『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか』今井むつみ
概要
『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか』は、日常や仕事でのコミュニケーションの悩みを解決するためのヒントが詰まった一冊です。著者の今井むつみさんは、認知科学や心理学の視点から、なぜ人と人との間で誤解が生じるのか、そのメカニズムを解説しています。本書では、伝わらない原因を「スキーマ」と呼ばれる個々の経験や知識の枠組みの違いに求めています。このスキーマの違いが、同じ内容でも人によって異なる理解を生み、結果として意思疎通が難しくなる要因だとしています。また、「忘れる」という人間の特性や、相手の立場に立った考え方の重要性にも触れ、より効果的なコミュニケーションの方法を具体例と共に紹介しています。日常の問題解決に役立つ内容が多く含まれており、読者の人生に大きな影響を与える一冊です。
本のジャンル
コミュニケーション、心理学、ビジネス
要約
本書では「なぜ人に何回説明しても伝わらない」のか、その理由を3つの要点に分けて解説しています。
1. 「スキーマ」の違い
「スキーマ」とは、個々人が持つ知識や経験によって形成された頭の中の枠組みのことを指します。例えば、IT業界の上司が専門用語を用いて新入社員にプロジェクト内容を説明する場合、新入社員が業界経験がないと、その説明が理解しにくくなります。このように、お互いのスキーマが異なることで同じ話でも異なる解釈が生じ、結果として伝わりにくくなってしまいます。正確に伝えるためには、相手のスキーマに合わせて言葉を選び、小学生でも理解できるような簡単な言葉で説明することが求められます。
2. 忘れることは重要な能力
人間の脳の記憶容量は非常に限られており、アメリカの研究によれば約1GB程度しかないとされています。これにより、脳は日々新しい情報を取り入れるために古い情報を忘れる必要があります。忘れることができるからこそ、新しい情報に適応しやすくなるのです。仕事やプライベートでも重要なことを忘れないようにするためには、リマインダーを使ったり、視覚的な管理ツールを活用するなどの工夫が必要です。忘れやすいという特性を理解した上で、対策を立てることが重要です。
3. 相手の立場に立つことの大切さ
コミュニケーションを円滑に進めるためには、相手の立場に立って物事を考える力が重要です。部下に対して報告を促す際には、なぜその報告が必要なのかを具体的に説明することで、報告がただの義務ではなく、リスク管理や会社のための行為であると理解してもらうことができます。このように、相手がその行動の意図を理解することで、コミュニケーションが大きく改善されます。
さらに本書では、こうしたコミュニケーションのコツを仕事や家庭の場面で具体的にどう活かすかを多くの事例を通して説明しています。例えば、部下とのホウレンソウ(報告・連絡・相談)の質を高める方法や、子どもに勉強を促す際のアプローチなど、日常で役立つ実践的なアドバイスが満載です。
感想とまとめ
『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか』は、コミュニケーションに悩む全ての人にとって役立つ内容が詰まっています。日常的な経験に基づいた具体例を用いることで、スキーマや記憶の仕組み、相手の立場を考える重要性をわかりやすく説明しており、理論だけでなく実践的なアドバイスも豊富です。特に「相手の立場に立つこと」の重要性は、仕事だけでなく家族や友人との関係にも応用できる内容で、幅広い人々にとって学びがあると感じました。人と人とのコミュニケーションは思った以上に複雑ですが、本書を通じてその複雑さを解きほぐす方法を学ぶことができるでしょう。
リンクを参考に、ぜひ一度この本の世界に触れてみてください。
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