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怠けてしまうのは"仕事のせい" 小説家 梅崎春生に学ぶ『怠惰の美徳』

最近、気づいたことがある。

あまり頑張りたくないことに。

正確に言うと、好きなことや自分が「これだ!」と思ったことには時間も労力も費やせるが、それ以外のことにはやる気が出ない。

そんな中、最近よく「なぜ働くのだろう?」と考える。自分の答えはいたってシンプルで生活するためであり、これ以外に言いようがない。

そもそも、生活をするためにお金を稼ぐ必要がある仕組みに疑問を感じてしまう。人間として最低限の暮らしをするのに必要なお金くらい国が賄ってほしい。

少し前にX(旧Twitter)のタイムラインで流れてきた漫画の一コマ。ここに書かれていることは、まさしく現代社会を象徴しているように思える。


社会に身を置くと嫌でも誰かと競争させられる。

「オンリーワン」や「自分らしさ」と言った耳ざわりのいい言葉にほっとする時もあるが、目に見えない何かと常に競わされているように感じる。

私は誰とも競争をしたくない。

理由は、体力・気力ともに誰にも勝てる気がしないから。だから、他の人が手をつけないことをして競争を回避したい。

「ブルーオーシャン戦略」「ニッチ戦略」そんなカッコイイものではない。

ただの「弱者の生存戦略」なのだ。

そんなことを考えながら日々過ごしているとき、ある小説家の作品に出会い、その考え方に惚れ込んだ。

それが梅崎春生の『怠惰の美徳』だ。

梅崎のプロフィールは以下のとおり

梅崎 春生(うめざき はるお、1915年〈大正4年〉2月15日 - 1965年〈昭和40年〉7月19日)は、日本の小説家/随筆家。

海軍体験を基にした『桜島』の成功で第一次戦後派の代表的存在となった。戦争物のほか、人間心理の暗闘を戯画的に描いた市井事物でも評判を呼び、作家としての地位を確立。「第三の新人」の先駆とも目されたが、やがて心身不調となり、『幻化』を遺して没した。

出典:Wikipedia

『怠惰の美徳』はエッセイ+短編小説で構成された作品。エッセイのパートでは、梅崎がいかに怠け者かが綴られている。

夜は10時間あまり眠り、昼寝を2時間ほどする。つまり1日の半分は惰眠をむさぼっていることになる。

起きているときは、食事をしたり、本を読んだり、街を歩き、余暇の時間で少しばかりの仕事をこなす。

梅崎にとって仕事は、余暇の時間にするもの。

1日の1/3を労働に捧げている人からすると、この考えは目から鱗だ。他にも自分が怠け者である理由をこのように語っている。

仕事があればこそ怠けるということが成立するのであって、仕事がないのに怠けるということなんかあり得ない。すなわち仕事が私を怠けさせるのだ。

出典:怠惰の美徳

自分が怠け者であることを、仕事のせいにしている。


うがった見方をすれば、働きたくないおっさんが、サボる言い訳を小難しく言っているだけに見える・・・しかし、そこは流石の小説家。それっぽく言うのが上手い。

日本人はマジメだから、サボることを良しとしない。そんな風潮に流され、サボったさいに自己嫌悪に陥ってしまう人も多いのではないか。

そんなときは、自分を責めるのではなく梅崎同様「仕事があるからサボっちゃうんだよー」と、うだうだ言ってもいいじゃない。

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