「町の書店を増やしたい」を考える 4-4. 本:誰に読書して欲しいのか(1)
前回の話を踏まえて、子どもというよりは大人を主に想定しながら考えていきます。
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4-4.本:誰に読書をして欲しいのか
文化庁の「国語に関する世論調査」(平成30年度)の「読書量が減っている理由」を元に、誰に読書をしてほしいのか、誰にどのようなアプローチをしたらもっと本を読んでもらえるのかを考えていきたいと思います。
(もとから全然読書していない人が対象外のようになってしまいそうですが、多少は参考になりそうですし、ひとまずこのまま進めます)
※調査対象は全国16歳以上の男女
※理由は一人二つまで回答可能
前回(4-3.)分けたグループに沿って一つずつ考えていきます。
CAN but DON'T グループ :水色・薄オレンジ
WANT but CAN'T グループ:薄オレンジ・薄緑・白
※薄オレンジは両方のグループに属する可能性があるので、それぞれで考えてみます。
(1)CAN but DON'T 読めるけど読まない人たち
自らの意思で読書から離れている理由のグループとも言えます。
合わせると約25%です。
a.「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」という項目がありますが、
これには、厳密には
①忙しくなければ、本を読みたい人
だけではなく、②忙しくなくても、結局本は読まない人 も含みそうです。
①については後程WANT but CAN'Tで考えます。
ここで考えるのは②です。
忙しくなくても本は読まない。なぜでしょう?
なぜなら、面白くないから、役に立たないから。
もっと面白いものや、もっと役に立つものが、世の中に増えてきているから、という時代や社会背景は確かにあるかもしれません。
けれど、全ての本が面白くなくて役に立たないなんてことはないと思いませんか?
■魅力的な本に出会えてない!
特に、以下の項目からは「魅力的な本に出会えてない!」という印象を受けます。そもそも、出版されている本が魅力的ではないものが多いのかもしれませんし、自分に合った魅力的な本との出会い方を知らないのかもしれません。
d. テレビの方が魅力的である 11%
e. 魅力的な本が減っている 4%
g. 読書の必要性を感じない 3%
h. 良い本の選び方が分からない 3%
⇒これらの人に読書をしてもらうために、考えられることは3つあります。
①出版される本の質を高める
ただ、これは壮大なテーマです。出版システムについて理解を深めながら研究していきたいので、ここでは、現時点でざっと思い浮かぶことをひとまず羅列してみます。
・本の「質」とはなんぞや
・出版の種類別に考えた方が良さそう
(大手企業からの出版・独立系出版社からの出版・自費出版など)
・現状、出版に至るまでの動機と判断基準は何なのか
・現状の出版の利益構造、利益回収の考え方は見直せないか
・読者のニーズを細かく捉えて出版されているのか
・読者も多様な時代、マスマーケティングだけでは限界がありそう
・発表の自由は誰にでもあるが、ニーズがなくても出版できるならすればいいのか
・有名人が書いた、贅沢に宣伝できる、などの売れそうな本ならなんでも出版すればいいのか
・そこにポリシーや愛はあるんか
・でもそういう本が、読まない人たちの最初の一歩になるかもよ?
・「良いものを読者に届けたい」という崇高なポリシーを抱き続けている出版人は何割ほどいるのか
・そもそもポリシーとか言ってる場合ではなくて、目の前の生活と大きな出版システムの中で動くしかない、キツイ労働環境としがらみの労働構造で身動きがとれなくなってしまっている可能性はないか
・広告などの兼ね合いもあって色々と力関係やしがらみが強そう
・事前受注システムが良いのではないか
・初版は少なく刷って、ターゲット層の一部に読んでもらいそのフィードバックを受けて、増刷を決めるのはどうか
・海外事例で参考にできるものがありそう
②良い本を適切な人に届ける・紹介する精度を上げる
◎昔からある主な「本の紹介」は以下の4つが思い浮かびます。
・雑誌・テレビ・ラジオ・新聞などでの本紹介
・書店でのフェア・面陳・書店の棚全て・仕入れ
・学校などの推薦図書
・知人友人家族同僚などからの1対1の紹介、オススメ
上の3つは紹介する側が、紹介される側一人ひとりを細かく認識しているわけではないことが多いかと思われます。ある程度のターゲット層は決まっているとは思いますが、比較的範囲が広く設定されてきたのではないでしょうか。紹介してくれる人自身や、その書店自体のファンであればかなり高確率でヒットすると思いますが、そうでないと何となく流してしまう情報かもしれません。
自分にピンポイントで紹介される「知人友人家族同僚などからの1対1の紹介、オススメ」の方がヒットする精度は高いかもしれません。(※紹介される人が相手を嫌いではないこと。紹介する人が相手のことをよく分かっていること。この2つの条件が揃う必要があります!)
◎最近の「本の紹介」は、上記に加え、以下の4つが思い浮かびます。
・SNS、Youtubeなどで本を紹介する人たち(業界人とは限らず)
・選書サービス(客が依頼して自分に合った本を選書してもらう)
・Amazonなどのリコメンド機能と口コミ
・ブクログ、読書メーターなどの読書アプリ
・「選書AI BOOK4U」などのAI診断
これらは、以前のものに比べよりパーソナルになっています。
世の中一般的なヒットもある程度知りたいけれど、「自分にとって」魅力的な本が何なのかが求められているように思います。ここを追求して良い本を適切な人に届けられるようにしていくというのは、ひとつの読書量増加へのアプローチだと言えます。
(もちろん、偶然の出会いも大事で、書店で漠然といろんな本の背表紙や表紙を眺めたり、それこそ表紙が完全に隠された本を買ってみるなども面白いのは言うまでもありません)
参考:読書記録アプリのおすすめ人気ランキング24選【2024年】 | マイベスト (my-best.com)
③良い本の選び方自体を啓蒙する
「自分に合った魅力的な本との出会い方」自体を啓蒙していくということも大事なのではないでしょうか。
最初の一歩は、②の紹介やオススメを参考にして踏み出し、失敗や試行錯誤も繰り返すうちに自分なりの出会い方を見つけられるのが理想です。
お気に入りの書店や紹介者を見つけ、本の見極め方を習得していくこと。
けれど、このファスト時代にそんな流暢なことを言っていられないのかもしれません。
「自分に合った魅力的な本との出会い方」で検索をするとたくさんの記事がヒットします。それだけ求めている人が多いと思われます。
さっと目を通した範囲ですと、ここで書いてきたのと同じような内容が多かったので、もう少し新しい情報が見つかり次第追記します。
④読めるけど、読まない人をターゲットにした書店を出す
f. 近所に本屋や図書館がない 3%
ここまで話してきた忙しくなくても、結局本は読まない人(CAN but DON'T 読めるけど読まない人たち)は、近所に本屋や図書館があったら、本を読むのでしょうか?
恐らく本に魅力を感じていない状態であれば、行かないですよね?
本に魅力を感じていないのに、入りたくなってしまう本屋や図書館の作りにして、可能性を広げる・接触機会を増やすということはできるかもしれません。
例えば、入りたくなる魅力的なファサードである・選びやすく居心地の良い店内である・本以外の魅力的なサービスや商品もある・待ち合わせ場所になる等・・・
これは別途書店についての項目で深めていきますが、
本好きな人ではなく、あえて本に魅力を感じていない人をターゲットに設定した書店があった方がいいのかもしれません。(すでにあったらごめんなさい。もっとあった方がいいのかもしれません。)
なので、「CAN but DON'T 読めるけど読まない人たち」に本を読んでもらうには、まず第一段階として①出版側は質の良い本を出版し、②書店や仲介者はそれを適切に紹介し、③消費者も選び抜く力を身に着ける。
そして、第二段階の受け皿として、魅力的な書店や図書館を身近に立ち寄れるように用意していきたいところです。
次回予告
4-4. 本:誰に読書をして欲しいのか(2)WANT but CAN'T 読みたいけど読めない人たち
5.書店:求められる役割について考える
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