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音戸の瀬戸の渡し船 帽子飛んだ

 広島県呉市と向かいの倉橋島の間にある音戸の瀬戸は、風光明媚であるとともに、かの平清盛がわずか1日で開削したという伝説でも有名な所です。この狭い海峡を、長らく渡し船が運航されていたのですが、先ごろ廃止されたと聞き、まことに残念でなりません。両親の実家が倉橋島でしたので、幼少のころ、帰省のたびに何度も乗ったのを覚えています。

 日本一短い航路だったとされ、乗船時間はわずか2分。それでも潮の流れが速いものですからけっこう揺れ、水中翼船や大きな船が通ったあとを横切るときなどは、しっかり掴まっていないと海に放り出されてしまいそうなほど。子供にとっては、ガチの絶叫マシンだったと思います。祖父に会うのが楽しみで、多くの思い出がありますが、愛用のベレー帽が風に飛ばされて海中に没したことが、未だに悔しくてなりません。
 

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