次大戦時のソビエト連邦は、実際に女性を狙撃手として前線に投入している。中でも著名なのはリュドミラ・パヴリチェンコであるが、彼女も本作には登場する。

リュドミラの元同僚という設定の教官イリーナに拾われたセラフィマが、狙撃手として戦果を上げていくのだが、敵を殺したり、味方を殺されたりして、葛藤するのである。

こう書くとありきたりな感じがするけど、登場人物の性格付けがしっかりしているので説得力がある。また常に主人公の思考を相対化する視点が挿入されるので、変に情緒的になることもない。

現在戦闘中のウクライナとその周辺の地理の勉強にもなったし、独ソ戦について具体的なイメージを少しもつことができた。

ソ連が女性兵士を前線に投入したことについては色々な理由があるようだが、独軍の横暴に刺激されたり、家族がみな死んで行くあてがないといった女性が多くいたのが大きかったようだ。

そうした事情は本書の登場人物においても同様である。彼女らはその上で厳しい訓練をくぐり抜けていくので、主体性や責任感を欠くものはいない。ドイツ兵の情婦が唯一芯のない女性であるが、彼女も最終的には主体的に決断するようになるのだった。

なお女性狙撃手の勇姿はこちらで見ることができる。


また女性ではないけど、ジュード・ロウが伝説の狙撃手ヴァシリ・ザイツェフを演じたこちらもなかなかいいよ。

エド・ハリスもザイツェフのライバルに扮してかっこいいところを見せている。レイチェル・ワイズとのロマンスは蛇足だがハリウッドだからしかたないね。

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はむっち@ケンブリッジ英検
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