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『洲崎パラダイス赤信号』ひさしぶりに観た

川島雄三は有名な映画監督ではないが、日本映画好きの間ではよく知られている。

彼の最高傑作は言うまでもなく『幕末太陽傳』である。数年前に宝塚歌劇団によって舞台化されている。

しかし『洲崎パラダイス赤信号』をベストに推す声も少なくない。

というようなことを考えていたら、Amazonプライム会員特典だったのでついつい観てしまった。

洲崎パラダイスは、現在の東京都江東区東陽町あたりである。戦後に吉原と並ぶ一大歓楽街となるも、1958年の売春防止法で廃止されている。

私は東西線で通勤していたことがあるので、あの辺りでたまに晩飯を食うことがあったが、今や普通の住宅街である。

本作はその洲崎パラダイスのあたりで、若い流れ者の男女が痴話喧嘩などするという本当に他愛もないストーリーだ。だがモノクロの画面に横溢する活気から、戦後の復興期を想像できる。

もうこういう映画は撮れないだろう。

初めてみたのは2000年ごろ、今はない大阪のどこかのミニシアターで、古い邦画の特集上映だった。ラストの爽快感に感動したことを覚えている。もちろんその頃は、将来東京の湾岸エリアに住むことになるとは知らなかった。

あれから20年以上たって、戦後はさらに遠くなった。

あのときは主演の三橋達也はまだ存命で、2001年の『忘れられぬ人々』とかいうあまり面白くない作品を劇場鑑賞したのをいま思い出した。

2004年に亡くなられたとのこと。当時のことを知る人はどんどんいなくなっていく。


なんだか昨年みたエドワード・ヤンの恋愛時代を思い出してしまったのだ。

どうってことないお話だが、国が発展していく過程で若者たちの元気が溢れるところが似ているなと思った。そしてラスト、唐突にやってくる感激というか爽快感。

もう台湾はこういう映画を撮れないだろう。


時代の空気感を残せるという意味で映画は貴重なのだなと思った次第である。


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はむっち@ケンブリッジ英検
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