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佐藤優『獄中記』読んだ
この本の二人は入獄するにあたり佐藤優氏のお世話になたという。そして佐藤氏は拘置所で512泊したとかおかしなことが書いてあり、氏の『獄中記』を入手するのやむなきにいたったのである。
Kindle Unlimitedだった。ラッキー。
鈴木宗男事件に連座して逮捕された佐藤優氏であるが、現在も続くロシアの周辺情勢を理解しておくのが有用である。
ソ連崩壊後、NATOは東方拡大を進めた。これはロシアのプライドを痛く傷つけたのはご案内のとおり。一方、極東において日本はそのような野心をもたなかったので、両国は宥和政策を進めることになった。日露平和条約交渉であり、北方領土返還交渉はその一環であった。そこには「政治とカネ」的なツッコミどころが生じたわけである。
本書の内容は送検されてから拘置所で512泊513日過ごす間の、日記、弁護団などへの手紙、獄中生命などなどである。
信じがたいことだが、佐藤氏にとって拘置所は読書に思い切り時間を割けるので快適だったらしい。
それで読んでいるのがハーバーマスとかよくわからない神学の本とかである。さらにドイツ語など語学学習も怠らないという徹底ぶり。
日記や手紙にはいろいろなことが書いてあるのだが、佐藤氏が貫き通すのは、国益に反することはしない、鈴木宗男代議士の利益に反することはしない、キリスト者として恥ずかしいことはしない、である。
国益に関しては、外交官をしていたときに知り得た秘密は墓場までもっていくとかそういうことである。
鈴木宗男代議士にどうしてそれほど忠誠を尽くすのかは、それらの秘密とも関連しているためよくわからない。現在の鈴木氏の言動をみると、そこまですることか?と思わなくもない。
鈴木宗男事件に関して、佐藤氏は獄中で思索を深めるわけであるが、これはなかなか興味深かった。国策捜査の対象になるのは、国家の構造上でてきた問題である。したがってそれを徹底的に掘り下げると国家の矛盾をも暴き立てることになる。国家の一部分たる検察にそれはできないと佐藤氏は判断している。
一罰百戒的に祭り上げて、マスコミなどに社会的制裁を加えさせれば国策捜査は十分に成功したといえるだろう。
佐藤氏の裁判戦術としては、国益と鈴木宗男氏は守りつつ、「思考する世論」に訴えかけるというものだったらしいが、思考するのってそんな簡単なことじゃないよねって思うのであった。
全体としては、学ぶことを決してやめようとしない佐藤氏の姿勢が印象的であった。
本当に、『読書の技法』に書いてあるようなことを実践していたようだ。
私ものんべんだらりと過ごしている場合ではないなと思うのであった。
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