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2021年読んで良かった本

今年読んで良かった本をさくっと紹介。意識高い系、英語教材、アメリカ史、疫病についてはすでにとりあげたので省略。


仏教関連の本は年初はけっこう読んでいたのだけど、『自由の国と感染症』の翻訳作業が始まってからは全く読めていない。来年はもっと読みたいね。

仏教の入門書は昨年からかなり読んでいたので、宮元啓一先生の『仏教誕生』でいったん打ち止め。

宮元先生はインド哲学がご専門であり、仏教についても面白く語れる人のようだ。

入門書といえば、飲茶さんのも非常に良かったです。

続いてずっと積んでいた末木文美士先生のこれ。

明治の思想家、主に仏教者についての列伝であり、なかなか面白かった。清沢満之、高山樗牛など結核で夭折している人も多い。現在の日本では疫病は蛇蝎のごとく嫌われているが、沖田総司はじめ、昔の結核は美しく語られるのはやや不思議。

先崎先生のこれも長いこと積んでいたけどやっと読んだ。明治期の思想家についてはもっと学びたいと思うが、他にもやりたいことはあって難しい。でもいつかきっと。

西洋人が仏教をどのように捉えているかということにも昨年に引き続き関心がある。

昨年から読み始めたロバート・ライトのこの本はとても面白かった。

同書へのアンチテーゼ『Why I am not a Buddhist』は仏教のアレさん主催の読書会もあって興味深く読むことができた。


2021年は自死や長寿について考える機会が多かった。

まずようやく邦訳されたニック・ランドのDark Enlightenment。

私は新反動主義について誤解していて、ネオリベ一番搾りみたいなものかと思ってい。しかし、ネオリベラリズム的な要素はあるのだが、もっと労働者の視点に立った思想だと気がついた。だから新反動主義から左派加速主義が出てくるんだよね。ここに気がつけたのは大きかった。そして金利生活者には年金生活者も含まれるということがより深く納得できたのだ。

もちろん職業人として終末期とどう向き合うかという点ではこの本はとても良かった。

参考にはなったのだが、医療従事者がここまで配慮しないといけないものかという疑問は残った。どこまでが医療が介入すべき範囲で、どこからが寿命と判断すべきなのか。

それは社会のほうで答えを出しておいてほしいのだけど。しかし、専門家会議とか分科会とかいうものに判断を丸投げされている現状を見ると、結局は現場でその都度判断していくしかないのだろうね。

寿命と医療といえば、現代医療を拒否するアーミッシュにも関心を持たざるを得なかった。

アーミッシュは必ずしも現代のテクノロジーを拒否するわけではない、といったことを含め、読んでよかった本である。

適度にテクノロジーを拒否することで、結果的に労働者に優しい共同体を形成するアーミッシュに深いシンパシーを抱いた。もちろん真似できるわけではないが。

労働者といえば、東浩紀氏である。企業、経営を通じて、地道な労働の尊さに気づいて行く過程が興味深い。まあ気づくの遅すぎやろという人もいるかもしれない。
しかし非労働者の福祉を重んじるあまり、労働者の厚生から乖離してしまった政治左派から東氏が距離を取るようになったのがよくわかるので読んで損はないと思う。

労働といえばMMTである。MMTの源流とされるハイマン・ミンスキーの思想をMMT主唱者の一人ランダル・レイが解説した書が邦訳された。

レイは労働を重視し、たんなる福祉や移転所得を忌み嫌い政治左派をぎょっとさせていたという。今ならそのことがよくわかる。私自身はベーシックインカム推しではあるが、労働を通じて得られるものが重要であるとも思っている。それに労働よりも福祉を重んじる風潮が、今の日本の閉塞感を生んでいるように思えてならないのだ。

労働とは賃労働だけでなく、家事育児のような家内労働も含んでいる。私はそれらの労働を尊いものだと思っているから、働けなくなったらどうするかも考えておかなくてはならない。

そうすると西部邁の本に自然と手を伸ばすこととなった。

この本は西部が自裁する25年ほど前の出版なのだが、死ぬまでずっとこんなに考えていたのかと驚くほかない。しかしそれでも問題含みの自死であったことには暗然たる気分になる。

自死についてはこれもなかなか良かった。

須原氏の本はあと一冊くらい読む予定である。

自死ではないけど、三島由紀夫のいう「英雄的な死」について考えさせられたのがこの一冊。

これを読んだころはたしか鬼滅の刃劇場版の地上波放送があったはずで、「いまの日本に煉獄さんがいないと嘆くんじゃなくて、俺やお前が煉獄さんになるんだよ!」というようなゲンロンが私の観測範囲では散見された。

自死とか特攻とかそんな英雄的なことじゃなくて、どこまで長寿を追求すべきかというのは現実的な問題である。

そんな疑問に答えてくれるどころか深めてくれるのがみすず書房のこの本。

うーん、と唸りながら読んでしまった。

みすず書房といえば今年はこれだろう。

自死とはちょっと違うけど、攻撃的衝動が自身に向くことはある。そしてそれは依存という形態を取ることもある、そんなことを考えさせられた一冊。まあそんなことを抜きにしても、めちゃくちゃ面白いので読んでほしいな。

精神科つながりでいうと、沼田和也先生のこれが重かった。ありのままとはなにかという自省が突き刺さる。

閉鎖病棟の面々については見てはいけないものを見てしまったかのような気分にさせられる。

見てはいけないといえばこれだ。

著者のreiさんはかなりの発達障害で、かなり大変な情況で生きてこられたわけだが、その内容に語り口が全く匹敵していないのだ。こんなことがありましたと淡々と語られる。
そのアンバランスさにドン引きすること間違いなしだ。


けっこう長くなってしまったので、今日はこれでおしまい。社会科学の本をまとめ切れていないので、明日か明後日くらいにでも。

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