映画「ジェミニマン」を見た感想
私はウィル・スミスが昔から好きだ。というより、BAD BOYSが好き。ウィル・スミスは、ああいうコメディっぽいアクション映画によく出ている。だから、ああいうのが好きだ。MIBなんて最高だ。
最初に言っておくと、ネタバレを含むので、嫌な人はブラウザバックして欲しい。
今日、ジェミニマンを見た。久しぶりにBAD BOYSを見たくなってNetflixに入ったらサジェストされて、スナイパー、自分のクローンと戦う、というあらすじを見て良さそうと思ったのだった。
映画全体の感想
ウィル・スミスも歳を取ったなぁと思う反面、相変わらずかっこええねえ、いい歳の取り方だ…
主人公とクローンには共通点がある
父親からの愛情を受けずに育った
母親からも、愛情を受けないないし疎遠だった
だけど未だに父親、あるいは父親の影に支配されている
概要を説明すると、主人公は父親から虐待のような厳しさの訓練を受けていた。それもあって軍隊では活躍できたしスナイパーとしても一流だった。結局色々あり父親とも母親とも疎遠になった(父親死んだ気がする。覚えてない)
そんな主人公が、凄腕スナイパーとしてのキャリアを引退した。その後、何者かに命を狙われる。それが自分のクローンだった、というわけ。しかし、このクローンもまぁ不憫な境遇である。
孤児という扱いで育てられたのだが、父親は彼を最強のスナイパーである主人公を超える戦士に育てることを目的に育てていた。主人公に言わせれば道具である。武器として、育てられた。主人公とクローンには30歳近い歳の差がある。だからクローンは最初主人公をジジイ呼ばわりしている。
この様相は、私には身勝手な父親と、そのトラウマの克服の話のように見えた。主人公にとってクローンは、過去の自分なのだ。父親に抵抗する事もできず、愛を享受することもなくただ戦士としてだけ一流になる。だけど、そんな自分のもっとも心の休まる瞬間は、地面に寝そべって引き金を引いているときだけなのだ。父親から与えられたものは極端に少なく、だが唯一与えられた戦士としての才能だけが、彼の心を休めていた。
そんな自分が、今目の前に立ちはだかっている。
だが、主人公はもう大人だ。圧倒的にクローンよりは大人だ。しかし彼は独身で、精神的には未だに父親の影に支配されて自分自身が父親になるなんてことは考えられないような状態だった。
だが、1つクローンには違うところがあった。彼は、大人の彼に出会った。そして諭された。お前はクローンで、武器として作られ育てられている。思うようにさせるのか?
親は親だ。彼にとっては、全てだった。それを否定する目線を与えられ、葛藤する。
最後には、父親を手に掛けようとする。しかし、主人公はそれだけはさせない。「これをやってしまうと、お前の中の何かが壊れて、もうもとに戻らなくなる」
父親の影から離れて、自分になるということ
最終的に、主人公はさもクローンの良き父親かのような振る舞いをするようになったように思えた。なんとも皮肉な話だ。だが、私はこれが、1人の人間の話だと思えた。
別の人間(クローン)の人生に対する向き合い方が、さも父親と自分は違うんだという区別化の話に見えた。一方で、自分自身(クローン、すなわち全く同じDNAを持つ)の人生を導いたのは、他ならぬ自分自身だ。父親の影に怯えて生きる過去の自分は、今の自分の中に紛れもなく生きている。しかし、その未熟で、弱くて、でも紛れもない自分自身であるそれを、導いてやれるのは成長した自分自身だけなのだ。この映画は、クローンというわかりやすいモチーフを用いて、それを説いた作品に見えた。
彼は、この生き方しか知らないというクローンに対して、何にでもなれる、というありきたりなことを言う。それに対して弁護士や医者にか?と皮肉で返すクローンに、「誰かの旦那や、父親になれる。この仕事は、そうならない言い訳のようなものだ」と返すのだった。自分自身が父親になることで、そして自らのトラウマと向き合い続けることで、自分らしい父親になることだってできる、と説いている。
虐待を受けた子供はまた虐待をする親になるという。僕も、この言説を信じている。だけど、自分のトラウマと向き合い続けた結果、クローンにそういうことが言えるのだ。一方で、彼はクローンにしか、そういうことが言えないのだ。自分はなれなかった父親になれと。結局は後悔の発露にクローンを使っていると見ることもできる。だけど、クローン自身も自分の言うことだから聞けたというのはあるだろう。きっと、彼もクローン相手でなければそんなことは言えなかっただろう。若い自分と向き合うことで、始めて自分自身を、今の自分自身を俯瞰できたのだ。
自らを導く、もう1人の自分
辛い想いをしている時、特に私は、過去のトラウマに囚われて時間を浪費することがよくある。頭の中をぐるぐると回って、眠れなくなる。心拍数は上がって、嫌な汗をたくさんかいてしまう。
そんなとき、うまくいくと自分自身を俯瞰して見られる時がある。第3者の視点になって、そういうことを考えているな、と見られる時がある。
僕はクローンなのだ。若き日の主人公、未だに親や学校、そういうトラウマに縛られている。きっとこれからもそうなのだ。だけど、自らを導くもう一人の自分といつか出会える。それになるのも、そういう自分を作り出すのも、僕自身なのだ。
まとめ
難しいことを考えてしまった。BAD BOYSの熱いドンパチをみよう。今年新作も出たし。あれ、見るの忘れたけど…映画館で見たかったなぁ。