【本132】『今日のハチミツ、あしたの私』
著者:寺地はるな 出版社:角川春樹事務所
「蜂蜜をもうひと匙足せば、あなたの明日は今日より良くなる」
誰かの些細な行動が、誰かの人生にそっと光を灯すことがあります。灯した本人が気づいていようと気づかないでいようと。
中学生の碧は、居場所を失い「明日なんて来なければいい」と思っていました。そんな彼女を救ったのは、見知らぬ人がくれたひと匙の蜂蜜。それは単なる食べ物ではなく、彼女にとって希望を与えてくれるものでした。
16年後、30歳になった碧は恋人の故郷で蜂蜜園を手伝いながら新しい居場所を作り出していきます。その姿は、恋人にとって羨ましくもあり、少し疎ましくもあるようです。
碧が新しい世界を広げていく姿は、人生は自らの行動で変えられるという強さがあります。居場所は与えられるものではなく、作るもの。そんな碧の決意が聞こえてきそうです。この物語を読みながら、私自身も「自分の居場所」をどのように作っていきたいのか、作るのか、あらためて考えさせられました。
人生を少しだけ良くする「ひと匙」。それを見つけるためのヒントが、この物語には詰まっています。