みち・街・道・路・途 使い分けできます?
人が集まり住まう都市と都市とを繋ぐ手段、また都市内を区切って交通の便を図ったものを ミチ といいます。前者は「街道」と呼ばれます。日本では都を中心とする統一的な交通路は、大化の改新の前後から奈良期にかけて確立しました。東海・北陸・東山・山陽・山陰・南海・西海の七道が成立し、駅の制度が整えられるにつれて、それぞれの道に沿った地方もミチと称することになりました。ミチノク(道の奥)などのミチの使い方はこれに当たります。
ミチのミは接頭語または発語といわれます。『神代紀』下に「可怜御路(うましみち)」とあります。これは尊敬の意を込めて”御路”と書いていることが伝わります。ミチは、”通路,道路”の意味であるので、ある限定された方面の事柄を指すにいたります。例えば「世の中の遊びの道」(『万葉集』347)。さらには“手段”の意味となり(「病を癒すの方(みち)『神代紀』上)、また、“常道・条理・義理” の意味にもなりました(「かくばかりすべなきものか世の中の道」『万葉集』892)。「佛の道」などというときのミチは、“教へ”という意味になります。ミチは、われ他人ともに踏むべきもの、超個人的な、従って超越的な”行き方“。なので日本人は、生活のあらゆる方面からアプローチして奥義に至り着くことを、ミチと名付けました。漢字「道(ドウ)」は「剣の道」「茶の道」「華の道」など。
街は『説文』の説明では、行(╬ 十字路の象形)の意味を持ちます。圭(ケイ)の声の字で、町並みを区切る道のことです。ガイ(カイ)音の意は”交”です。街(カイ)は”交会せる通路”を意味します。なので、『説文』では、「四通の道なり」と添えてあります。街(カイ)が町並みを区切る道であるのに対し、田畑を区切る道を「畦(ケイ/あぜ)」といいます。「町」の字も、田を区切る畦道です。
近年は街路に英語の ストリート(street)を用いることが日常化しています。これはラテン語atrāta[via]”(砂石を)撒いた[道]、舗装した[道]のことで、もとはローマから欧州各地に通した軍用道路でした。それがゲルマン(またはチュートン)語系の各国語に入って”街道、街路、大通り”などの意味を帯びるようになりました。ドイツ語ではStraße(シュトラーセ)といいます。
道 は、辵(ちゃく、辶)の意味です。首(シュ)の声の字で、辵の本字は「行」の字の下に「止」(趾、あしゆび)を添えたものです。漢字の字画上の呼称としては「之繞(シネウ/シンネウ/シンニヨウ」といいます。全て足で行くこと(歩くこと)に縁のある字に用います。「進」退」逃」追」などがあります。
路 は、足の意味をもっています。各の声の字です。各の字は太古にはglag,klagという複子音をもっていたようで、それが分かれて カク、ラクの二音になったと推測されます(藤堂明保)。「路(ロ)」は「絡」と同系であるので、経(たていと、南北の道)を横に連”絡”する横の道(緯、東西の道)を原義とすると考えられます。
途 は、辵(ちゃく、辶)の意味をもち、余(ヨ)の声の字です。余は「舒(ジョ、のびやか)」や「徐(ジョ、おもむろ)」と同系で、途は”(一途に)伸びた行路”を意味します。字はまた「塗」にもなります。「道途」「道塗」は同じ意味です。
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