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『南方郵便機』サン=テグジュペリ著 訳 堀口大學

ある日、街の灯りがあかるく灯る写真が飛び込んでくる。
その街は必ず壁のところで終わっている整然とし確然たる平面の世界。
しばらくすると、そこは瓦礫の山に変わり果て、数千年後には砂の城の遺跡と呼ばれる。

現地記者が亡くなって、今日で201人目。
数多の古の教会が爆撃によって破壊されていく──こんなにおかしな事がまかり通るのは、あなたや僕がこの事実を見て見ぬふりを続けているからだ。
いま語るべきことなど、この民族浄化以外に何があるというのだろうか。
そんなに、芸術やとりとめのない日常が大事だと思うならば、それらを奪い去られて何十年と経つひとたちのことをなぜ考えないのか。見て見ぬふりをされて来て、それがいまだに許されているからだろうに。このことに反対せずして、どうするのか。

僕の好きなサン=テグジュペリの『夜間飛行』と『南方郵便機』の一節に願いを込めて、即時停戦を祈りながら彼の地の夜空を想像した。

「水のように澄んだ空が星を潰し、星を現像していた。しばらくすると夜が来た。サハラ砂漠は月光を浴びて砂丘へとひろがっていた。」

『南方郵便機』 サン=テグジュペリ 堀口大學訳
新潮文庫

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