ダニエル・エベレット『ピダハン』読んだ
数について言語学的かつ人類学的考察をしたこの本の著者の父である、ダニエル・エヴェレットの本を読んだ。
またみすゞ書房だ。
ダニエルは言語学者かつ宣教師であり、伝道のためにアマゾンの奥地に住むピダハン族と20年以上にわたって生活を共にした。
彼の業績が衝撃的だったのは、言語が文化の影響を受けることを示したからである。言語は人類に普遍的かつ生得的なものであるとするノーム・チョムスキーの考えと大きく異なるからである。
言語が人間の思考を制約することに異論はないけど、文化や環境に影響されないわけはないよね、、、
例えばピダハンは、口笛語りという独特の発声をする。これはジャングルで獲物に気づかれることなく狩猟仲間と意思疎通する上で極めて有用である。
またピダハンの言語に特徴的なのは、自分が直接体験していないことを表す言葉がないことだ。だから神話とか伝説の類がない。
また著者がイエス・キリストについて説明しても、著者自身が会ったこともない人物について語られても意味がわからないのである。
だからピダハンは今を生きることに集中し、また楽しんでおり、それなりに幸せなようである。そして著者は最終的には無神論者になってしまうのであった。。。
他にも色や数を表す言葉がないなどピダハンの言語は非常に興味深いのだが、妻と幼い子供たちを連れてジャングルの奥地に乗り込んでいく著者の無謀さもなかなかのものである。てか、けっこう危ない目にあったりしてるっていう。
また英語もポルトガル語も解さないピダハンたちの言語を習得していく過程もなかなか読み応えがあった。
ピダハンは言語学の世界ではかなりの衝撃をもって受け止められたようで、スティーブン・ピンカーは「パーティに投げ込まれた爆弾」と評したらしい。そんなわけで日本語のYoutubeの解説動画がけっこう見つかる。