『精神科医が見つけた3つの幸福』樺沢紫苑
概要
『精神科医が見つけた3つの幸福』は、幸福の本質を脳内物質の観点から解説する本です。著者は、幸福を3つの種類に分けています。「セロトニン的幸福」は健康やリラックスから得られる安定した幸福、「オキシトシン的幸福」は人とのつながりから得られる温かい幸福、「ドーパミン的幸福」は達成感や成功から得られる高揚感です。本書では、これら3つの幸福をバランス良く追求することが大切であるとし、特にセロトニンとオキシトシンを基盤とするべきだと強調しています。成功(ドーパミン)に偏った生き方が陥りやすい罠や、幸福を感じるための実践的な方法について具体的なアドバイスを提供しています。
本のジャンル
自己啓発、メンタル・マインドフルネス、心理学
要約
著者は本書で、幸福を「セロトニン的幸福」「オキシトシン的幸福」「ドーパミン的幸福」の3つに分類しています。この分類の背後には、脳内で分泌される物質の働きがあります。セロトニンは心身の安定やリラックスをもたらし、オキシトシンは他者とのつながりや絆を強化し、ドーパミンは達成感や報酬を感じる際に関与する物質です。著者によると、幸福を本質的に得るためには、この3つの幸福をバランス良く追求する必要があります。
1. セロトニン的幸福の重要性
セロトニン的幸福とは、健康な体と心から得られる安定した幸福感のことです。具体的には、朝日を浴びることや軽い運動などがセロトニンの分泌を促進し、気分を安定させます。例えば、朝の散歩はその一つの方法です。過去の失敗や未来の不安に囚われず、目の前の風景や自然に意識を向けることで、セロトニンが活性化されます。これは「マインドフルネス」の一種であり、精神の安定を保つために役立つとされています。朝の散歩を通勤時間の一部に取り入れることで、忙しい日常の中でもセロトニン的幸福を感じることが可能です。
2. オキシトシン的幸福と人間関係
次に、オキシトシン的幸福についてです。これは他者との交流や深い絆から得られる幸福感です。人は一人では幸福を感じづらく、信頼関係を持つ少人数の仲間や家族とのつながりが幸福感を増幅させます。研究によると、強い信頼関係を持つ相手は5〜6人程度が限界で、それ以上の人数とは深い関係を維持するのは難しいとされています。著者は、この少人数の関係を大切にすることが、長期的な幸福を実現するための鍵であると述べています。現代社会では、多くの人とつながることが容易になっていますが、真に大切な関係を絞ることで、オキシトシン的幸福を深めることが可能です。
3. ドーパミン的幸福のリスクと罠
ドーパミン的幸福は、成功や達成感から得られる一時的な幸福です。これは非常に強い刺激であり、仕事での成功や収入の増加など、目に見える成果が伴うと特に高まります。しかし、ドーパミンに依存する生き方には注意が必要です。なぜなら、ドーパミンは一度分泌されると、次回はさらに強い刺激が必要になり、それが繰り返されると「幸福のレベル」が上がり続けてしまうからです。このような幸福の追求は体力や人間関係を犠牲にする可能性があり、最終的には健康や人とのつながりを失うリスクを孕んでいます。
幸福のピラミッドと「鏡餅」の例え
著者は幸福の階層を「ピラミッド」で示していますが、これは「鏡餅」の形で説明することもできます。鏡餅の一番上には鮮やかなミカンがありますが、それを支えるのは2段のお餅です。ミカン(ドーパミン的幸福)は目立つ存在であり、多くの人がその魅力に引かれます。しかし、ミカンを支えるお餅(セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福)がなければ、ミカンは転がり落ちてしまいます。つまり、安定した土台(健康と人間関係)があってこそ、達成感や成功を持続的に享受できるのです。
実践的なアドバイス
本書は、セロトニン的幸福とオキシトシン的幸福を優先する生活を推奨しています。具体的には、毎朝の散歩や家族との時間を大切にすること、友人や同僚との信頼関係を深めるための時間を作ることです。ドーパミン的幸福を追い求めるのではなく、日々の小さな幸せに目を向けることで、より持続的で充実した幸福を得ることができると著者は主張しています。
感想とまとめ
『精神科医が見つけた3つの幸福』は、日常の中で見逃しがちな「本質的な幸福」に焦点を当てています。忙しい現代社会では、成功や目に見える成果に意識が集中しがちですが、健康と人間関係が幸福の基盤であることを再確認させてくれる本です。例え話や具体的なアドバイスが豊富で、日々の生活にすぐ取り入れられる内容が魅力的です。特に「幸福は鏡餅」という例えは、シンプルながらも幸福の本質を直感的に理解させてくれます。
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