「まばたき」の不思議
以前、NHKの『視点・論点』という番組で「まばたきの意外な役割」という話が紹介されていました。脳を研究なさっている大阪大学准教授の中野珠実さんによれば、私たちがふだん無意識のうちに行っているまばたき、その役割は目を涙で潤すためとばかり思っていましたが、他にも重要な役割があるというんですね。
私たちのまばたきの回数は、ふつう1分間に15~20回だそうですが、目を潤すためだけだったら1分間に3回くらいで十分なんだそうです。じゃあなぜそんなに多くの回数まばたきをしているのか。そこで、まずはどんなときにまばたきをしているのかを観察したところ、たとえば本を読んでいるときは、句読点のところでまばたきをしている。映像を見ているときは、動作や場面の転換のところでまばたきが起きているというんです。
次に、映像を見ているときの脳の状態を調べたそうです。脳の中には、何かに注意を向けているときに働く部位と、安静にしているときに働く部位があって、映像を見ているときは前者が活発になり、まばたきをした瞬間のみ後者が活発になるのが分りました。ただし、意識して行うまばたきではその現象は起きず、無意識のときだけ起こるそうです。
すなわち、私たちが無意識にまばたきをするとき、脳内で何かに注目している状態が、一時的に解除されている可能性があるというのです。まばたきが注意を解除させるのか、あるいは解除するときにまばたきをするのかはまだ分っていないそうですが、この話を聞いて、不肖私としましては、これはコンピューターでいうところの、作業途中の「上書き保存」に他ならないと思うのです。
つまり、まばたきによって、それまでに脳内の一時メモリ(海馬)に貯まった視覚情報を、いったんディスク(大脳皮質)に保存し、同時にメモリを解放して次に備える。私たちの脳内の一時メモリは、今のPCのように何ギガバイトもの容量があるわけじゃないですからね、まして映像から得られるデータ容量は大きい。なので、そうした動作を頻繁に繰り返さなければすぐにパンクしてしまう。きっとそういうことだろうと思いますが、如何でしょう。