『西荻窪の古本屋、地域について思うこと』
#古書音羽館 店員 #広瀬由佳子 さんインタビュー(2022.6.8)
-お店はどのように始まったのでしょうか。
広瀬 この店は2000年からあります。夫は町田の高原書店(2019年5月閉業)で修業した後、開業に向けて1年ほど物件を探していた頃、この場所で支店を持っていた吉祥寺のよみた屋さんがここを閉じると聞いて、その後に入りました。それまで私は西荻窪の駅に降り立ったことがありませんでした。この場所は、駅に近くバス通りからも一本入った通りで店外の均一棚も置きやすく古本屋に適していたみたいです。
-たしかに、店の外側の均一棚は、通る度、本が変わっていたりして、通りかかるとつい、覗き込んでしまいます。
広瀬 はい。均一棚の本はなるべく循環させるようにしています。これはよく話すことなんですが、値札シールをみてみると値段と一緒にカタカタ1文字を印字されているでしょう。これで棚出しした時期を管理しているんです。「ヨ・キ・ミ・セ・サ・カ・エ・ル」といった8文字を棚出しする月2回のタイミング(1日と15日)で順々に印字することで、動きがない本は2~3か月で入れ変えています。
-そうした工夫を、初めて知りました。
広瀬 荻窪にあった「古書ささま書店(2020年4月に閉店。跡地に古書ワルツが開業。)」さんがそうしたやり方をしていると聞いて、参考にしています。なので、均一棚で見かけた本は一期一会だと思って、その時お買い求めいただくことをおすすめします。
-はい。私も経験しました。音羽館では、どんな本が並んでいるのでしょうか。
広瀬 人文書、芸術・芸能、文学や文庫、漫画、実用書など、特にジャンルを決めていないので幅広い本があります。古書店は新刊書店と違って、「本を買う」ことでも地域とつながっています。一都三県くらいまでは本の引き取りに行くこともありますが、区内の地域の方から買った本が6~7割と多いのも特徴です。特に売れるのは人文と思想の本。いい思想書が入るとすぐに売れます。この辺はインテリな方が多い(?)のかもしれません。
-さいごに、地域の話題について、感じていらっしゃることを、ひとことお願いします。
広瀬 西荻は、本の街と言われますが、古書店も新刊書店もずいぶん減りました。いまぱっと思いつくだけで10店は辞められました。やはりネットの影響は大きいでしょう今年の3月から「古書音羽館 くま吉店長」のアカウントでTwitterをはじめてみたのですが、SNSは、他人のつぶやきを眺めるだけであっという間に時間が経ってしまいますね。自分の興味あることばかりどんどん更新されるし。それだけで活字欲が満たされちゃって、結果的に読書欲も減ってしまうということを、身をもって感じています。
ほかに地域のことでいえば、児童館がなくなって税務署なんか移転してますけど、今まで機能していたものをわざわざ何のためにいじったんだろう。こうしたことは当事者でないと何が問題なのかよくわかりません。自分に関わること以外に関心を持つのは難しい。だからこそ、どういった考えで何をやり、それによりどんな成果が期待されるのか、正直にわかりやすく伝えてほしいです。
地域のことでもうひとつ。善福寺川沿いを歩くのがほぼ日課なのですが、たくさん鳥がやってきて、東京の住宅地でありながら自然が多いことに気づきます。ですがこの善福寺川、合流式下水道といって、雨が多いときは各家庭からの生活排水が流れ込んでしまうそうです。これを整備して、生活排水が流れ込まないようにしてほしい。川がきれいになったら、もっと住民の憩いの場になると思うんです。今でも川沿いをランニングしたり、カモの親子やカワセミを見つけて楽しむ人、環境を守る活動をされている方だってたくさんいらっしゃるんですよ。さらには東京じゅうの川がそうなったら東京湾もきれいになり、後世に誇れる財産になります。まるでプロジェクトxです。自然環境がもっとよくなる将来だってあるのだと思います。
お店情報:古書 音羽館
営業時間:11:00-20:00
定休日:火曜定休、年末年始
所在地:杉並区西荻北3丁目13−7 ベルハイム西荻窪 1F
電話番号:03-5382-1587
Twitterアカウント:古書音羽館 くま吉店長(@otowa_kan)
https://twitter.com/otowa_kan
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