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目の前で伸びをしながら欠伸する子猫の口に指入れてみる ぜいたくに育つ子猫は煮干し食い頭と骨をそのまま残す トイレから戻った猫がゴロゴロと喉鳴らしつつ布団にもぐる 若者が語らい笑う誰もみな誰かの過去で誰かの未来 不器用で話下手でも正直なあなたがいるとほっとするから あの時にすればよかったあの時にしなきゃよかったいろいろのこと 世の中に星の数ほど人がいて今宵あなたと会話している 何気ない会話のなかと何気ない仕草のなかに君の本当 故郷を思う胡馬の北風に依る如く越鳥の
朝明けは清々しくて 夕暮れは 他人の声も優しくなりぬ 君のそのたどたどしさに ひたむきで真摯な気持ちを 感じています 一枚の 写真の中の微笑みに 共に過ごした時間が止まる 朝のバス いつも乗ってた女子高生 久々見れば素敵な大人に 大好きで 話したいこと多いのに 言葉が出ない伝えきれない
水たまりに ボチャンと入る子の姿 懐かしくあり眩しくもあり 登校の 列の歩みが速すぎて ずっと小走りの小さな子たち 叱ったら なぜか好かれたことがある 上目遣いの父のない娘に 名刺見せ キラキラネームとからかわれ この新担当者に罪はない この夏を がんばってきた落葉たち もう戻れない空を見上げる
音楽にテンポがあって 人生は さらに歌詞あり幸せ歌う 静かなる緩徐の調べ 泣いているのか笑っているのか モーツァルト 漆黒の 宇宙に見える光のごと ブルックナーの調べ優しい 絵を飾り音楽を聴く 何処よりも 好きな私の空間に居り 贅沢な音楽を聴く セリフなど理解できない オペラだけれど
許されぬ 源氏の愛に堪えかねて 人妻の身を悔やむ空蝉 たおやかな 夕顔のこころ見抜けずに 頭の中将の薄情かなし 紅の末摘花の面影に 秘めたる誠 なお色褪せず 引き裂かることとも知らず 母さまも早くお乗りと 明石姫君
我々は花を見ている 花たちは ずっとずっと空を見ている そのままの姿で枯れる紫陽花は 咲いた証を 堂々残し バラ好きはバラに刺されず 刺されても バラ好きだから痛く感じず 悠然と 我もなりたし花のごと 物言わずとも人を励ます 花を見て 今日がやさしくなっていく 明日も花を見ようと思う
よーい、どん ぱっと散らばる年少組 慌ててあと追う先生ら
月寂し かかる夜には芭蕉翁の 明智の妻の咄し聞きたし
この花が美しからず あなたから もらったものだから美しい
コガネムシ お前は絶対許さない 葉は穴だらけ根はスカスカに ダンゴムシ 実はお前はいい奴だ 落ち葉を食うし糞は肥料に 出目金が こっちを向いて欠伸する 何だかちょっと腹が立つなり スコップに くっついてきた蟻だけど おまえ帰る道は分かるのか? かまきりの 小さいうちは臆病で 大人になるとくそ生意気に
よく見れば トンボの背中に仏さま 子供のころに母が言ってた
長距離の移動を終えて カーナビのねぎらう声に 「いやこちらこそ」 くよくよと 考えたってしょうがない 何はともあれご飯にしよう 夜が明けて 身に沁みとおる日の光 今日は何かが変わると思う 人生はアナログだから 「まあいいか」 それがあるから味があるらし 若者よもっと 偉大になればいい 恋はあとからついてくるから
路地裏に ひょいとまします恵美寿さま キタの新地に福をもたらす
始発駅 朝の車内でほっとする いつもの席のいつもの顔に あの角をはじめて曲がり ささやかな冒険しつつ 会社に向かう 「たおやめ」の語義を教える 二年目のイケイケ女子が 新人男子に あのころのパソコン憎し 保存せぬ時に限って 強制終了 美しい夜のビル街 父さんが 一所懸命がんばっている