【読書録】センスは知識からはじまる
水野 学 著
タイトルが全て。このタイトルをつけられるところに水野さんのセンスがつまっている。
わたしはくまモンの大ファンだ。あの洗練されたシルエットと素材感。イベントで2度ほどさわったことがあるが、見た目通りの手触りと、ほんの少しの湿度。笑 どのゆるキャラにもあのキュートなシルエットは越えられないとまで感じさせてしまう。
そう、著者の水野さんはくまモンの生みの親。わたしにとっては全く異次元の世界に住む存在で、感性ビンビン、天才系のデザイナーだと思っていた。
本書を読み終わってのいちばんの感想は、水野さんの努力に頭が上がらないということ。おそらくわたしの脳より3倍くらいシワがたくさんある。いろいろな事例を書かれているが、想像するだけで動悸がするくらいの情報量をあつめ、考察を重ねている。
タイトルの通り、彼のデザインには全て、知識からくる根拠が紐付けられている。どうしてこのフォントにしたのか、どうしてこの色にしたのか、どうしてこの余白にしたのか…。全てに明確な理由があり、それが洗練されたデザインに繋がっているのだ。
普通を知る。
良いデザインを生み出す前に、自分の中に“普通”のものさしを準備しなければならない。普通を知るには、いいものにも悪いものにも触れ、自分のなかでの定説をつくる必要がある。
定説になっている=万人に受け入れられているデザイン。背景からなぜ受け入れられているのか、自分なりの考察も含めて考えると、ある程度のものはできるという。
無印良品の商品がそれにあたるのかな。とがっていないけど安心感はピカイチ。ま、無印でいいか。と気づけば家の中は無印の商品で溢れているあの現象。彼らはそこを狙っているのだからまたすごい。
センスはデザイン以外にも必要。
本書はけっしてデザイナーのための本ではない。社会に生きる全ての人において、すこし生きやすくなるヒントが隠されているように思う。
例えば仕事においてのセンスもそのひとつ。
あの人仕事のセンスないよね、、なんてどこのサラリーマンも一度は口にしたことがあのではないだろうか。
例えば、営業シーンで3つの商品を提案する場面。「みんな買ってるしこの商品人気ですよ!」と勧めるのと、「この商品にはこんな背景でできていて、御社と同じ課題を抱えていたあの有名企業も取り入れたことで〇〇の効率が上がり生産性が1.4倍にもなったものです。」と勧めるのではまるで印象が違う。
上記は極端な例だが、自分が提案するものの根拠“どうしてこれなのか”を知識を装備して伝えられるかどうかが大切だ。
知識を集積するだけではだめ。
自分らしい気持ち、興味を持って取り組めるかどうかで知識の蓄積は変わってくるそう。
感受性+知識=知的好奇心
日々忙しい毎日を送っていると忘れてしまう、わくわくする感覚。この感覚を持ちつつ、デザインは決して“なんとなく良いと思ったから”で決めてはいけないと肝に命じて取り組んでいこうと思った。
先日『具体と抽象』を読んだ際にも、もっと学ばなければという思いにかき立てられた。最近のインプットではあまりに同じ意味をもつものが多すぎて、なにか大きな力に導かれているようにも感じてしまう。フォース。
インプットが楽しいのでアウトプットそっちのけで取り組んでしまうことがあるけど、おそらく身につく度合いがかわるから、どちらもたくさんやっていこうと考える今日この頃。