見出し画像

【本126】『忘れものは絵本の中に』

著者:有間 カオル 出版社:実業之日本社文庫

主人公たちは、どこか小さな躓きや、抜け出せないトラウマを抱えた人たちばかり。そんな彼ら・彼女たちが迷い込むのが、ゴールデン街の片隅にある「絵本Bar クレヨン」。ここは、カウンターしかない小さなバー。その壁にはぎっしりと絵本がならんでいます。

絵本を取り出すと、あの頃の自分がよみがえってきます。
この本好きだったなー、とか、逆になんでこの本が良いんだろう?、とか。

そんな主人公たちは、絵本の魔法にかかっていきます。
死んだはずのノンタン(白猫)に再会する雅之、世の中が白黒の世界に変化する真歩、何度も"あの時"に遡り妻との別れの日々を過ごす武人...

不思議な日常に迷い込みながら、いま、超えなければならない何かを主人公たちは探していきます。

絵本を手にすると幼いころの自分がよみがえります。絵本の世界で遊んだ経験のある人たちは、どんなに歳を経ても、絵本を通して、真っ白で純粋な自分=本来の自分と再会することができるのです。そして、「本来の自分」こそが、行き詰まった今の自分を超える鍵を持っているのかもしれません。

絵本を通して自分にふれる。
絵本そのものが魔法に満ちているのだと、この本を読んで思いました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?